見出し画像

インディフィニト・ノート 36話

<前話までのあらすじ>

ド派手な大技を受けた黒崎は、これ以上の攻撃は避けたいと場外へエスケープして運動マットへ移動する。プロレス実況を始めた島谷が、会場の周りの状況を簡潔に説明をした。特に全中戦争に参加しているメンバーが大人しく観戦しているのが以外でもあった。鶴居がマットで気を失っている間に奥島はトップロープに昇ってコーナーポスト最上段で鶴居に正対した。この瞬間に暁海校の山里が解説という形で実況に、加わる事でプロレス熱が加速していくのだった。
 
1話は<1~5P>こちらから
35話は<171~175>こちらから

         36話<176~180P>

「最後はボディプレスではなくセントーンで鶴居に重なった!」
「つまり、これは……」
「ファイヤーバード・セントーンだぁー!」
「私も初めて見る技ですね! 最後のボディプレスで決めるファイヤーバード・スプラッシュは高難易度ではありますが使い手がおりますから」

「鶴居がコーナーよりの手前に来ていないので別の技だと思った訳ですね」
「島谷さんの言う通りですが実際に成功させるのは、とてつもなく難しいと個人的には思います」
「そうですねっ。私もそう思います」

「別名、背面落としと呼ばれる技ですから相手がかわして移動したとしたら分からないのでコーナーポスト最上段から繰り出す人は頭がイカレてるか、天才の二択なんじゃないかと思いました」

 ダイビング・セントーンより、はるかに高い難易度の技を完璧に決めて、
黒崎が背面で着地すると受けた鶴居は、かなりの衝撃なので意識が戻ってくる。痛みを感じるだけにレフリーを探した。

     176

 あまりの痛みに記憶が一瞬飛んでいたのでプロレスの通常の試合をしていると錯覚してしまったのだ。頭を上げてリングを見回しても何処にも居ない事に気付いてレフリー不在の変則ルールだった事を思い出した鶴居。

 その間、奥島は追加攻撃には興味を持たずに立ち上がると鶴居を飛び越え
ての前回り受け身を簡単にこなして相手にダメージを与えることなく西田にタッチした。主導権を交代した西田がリングインして鶴居を睨みつけた。
「起き上がれない程、ダメージが深刻なんだな」

「寝てる俺に何をした? とてつもなく痛いぞ」
「ワハハッ。それは可愛そうに。でも俺っちじゃ無い事は頭の悪いお前でも分かるだろう?」
「どっちでも良いから質問に答えろよっ」

 鶴居は答えをはぐらかされて苛々してきている。流石に西田は後ろを向いて奥島に顎で合図した。技を出した責任を感じた奥島は重い口を開いた。
「聞いても怒るなよ?」
「そんなの聞かなきゃ分かんない」
「まぁいいや。ファイヤーバード……」

     177

「あぁ? ファイヤーバードだ? お前、頭沸いてんのか? プロの試合で出す技だろうがっ」
「いやぁ、最後まで聞けよ。セントーンだ」
「マジかよ。そこは、スプラッシュ。違う違う。ダイビング・セントーンだろうがよ‼」

「だから怒るなよって聞いたんじゃんっ」
 まるでベテランの漫才を観てるかのような鶴居と奥島の絶妙な会話のやりとりに斑工業の生徒達が笑い転げていた。中にはパイプ椅子から転がり落ちている奴も居た。

 格闘ゲームの種類もプロレスも若い世代なのに詳しい人が多いのは、歳の離れた兄貴か父親の英才教育の賜物だと島谷は感じ取っていた。放送席の二人だけは、試合が終了するまでは絶対に気を緩めないという気迫が伝わって
たのをエプロンで観ていた奥島は感じ取っていた。
 
 鶴居は、会話しながら体の向きを変えていた。自分の位置も分かって居ないので動きながら場所を確認して西田からの攻撃に備えていた。予想したのは低空ドロップキックだ。顔面に狙いを定めてくれるように分かりやすく動いたつもりだった。

     178

 ニヤリとした西田は助走から迷わずにジャンプした。
「西田、助走からのジャンプでミサイルキックを鶴居の顔面に放ったぁー」
「島谷さん。これはまた珍しいですね。本来ならトップロープから繰り出す技を時間短縮の為なのかフェイントなのか真偽は分かりませんが決めてきましたね! 獲物を狙っていると言わんばかりの両膝を曲げてから繰り出す動きは芸術品ですっ」

「うぅっ」
 鶴居は顔面へ、まともに足の裏(両脚)の打撃を喰らってから自身の両足をバタバタしてダメージの大きさを表現している。地味に痛いだけの関節技では観客や視聴者には伝わりにくい傾向にあるので見た目が派手な技や受け手のリアクションに委ねられている所が大きいのがプロレスの特徴だった。

 受け手のリアクションが下手であればある程、試合はつまらなくなり、客との真剣勝負と言われる所以でもあった。そういう意味では各自が責任を持って見せ場を考えていた事が分かる。

     179

 鶴居は右耳を抑えて取れていないかを確認する。観ている側は耳が取れていない事が100%分かっているのだが技を受けた側は、本当に取れたんじゃないかと錯覚してしまう事が度々あるのだ。
(ちゃんと耳が付いてる。良かった~)

 アマチュアの試合と言えど流石に白けてしまうような心の声を出すつもりは無かった。その間に自軍のコーナーへ戻って奥島へと交代している。両手で両頬を張ると相棒の目を確認してから叫んだ。
「さてと、そろそろ仕上げに行くぜぇーー」

「パートナーの西田から返事は無いが奥島が助走からのジャンプでミサイルキックを放ったがーしかし間一髪の所で鶴居が反対方向へ回転して威力を殺しに掛かっていますっ!」
 次から次へ目まぐるしい攻防に一層興奮して実況に熱を帯びていく島谷。

「うつ伏せになった事で足の力も入りやすくなってますし左腕で頭部をガードしてるのも良いです」
「同じ部位には攻撃はさせないぞという強い意思表示も感じられますよね~山里さん」 

     180

         36話<176~180P>  

37話は<181~185P>こちらから
1話は<1~5P>こちらから

いいなと思ったら応援しよう!

昌人っち(五十嵐 昌人) 父親(ドラクエマニア)から譲り受けた変速自転車(損傷)の部品交換代&おやつ代に当てたいと思います✨ あなたの応援が力になります! 

この記事が参加している募集