王家の書【共鳴編】第1話〜第60話あらすじ
物語の始まり ― 氷河の地下で目覚める存在
物語は、西暦2157年から始まる。
氷河の地下深くで、長い眠りから目を覚ます者たちがいた。「0」と呼ばれる存在の言葉を合図に、彼らは荒廃した地上へと歩み出していく。
ーー二千年以上の時を経て。
アヌシー王国の王位継承者サイラス・アストリアは、ある書物を探す旅に出ていた。
その名は――「王家の書」。
世界の理が記されているという伝説の書物だが、その存在は確かではない。それでもサイラスは、父から託された使命を胸に書の在り処を追っていた。
旅の途中、サイラスは子どもを助けようとして川に流され、瀕死の状態に陥る。そこを旅人のオスカーとケイレブに救われた。しばらくの間、サイラスは二人と行動を共にすることになる。
こうして、三人の旅が始まった。
「風詠の宴」と「0」・「1」の謎
三人は、ナヴィア王国の港町ツールへ辿り着く。そこで謎の老人マグナスと、未来を見る力を持つ「紅血の一族」の少女エマと出会う。このエマこそ、サイラスが川で助けようとしたあの子どもだった。
紅血の一族は、その力ゆえ命の危険に晒される。只者ではない力を秘めたマグナスは、教会の神父に頼まれ、少女が無事に過ごせるように見守っていた。
マグナスはサイラスの中に眠る力――共鳴士の力を見抜き、王家の書へ辿り着くにはその力が必要だと語る。そして、サイラスの秘めた力を呼び覚ます鍛錬を始める。サイラスの鍛錬が終わると、マグナスはエマを安全な地へ導いてほしいと、少女をサイラスに託すのだった。
やがてツールでは、「風詠の宴」が始まり、町は祭りの熱気に包まれる。だがその最中、サイラスたちは奇妙なものを目にする。町を見下ろす女神像ティル・マーレの台座に「0」と「1」の数字が刻まれていたのだ。
エマはその意味を迷いなく読み取り、サイラスに告げる。
「還るは北の果て
それはかつて大地を癒やし、命を育てし者の墓標なり
北西に沈む三日月の影、最後の扉開かれん
記す者が鍵となる」
一方、サイラスとオスカーは「風詠の宴」の最大の催しである「船乗り競技大会」に出場する。そこで、グランブルー号の船長カイ・ロウルと副船長マーク・レイナーと競い合う。
しかし宴の終わり、エマは何者かにさらわれてしまう。サイラスが駆けつけたときには、マグナスやエマを妹のように面倒を見ていたヨムトの姿も消えていた。
手がかりを探していたサイラスは、エマの手提げの中から「0」と「1」が書かれた紙片を見つける。ふとその紙片に手をかざすと、淡い光とともに金色の文字が浮かび上がった。
「ティル・マーレ、始まりの言葉ここにあり
読み解く者よ、光の言葉を辿れ
それはやがて、終わりの扉へと続く道」
「造られし者」とサイラスの力
緊張が張り詰める中ーー突然、エマを抱えたヨムトが姿を現した。そして自分は、「戦うために造られた」と明かすのだった。
「造られし者」とは、人類が栄華を極めていた時代に造られた存在であり、人間と見分けがつかない。その事実に、サイラス、ケイレブ、オスカーの三人は互いに疑念を抱く。三人は刃で自らを傷つけ、流れる血で自分たちが人間であることを確かめた。
そしてヨムトは、サイラスが幼き頃、暴走した共鳴の力で母を含む多くの命を奪ったことも知っていた。ヨムトの言葉から、サイラスはその出来事が彼の力を試すために仕組まれたものだと知る。
他国の仕業だと思っていた忌まわしい出来事が、実はその背後に造られし者が関わっていたという事実に驚愕する。そして、彼の力を目覚めさせようとしていたマグナスの存在も、依然として謎のまま残った。
多くの疑問を抱えながらも、サイラスたちは「王家の書」と造られし者の真実を求め、再び旅へと歩みだしていく。
ロウル兄弟とコハル
船乗り競技大会で争ったグランブルー号の船長カイ・ロウル。彼は、幼い頃から造られし者を追い続けていた。
カイは兄リク・ロウルとともに、世界に名を馳せるロウル商会を築いた人物である。だが、その歩みの裏には、人に語ることのない過去があった。
ロウル兄弟はかつて、「コハル」という造られし者に命を救われていたのだ。
