インディフィニト・ノート 37話
<前話までのあらすじ>
奥島による高難易度の空中殺法が鶴居に決まった事で痛みで目を覚ます展開となった。途中、漫才みたいな雰囲気になりながらも西田へ交代して更なるダメージを与えていく。連続で攻撃に行くと見せかけて奥島へと交代して
同じ技を繰り出すが鶴居が見せ場を作るのだった。
1話は<1~5P>こちらから
36話は<176~180>こちらから
37話<181~185P>
鶴居は左腕に若干の痛みはあったが、それでも判断が正しかったと思える威力で済んだのは強運だと感じる事ができた。もちろん、ミサイルキックに
対抗する形で方向転換していれば当たらなかったという考えも無い訳ではなかったが高速回転で最低2回以上は回らなければ的から外れる事は出来なかったと想像できた。
それに最大の理由は残りの体力が余りにも無さ過ぎて最小限の動きしか出来なかった事にあった。休憩モードから急に切り替えれる程のキャリアも無かったのが要因とも思えた。只、言い訳をするつもりは無かったのでダウンして終了するのだけは避けたかった。
最後の力を振り絞って2回目のミサイルキックを防いだ時の歓声は生涯忘れる事はないだろうという手応えは感じていた。奥島は、うつ伏せになって右腕を伸ばした状態の鶴居を確認すると素早く立ち上がった。そこから、側
転でマットを移動して西田とタッチを成功させた。
「ここで、もう一度、西田がリングインしました。山里さん。何を狙っているんでしょうか?」
「大技は出ましたから、ひょっとすると……」
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山里も解説に慣れてきたのか敢えて技名を伏せるという高等技術を披露していた。試合はミステリーの謎解きではないんだと。あくまでも実況はサポートに徹する姿勢を見せていくという意思表示が感じられる発言だった。
西田は先程と同様に鶴居を飛び越えての前回り受け身をこなすと奥島を観て笑みを浮かべた。
「西田の前回り受け身の完成度の高さは経験者の動きですよね?」
「そうですね。島谷さんの言う通り、おそらく柔道経験者だと思われます」
「確かに素人の動きではない事は私にも分かりますがプロレスの受け身ではないのですか?」
「島谷さん。プロレスの受け身の可能性も否定できませんが彼らはあくまでアマチュアの学生ですから。プロ練に参加する経験はないでしょう」
「なるほど参加するとしてもプロテストに合格してからという意見ですね」
「そうです。まぁ義務教育の過程の体育の授業に柔道が組み込まれている学校もあるので……」
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「コホンっ。一概に柔道部とは言い切れませんがセンスは、あると思いますよ」
山里は、明らかに一度溜めてから会話を続けた。合いの手を入れるか入れないか迷うタイミングでの絶妙な所でのポジショントークに、本気度が伺え
たと感じる島谷だった。
西田は次に鶴居の右腕を跨いで肩口に腰を落としながら相手の右腕を両手で掴むと腕を手前に引っ張っていく。
「山里さん。こ、これは腕固めですねっ」
「そうですね。腕を手前に引っ張る時に掌が手前に来るように手首を捻る所が重要です。変な方向へ捻って引っ張ると肩が外れてしまうので素人は決して真似しないで下さいっ」
ドヤ顔で言い切る山里。興奮している解説者の隣に居る島谷は逆に冷静になる事が出来たのでタッグパートナーである黒崎の状態を確認する。
「私としたことがスミマセン。リングに集中しすぎてしまって黒崎の状況をお伝えしていませんでした」
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「あっそれについては私も触れていなかったので同罪であります。後で好きなだけ罵詈雑言を受け付ける覚悟でございます」
山里は役に入りきっているゾーン状態なのか、はたまた、お客様相談室のコールセンターの経験者なのか対応が上手すぎてブーイングは一切起きなかった。
「今、足元が、ふらついておりますが黒崎は、ゆっくりと実況席の方へと近付いております」
「島谷さん。回復したのは私も嬉しいです。只、実況席に来る必要があるのかについては疑問に思っております」
歓迎ムードに見える島谷とは対照的に批判的な意見にも捉えられるような発言をする山里。二人の言葉には無表情で、ひたすらに前を進み続ける黒崎の姿が二人の瞳に映っている。その間、この状態からは絶対に逃がさないんだという意気込みを前面に出してた西田は気迫の表情で鶴居の右腕を左右に動かさずに両手で手首を掴んでから絞り上げていく。
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「あーっと、この技は白目式腕固めだぁー!」
「ここで、まさかの白目式。分からない方にも私から説明しましょう。渾身の力を入れる時に、両目が白目になってしまった所をカメラにアップされてる映像をプロレス大好き芸人のTV番組で放送した後に、人気爆発した技でもあります」
「女子プロレスでも本人から伝授して貰った選手も居るという話もありますよね!」
「そうなんです。この技に関しては私から個人的に言いたい事があります」
「山里さん。いきなり改まって何ですか? 是非聞かせて貰いましょう」
「島谷さん。皆様、ありがとうございます。ここで白目だけを見てもらうのではなく、口元にも注目して頂けると嬉しいですっ」
「なるほど~。マニアックな所を推してきますね」
「これを期にプロレスの奥深さを少しでも知って貰えればという思いです。もちろん強制では、ございませんので好きに楽しんで下さい」
山里の抜け目のない所も好きになる島谷だった。
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37話<181~185P>
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