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【読書感想文】西研「別冊NHK100分de名著 読書の学校 西研 特別授業『ソクラテスの弁明』」

西研「別冊NHK100分de名著 読書の学校 西研 特別授業『ソクラテスの弁明』」を読了。※この記事では一部広告を利用しています。


なぜ今、哲学が必要なのか

本書は、ソクラテスが生きた古代アテナイの社会と、私たちが生きる現代が、共に価値観が大きく揺らぐ時代であると指摘します。
当時のアテナイがそうであったように、現代の私たちもまた、SNSなどでの対立や社会の分断によって、何が本当に「善い」ことなのかを見失いがちです。
そんな時代だからこそ、哲学の重要性が増しているのだと痛感させられました。

特に印象的だったのは、「よいことが体感的にハッキリわかっているときには、哲学は必要ないのかもしれません。しかし『何がよいのか・なぜよいのか』がぼんやりすると、元気が出なくなる。そういうときに、哲学が必要となってきます」という一節です。
まさに、当たり前だと思っていた価値が揺らぐ現代において、自らの足で立ち、物事を深く考えるための支えとなるのが哲学なのだと、強く心に響きました。

「不知の自覚」への分かりやすい手引き

「ソクラテスの弁明」の核心である「不知の自覚」についても、本書は極めて明快に解説してくれます。
納富信留氏の「哲学の誕生 ──ソクラテスとは何者か」で「無知の知」との違いを学んだ際には、その深遠さに圧倒される思いでしたが、本書はより分かりやすい解説が展開されています。

とりわけ、「無知」とは、単に知らない状態ではなく、「本当は知らないのに知っていると思い込んでいる、恥ずべき状態」であるとし、「不知」と区別される、という説明は、腑に落ちるものでした。

「魂への配慮」と実践としての哲学対話

「ソクラテスの弁明」のもう一つの重要なテーマである「魂への配慮」についても本書は丁寧に論じています。
ちょっと的外れかもしれませんが、道徳を重んじた渋沢栄一の「論語と算盤」の思想にも通底するものだと感じました。自身の魂を磨くことの普遍的な大切さを教えてくれます。

さらに、本書の優れた点は、こうした思想を単なる知識に留めず、「哲学対話」という具体的な実践方法にまで落とし込んでいることです。西研の「NHK 100分 de 名著 フッサール『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』」で紹介された哲学対話よりも、本書で示される対話のコツはより実践的で、すぐにでも他者と試してみたくなるものでした。

他者との対話を通じて、対話によって多様性と共通性の両方が見える。
本書は、古典の解説書でありながら、より善く生きるための具体的な方法を指し示してくれる、優れた実践の書でもありました。


納富信留 訳「ソクラテスの弁明」の感想文はこちら。

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