幼い兄弟が村人たちに襲われていたとき、コハルはその前に立ちはだかり二人を守った。その後も、彼らを愛情深く見守り、生きていくための知識を授ける。
二人はコハルの元で、初めて人らしい暮らしを経験するのだった。
しかしある日、川に落ちたカイを助けたコハルはそのまま濁流に呑まれ、姿を消してしまう。彼女は、カイが描いた肖像画の裏に「0」と「1」の数字で想いを残していた。
サイラスがその数字に手をかざすと、共鳴の力によって、やがて金色の言葉が浮かび上がるのだった。
城壁都市エルデンと狼旗団の襲撃
サイラスたちは、北の城壁都市エルデンへ到着する。そこで、以前助けたルカという少年に偶然にも再会する。その少年は、有名な「ショコラ・エルナ」というチョコレート専門店を営む女性の子どもだった。彼女の名はエルナ。彼らは、その店のニ階に滞在することになった。
町では城主グレタや孫のシルヴィア、そして城壁の状態を「数字」として感じ取る「数字を読む者」アズルと出会う。エルデンの城壁は彼らによって維持されており、その仕組みには謎が残されていた。
穏やかな日々が続く中、武装集団「狼旗団」が町へ侵入し、エルデンは炎と混乱に包まれる。
ケイレブは人混みを掻き分け、ショコラ・エルナまで駆けつけエルナを救う。そして、彼女に自分の想いを伝えるのだった。自分にとって、エルナが大切だと。
その後、オスカーとケイレブが中心となり、狼旗団の侵入を阻む。
一方、サイラスはついに共鳴士の力を解放し、運河の水を呼び起こす。巨大な水龍が炎を押し流し、町の火災は鎮められる。圧倒的な光景に、狼旗団は恐怖して敗走し、町は救われた。
地下の森と「ノースリア」
戦いの後、サイラスは城主グレタに招かれ、城の地下へと導かれる。そこには、巨大な地下の森が広がっていた。エルデンの城壁は町を守るためではなく、この森を支えるために築かれたものだった。
この森は、地球の再生のために保存された生命であり、それを守る使命をエルデン家が代々担ってきたという。
そしてサイラスは、かつて兄アルヴィンがこの地を訪れ、森を巡る争いの末に命を落としたことを知る。
サイラスは城主グレタに尋ねる。「この森を造ったのは、誰なのか」と。
グレタは告げる。
遥かな昔、人類が造った存在ーーその名はノースリア。
ロウル商会と世界の動き
グランブルー号は長い航海を終え、商業都市ヴァルディアへ帰還する。船長カイ・ロウルは、船内に紛れ込む造られし者の存在を感じながらも、危険を避けるため静観を続けていた。
港では、兄リク・ロウルが笑顔で弟を迎える。二人は、サイラスや「王家の書」、そして造られし者の動きについて情報を共有する。
その頃、ロウル商会では多くの仲間たちが働いていた。孤児院出身のミレイアやトビアス、商会を支えるガルドとエドリックなど、彼らはリクに救われた過去を持ち、強い絆で結ばれていた。
ある日、城壁の町エルデンに武装集団「狼旗団」が侵入したという報せが届く。リクは即座に救援体制を整え、カイとトビアスをグラウ荒原同盟へ向かわせた。そこで首長バルドの協力を頼み、援軍を率いエルデンへ向かうようにした。
だがエルデンに行く途上で、サイラスたちが町を救ったことを知る。カイとトビアスは、ヴァルディアに急ぎ戻り、町が無事であることを知らせる。トビアスの無事を知ったミレイアは涙を流し、やがて二人は結ばれる。孤児として育った二人は、ついに家族という幸せを手に入れたのだった。
しかし平穏の裏で、リクは深い思索に沈んでいた。かつて造られし者であるコハルが残した知識は、世界を大きく変えるほど危険なものだった。もしその知識が広まれば、新たな争いを生むかもしれない。
そして東方では、大国を作ろうとする動きが起きていた。もしその勢力が発達した技術を手にして西へ侵攻すれば、世界の均衡は崩れる可能性がある。
同じ頃、アヌシー王国では、造られし者である108と2000が密かに会話を交わしていた。彼らは世界の状況を監視しながら、人類の未来を左右する計画を進めていた。
その鍵となる存在――それがサイラスだった。
人間の力を必要とする彼らは、サイラスが目的地へ辿り着くことを見守るのだった。
