見出し画像

インディフィニト・ノート 39話

<前話までのあらすじ>

 黒崎は放送席にあるタオルを手に取ると自軍のコーナーへ移動を始める。そこには単純な勝負だけではない世界が広がっており、黒崎の決断も受け
入れらた空間だった。

 
1話は<1~5P>こちらから
38話は<186~190>こちらから

         39話<191~195P>

「でもそれなら流石に、ぬるいですよね?」
 島谷は自然な疑問を口にしていた。
「だから俺達が持ってきたクーラーBOXに入れて冷やしておいた」
 ドヤ顔が少しムカついた島谷だったが、山里がマザコンのおかげでキンキンに冷えたスポーツ飲料のペットボトルが入手できたのは事実だった。

「山里さんが持ってました。今から投げますよ」
「あぁ、頼むわ」
 黒崎からの返事を受けた島谷は息を吐いて真剣な表情に変わった。喧嘩は弱いが少年野球で投手をやっていた事があり、コントロールには、少しだけ自信があった。

 受け取る側の事を考えて下手投げで放ると山なりの軌道を見せた。横で心配していた山里の予想は上手投げだったので正確さを重視した判断ができるのが逸材だと思った。
「二人共ありがとうな。こいつ飲んだら直ぐ復活するから。まぁ見とって」
 黒崎は余裕でキャッチした後、全員が見守る中、キャップを外して鶴居の口元に持って行く。

     191

 鶴居は、砂漠に取り残された旅人の如く、目を輝かせて口に含むと黒崎の手の上からペットボトルを掴んで上に持ち上げていく。ゴクゴク音を繰り返しながら喉仏が上下に往復を繰り返すと、ものの三秒で飲み干してしまう。そして全回復したかのように、その場から立ち上がってゴリラのドラミング披露する。

 ちなみに両手を使って胸を叩く行動ではあるが威嚇としてのイメージが、一般的だろう。他には仲間への合図や感情ののコントロールなど多岐に渡って使用しているとの事。今回の場合は嬉しさが爆発した表現だと島谷と山里は認識していた。

「鶴居。お前、そんなキャラだっけ?」
 一番身近に居た黒崎には、冗談と思われるくらいキャラチェンジしているので理解が追い付いていなかった。

「死ぬかと思ったけど、もう大丈夫っ」
「ちょい、ちょい、ちょい、ちょい。そんな訳あるか~いって。あっそ、ほな良かったわ」
 黒崎はリングに落ちている白いタオルを拾った。

     192

 鶴居と黒崎の会話のやりとりが漫才みたいで会場は笑いに包まれている。本当に仲良しなのが伝わってきていた。
「これで顔拭けや」
 黒崎は、白いタオルを鶴居に渡すと片手で拝む動作をしてから両手で顔をゴシゴシ拭いた。

 間近で見ていた黒崎は相棒の鶴居が大滝で修行した後みたいに、びしょ濡れになっているのに驚いた。それだけ強敵だったという事が物語っていたの
だろうとも感じ取っていた。

 二人のやりとりを眺めていた西田は俺もタオルが欲しいとジェスチャーで伝えるも相方の奥島は両手でバッテンを作った後、忘れたとアピールした。ここで、さらに、ドカンと笑いが起こっていた。仕方がないので奥島は立ち上がってリングの中央に移動してから一瞬目を閉じる。

 次に目を開いてから骨法のシャドーを数分繰り返して汗を身体から完全に飛び散らせる事に成功した。まるで洗濯機の脱水の動きを見ているような錯覚に囚われている鶴居と黒崎。自分達なら余計に汗をかいていたかもしれない。
 
     193

 待たされている間、西田は、ムエタイを披露する気が無かったのでリングから降りて赤のタオルで汗を拭き終わって、またリングに戻ってきていた。
 直ぐ取りに行ける距離という理由の他に体力が戻っていた事も影響していた。試合が終わったらサービス精神は激減するのも性格を現わしていた。

「とりあえず、決着だな」
 横に並んだ西田がタオルを首に掛けながら右手を差し出す。
「ナイスファイトっ」
 相棒の奥島も対戦相手に右手を差し出す。

「本音は、もう一回やりたいけどな」
 最後の最後にリングで闘えなかった事を悔しさ一杯で表現している黒崎は西田の手を握った。
「そうですね。私も次は負けないって言いたいけど次は無いのよねっ」

 ギブアップこそしなかったものの。負けの原因となっている鶴居は奥島の手を握った、お互いの手は並行ではなくクロスで結ばれてるのも粋に見える演出と感じた事だろう。

     194

 会場が拍手に包まれると時々、指笛のピューピュー音が聞こえる。昭和だとクラスに1人は得意な奴が居たものだが令和にも存在するのかは分からない。もしかしたら父親直伝なのかもしれない。口笛との違いは口の中に指を入れて試すのが一般的だ。

 客席から一番近くに居た西田は指笛のする方向を確認した。どうやら両手の人差し指と中指の先端を口に含んでいた事が分かる。
「そうだ。お前らのタッグ技って何て言うの?」
 奥島が二人に聞いた。

「コールドⅡスリープだ。そっちは?」
 代表して黒崎が答えた。
「俺らは『ダブルキャノンタイプⅡ』だ。DCTって略すのも、お薦めだけどな」

 西田は聞かれてもないのに略称まで答えていてドヤ顔している。タッグ技の確認が済んだ所で西田と奥島はリングを降りて島谷と合流して西田が一言告げてゲームセンターを後にした。

「黒崎、もっと受け身の練習しとけよ!」
「あぁ、お前らの分も頑張るよ」

***

     195

         39話<191~195P>  

40話は<196~200P>こちらから
1話は<1~5P>こちらから

いいなと思ったら応援しよう!

昌人っち(五十嵐 昌人) 父親(ドラクエマニア)から譲り受けた変速自転車(損傷)の部品交換代&おやつ代に当てたいと思います✨ あなたの応援が力になります! 

この記事が参加している募集