見出し画像

インディフィニト・ノート 47話

<前話までのあらすじ>

 真弓は、言う程酔いつぶれてない中で一番話したかった内容を安藤に打ち明けた。とても興味深い話に安藤も耳を傾けるが……。

 
1話は<1~5P>こちらから
46話は<226~230P>こちらから

         47話<231~235P>

 言いたい事が全部話せてスッキリしたのか真弓はカラオケに合流する為、店を出て行く。安藤は外に出て、しっかりと見送ってから店に戻ろうとした時、入口付近で誰かと肩がぶつかってしまう。よく見ると自分よりは年上で兄貴よりは年下と思われる男性だった。

「大丈夫ですか?」
「えぇ、お構いなく」
 男性は黒縁眼鏡を掛けていて足元は登山用にも使えるような頑丈なブーツを履いていた。恐い人で無かったのは運が良かったのかもしれない。

 特に問題もなく、城田の所まで戻ると畳で横になって寝ていた。起きる気配がない事が分かって判断に迷っていたらベテランの雰囲気が出ている女性店員から落とし物の確認の申し出があった。赤い折り畳みの財布だった。チャックに四つ葉のクローバーのチャームが付いている。

 身分証があるかもと中身を見ると保険証が入っており、天海ミサと記載されていたのが分かった。

     231

「うちの社員の落とし物で間違いないです。私が責任を持って渡しておきますので」
「そうですか。それは良かったです。では、お任せ致します」
 女性店員は安堵の表情を浮かべて持ち場へと帰っていく。

 個室が酒臭くなっていたので、空気の入れ替わりをする為に襖を半分開けた。ここから、どうするのが正解なのか安藤は考えあぐねていた。平成頃の高校の教師と生徒という訳ではないので新人の携帯電話の番号を知る筈もない。

 教育係の香川真弓なら電話番号を知っているかもしれないが先程見送った手前、声を掛けづらい状況ではある。そう思っていた矢先に背後から声を掛けられた。若い女性の声だ。

「安藤課長、私の財布を見掛けませんでしたか? カラオケ店に着く前に、財布が無い事に気付いて慌てて戻ってきたんです」
「君は確か……」
「新入社員の天海ミサです」
 
     232

「あぁ天海君だったね」
 何故、後姿だけで自分を認識できたのかは分からなかったが目の前に居る人物がミサ本人だという事は間違いなかった。

「私の財布のチャックには、四つ葉のクローバーのチャームが付いてます。赤色の折り畳みタイプです」
 ミサの口から出た情報は、完全に一致していたので疑う理由は何処にもない。しかも安藤は保険証を見ていたので手の込んだ細工をする必要は無いだろうと判断した。

「これのことかな?」
 横向きになっていた城田の腋の下から颯爽と取り出して、ミサに見せた。ミサからは死角になっていたのでカンニングは出来なかった筈だ。
「はいっ。これです。良かったー。盗られてなくて」

 ミサは財布が戻ってきた安心感から胸に抱きしめて涙を浮かべる。
「そんなに大切な財布だったの?」

     233

「はいっ。私の大好きな人から貰った大切な宝物なんです!」
 よく見るとチャームが長い間使われている様子で経年劣化して色落ちしている事に気付く安藤。おそらく財布は交換してもチャームだけは継続されて使い続けていたんだろうと予想出来た。

 敢えて、そこには触れずに会話を続けた。
「物を大切にする習慣は羨ましいよ」
「課長は違うんですか?」
 ミサは円らな瞳で目詰めている。

「学生の頃は酷かったな」
「例えば、どんな風にですか?」
「そうだな。プラモデルを作って完成しては、満足して飽きたら急に壊したり、捨てたり」

「へぇー。そんな時代があったんですねっ」
「意外かい? 社会人になってからは、物を大切にしてるよ。あの時の衝動を説明してくれとお願いされても未だに自分自身、良く分かってないんだ」

     234

 ミサは、お酒も飲んでいないのに目がトローンとしており、安藤の話を聞き入っている。
「ところでカラオケは行くのかい?」
「いえ、課長に会ったら、そういう気分ではなくなりました」

「そうか、それなら車で送っていくよ」
「でも課長は、お酒飲んでますよね?」
「それは大丈夫、代行運転に頼むから」
「なら安心ですね」

 安藤は代行運転を呼ぶと後部座席にミサを座らせてから助手席に座ると携帯電話で真弓の番号を呼び出している。その間、ハザードランプを点灯させて停車中になっていた。

 この瞬間を見逃さずに神永は事前に用意していたスペアキーでトランクに忍び込むことに成功して絶好のタイミングを待った。そうこうしていると折り返しの電話が真弓から掛かってきた安藤は新人を自宅まで送り届ける事を伝えて一応、ミサにも電話に出て貰って心配させないように配慮ある行動をした。

     235

         47話<231~235P>  

48話は<236~240P>こちらから
1話は<1~5P>こちらから

いいなと思ったら応援しよう!

昌人っち(五十嵐 昌人) 父親(ドラクエマニア)から譲り受けた変速自転車(損傷)の部品交換代&おやつ代に当てたいと思います✨ あなたの応援が力になります! 

この記事が参加している募集