4180年12月31日
狼旗団の襲撃から一か月。町は再建が進み、日常を取り戻しつつあった。
サイラスは城主グレタに招かれ、なぜアヌシー王国が城壁外への通路を知っているのかを問われる。彼は、王と王位継承者のみが入れる「王の間」とそこに収められた書の存在を語るが、旅の目的である「王家の書」の手がかりは得られない。
話題は数字を読む者へ移り、グレタはヴァルターを紹介する。未来に起こり得る出来事とその時間を読む力を持つ彼は、左手の紅い痣を見せる。それはエマと同じ「紅血の一族」の証だった。
ヴァルターは、すべての者が共通して読む数字として「4180年12月31日」という日付を告げる。しかし、その日に何が起こるのかは誰にも分からないという。重い空気の中、エマがサイラスに言う。
「何があっても大丈夫」と。
やがて旅立ちの時が近づき、エルナは息子ルカをサイラスたちに託す決断をする。ケイレブは責任を持って面倒を見ると約束する。
翌朝、多くの人々に見送られながら、サイラスたちはエルデンを後にし、北へ向けて新たな旅へと歩み出した。
ノルディアとグラウ荒原抗争
北へ向かう途中、サイラスたちは血の付いた被り物を拾う。不穏な気配を感じた直後、騎馬隊が通りかかり、その被り物の持ち主と関わりがあると疑われてしまう。
サイラス、ケイレブ、そしてルカは拘束され、「青の一族」が治める町ノルディアへ連行されることになった。
町を治める長ラゲルは、冷たい目で三人を見つめ、その被り物が娘イーリスのものだと告げる。そして彼女を攫ったのは、グラウ荒原同盟の首長バルドだと語った。
サイラスたちが「エルデンの英雄」だと知ったラゲルは、娘を救い出すための協力を求める。しかし、サイラスはラゲルの強引なやり方に反発する。
だが話を進めるうち、バルドの背後にはノースリアがいる可能性があると知らされる。さらにラゲルは、青の一族はアヌシー王家と同じ系譜に連なる一族であること、そしてアヌシー王家とノースリアの間には古くからの縁があることを明かした。
思いもよらぬ事実に、サイラスは大きな衝撃を受ける。
サイラスが「王家の書」を求めて旅を続けていると知ると、ラゲルは娘イーリスの言葉がその手がかりになるかもしれないと告げた。その言葉を聞き、サイラスはイーリス救出に手を貸すことを約束する。
一方、別行動を取っていたオスカーとエマもやがてノルディアへ辿り着き、仲間たちは再び合流した。
町には次第に反バルド勢力の兵たちが集まり始め、戦の準備が着々と進められていく。
サイラス、オスカー、ケイレブの三人も戦に加わることになったが、ルカとエマはラゲルの義弟レイデルとともにノルディアに残ることに。
そして出陣の日。
ラゲルは兵の前に立ち、前回の戦で失った者たちの無念を胸に、グラウ荒原への進軍を宣言する。
鬨の声が響く中、ノルディアの軍勢は決戦の地へと動き出していた。
人物紹介
サイラスとともに旅をする者たち
サイラス・アストリア
アヌシー王国の正統な跡継ぎ。自然が放つ波動と共鳴する力を持つ「共鳴士」。「0」と「1」の数字を読み解くことができる。
オスカー・ストラザール
左頬に傷を持つ大柄な男。武術に長けている。ケイレブと共に旅をしている。
ケイレブ・リー
商家の息子。料理が得意で、珍しい食材を求めて各地を巡る。神話に出てきそうな美しい顔立ちで人々を魅了する。
エマ
左手に紅い痣を持つ少女。「紅血の一族」の一人。「痣者」と呼ばれる。サイラスたちと旅を共にしており、「0」と「1」の数字を読み取ることができる。
サン
オスカーの飼い犬。黒い毛並みの大きな犬。
ツキ
ケイレブが連れている白い猿。人の言葉を理解しているような賢さを持つ。
ナヴィア王国ツールで出会う者たち
マグナス
ツールの森に住む、謎の多い老人。「王家の書」の秘密を知り、共鳴士であるサイラスにその真意と使命を教える。
ヨムト
親を亡くし、叔父のレイジンに引き取られた少年。エマたちの宿近くに住み、エマのことを妹のように気にかけている。人間の姿をしているが、ノースリアである可能性が高い。
レイジン
ヨムトの叔父。親を亡くしたヨムトの面倒を見ている。人間の姿をしているが、ノースリアである可能性が高い。
カイ・ロウル
グランブルー号の船長。サイラスたちに手を貸し「造られし者」について教える。
マーク・レイナー
グランブルー号の副船長。カイ・ロウルとともに船乗り競技大会に出場する。優れた「風読み」の力を持つ。
リオ・ナッシュ
グランブルー号の船員。
コリン・マーヴェイ
グランブルー号の船員。元副船長。
城壁の町エルデンの人々
グレタ・エルデン
城壁の町、エルデンの城主。
オリヴィア・エルデン
グレタの娘。サイラスの兄、アルヴィンの共鳴の力で命を落とす。
シルヴィア・エルデン
グレタの孫。母親のオリヴィアが亡くなり、グレタの後を継ぐ。
ルカ
以前、オスカーに酔っ払いから助けられた子ども。エルナの一人息子。
エルナ
チョコレート専門店「ショコラ・エルナ」の店主。女手ひとつで店を切り盛りしながらルカを育てている気丈な女性。
アズル
数字を読む者の一人。シルヴィアを見守りながら、アルヴィンやサイラスと交流を持つ。
ヴァルター
数字を読む者の一人。オリヴィアの夫であり、シルヴィアの父親
ロウル商会の人々
リク・ロウル
ロウル商会の当主
カイ・ロウル
リクの双子の弟。グランブルー号の船長
ミレイア
孤児院で育った女性。口がきけない
トビアス・メルク
孤児院で育った男性。ミレイアに想いを寄せている
ガルド・ハーク
ロウル商会の実務責任者。リクの右腕
エドリック・フェン
元傭兵。対外交渉と治安を担当
セルド・マレイン
城壁の町エルデンの統括責任者
青の町ノルディア
ラゲル
青の町ノルディアの長。
エルド
ラゲルの夫。最初のグラウ荒原抗争で命を落としている。
イーリス
ラゲルとエルドの娘。グラウ荒原同盟のバルドに攫われている。
レイデル
エルドの弟。
ドレイク
ラゲルの親衛隊の一人。ラゲルの右腕。
バルド
グラウ荒原同盟の首長
ノースリア(造られし者)
0
雪と氷に閉ざされた施設にいる謎の男。
コハル(586)
リクとカイを助けるノースリア。幼いリクとカイを守り、生きていけるように導く。
2000
ノースリアの一人。サイラスを見守る。
03
2000の伝言を伝えるノースリア。
45と368
エルデンの城壁で防衛に当たっている。サイラスの力を見守る。
メガネ(108)
リクの仕事調整係。本の虫で周りからはメガネと呼ばれる。リクの知識を確認するために近づく。
物語の鍵となる要素
アヌシー王国
ウール川が国の中央を横断する小国。農作物に恵まれ、「知の国」として知られている。
王家の書
アヌシー王国に代々伝わる書物。この世の理や、国を守るための知恵が秘められているという。
共鳴士(きょうめいし)
生命のうねり――あらゆるものが放つ波動に寄り添い、その声を感じ取り、調和をもたらす者。
紅血の一族(こうけつのいちぞく)
左手に紅い痣を持って生まれる者たち。未来を見る力があるとされている。
ティル・マーレ(海の母)
船乗りたちの守り神として信仰を集める存在。その台座には「0」と「1」の数字が無数に刻まれている。
エルデンの城壁
エルデンの町をぐるりと囲む巨大な城壁。その町に住まう人々を守っているのではなく、地下にある広大な森と湖を支える杭の役割を果たしている。
数字を読む者
紅血の一族。正体を隠すために、「数字を読む者」と称している。壁の秘密を知っており、エルデン家をそば近くで見守る。
ノースリア(造られし者)
遥か昔、先の世に造られた存在。ーーその正体は謎に包まれている。
お読みくださりありがとうございます!
第1話から第11話までのストーリーまとめ&人物紹介は、こちらから。
第11話から第20話までのストーリーまとめ&人物紹介は、こちらから。
第21話から第30話までのストーリーまとめ&人物紹介は、こちらから。
第31話から第40までのストーリーまとめ&人物紹介は、こちらから。
第41話から第50までのストーリーまとめ&人物紹介は、こちらから。
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