協働は遅いのか?――“仲間でない協働”という錯覚と、関係性の設計論
はじめに──「一人の方が早い」は本当か
前回までの記事では、
について書いてきました。
その流れの中で、こんな声をいただきました。
「でも、結局は一人でやった方が早いですよね」
「協働のコストってバカにならないですよね」
これは一見、もっともらしく聞こえます。
実際、多くの現場でそう感じる瞬間があるでしょう。
しかし、この言葉には一つの前提のズレがあります。
本稿では、このズレを解消しつつ、「真の協働」について探ってみたいと思います。
■「協働のコスト」が重いのはなぜか
「協働は遅い」と感じるとき、実際に起きているのは何でしょうか。
調整が多い
承認に時間がかかる
説明に手間がかかる
待ち時間が長い
どれも現実です。
しかし冷静に見ると、これらは
“協働のコスト”ではなく、“組織のコスト”
なのです。
■「関係者の多さ」と「協働」は別物である
多くの現場では、
関係者が多い
役割が分断されている
意思決定が分散している
この状態を「チーム」と呼んでしまっています。
しかし実態は、
分業+調整
です。
そこでは、組織のルールに従った手続きが行われているだけで、
まだ「協働」は存在していません。
■私が定義する「仲間」とは何か
ここで一つ、私自身の実体験から得た定義を共有させてください。
私はこれまで、「単なる手続きの多さ」と「真の協働」がまったく違うものであることを、何度も経験してきました。
その中でたどり着いたのが、次の定義です。
仲間とは、お互いの目的や目標を理解し、
その前進や停滞に感情的に関与し、
協働を通じてお互いの時間を捧げ合う関係である。
ここでいう「感情的関与」とは、単なる仲良しではありません。
相手の前進を自分のことのように喜び、
停滞や後退を自分事として悔しがれるか。
その温度を共有できるか、ということです。
■「仲間でない協働」は、なぜ苦しいのか
本当は仲間になってほしい。
でも、なれない。
この状態で続くやり取りほど、苦しいものはありません。
なぜなら、
目的が微妙にズレている
感情的な関与がない
時間の優先順位が違う
その結果、
すべてが“作業”と“調整”に変わる
からです。
そこには、創造も、没入も、手応えも生まれにくい。
■協働は「仲間への入口」である
では、真の協働とは何か。
私はこう考えています。
真の協働とは、仲間になるためのプロセスである
最初から仲間である必要はありません。
むしろ、
一緒に考える
一緒に試す
一緒に迷う
というプロセスを通じて、関係性が変わっていくのです。
しかしこれが簡単ではない。
多くの組織が「仲間づくりに向いていない」と見えるのには理由があります。
それは、効率を追求した分業や機能別組織が前提となり、
この「一緒に」が抜け落ちてしまっているからです。
■仲間との協働は、なぜ軽いのか
一方で、仲間と「真の協働」が実現すると、何が起きるのか。
説明が減る(前提が共有されている)
判断が速い(基準が近い)
対立が価値になる(違いが創造を生む)
つまり、
協働のコストが下がり、創造のリターンが上がる
のです。
■「一人の方が早い問題」の正体
ここまで来ると、この言葉の意味も変わります。
「一人の方が早い」
これは確かに正しい場面もあります。
しかし本質はこうです。
仲間でない人とやるくらいなら、一人の方が早い
そして、さらに重要なのは「時間軸」です。
一人の成果は足し算。
仲間との協働は、指数関数的に増幅されます。
最初は一人の方が早く見える。
しかし時間が経つほど、その差は逆転し、やがて比較にならなくなる。
「早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければみんなで進め」
この言葉は、その本質をよく表しています。
■3つの「イチ」との接続
この話は、1本目ともつながります。
仲間がいない → 協働がコストになる
協働がコスト → 一人でやる
一人でやる → 視野が閉じる
そして、再び「イチ」に戻る。
つまり、
協働の“質”が、「閉じるか開くか」を決めている
新規事業や組織変革のような営みは、
一人で完遂できるものではありません。
■関係性は「設計できる」のか
では、仲間は偶然にしか生まれないのでしょうか。
私はそうは思いません。
関係性は、行動と関わり方によって設計できる
その起点になるのが、
小さく一緒にやってみる
時間を共有する
成功も失敗も共に経験する
といった具体的な共同行為です。
たとえば、進捗確認の会議(Doing)を、
背景にある想いや違和感(Being)を「聴き合う場」に少し変えるだけで、
関係性は大きく変わり始めます。
苦しさの正体は「未完の関係性」
仲間になれない苦しさの正体は、
関係性が未完のまま止まっていること
かもしれません。
仲間になりきれていない
それでも関わり続けなければならない
この中途半端さが、摩耗を生む。
しかし、ほんの少し関わり方を変えるだけで、
その関係は別の方向へ進み始める可能性があります。
仲間になりづらい人との協働
ここまで読んで、こう感じた方もいるかもしれません。
「そもそも仲間になりたくない人や、仲間になる気がない人とはどうするのか?」
まず前提として、
全員が仲間になれるわけではない
これは事実です。
ただし、だからといって悲観する必要はありません。
むしろ、
“いつか仲間になる可能性を閉ざさない”
これだけで、関係性は大きく変わります。
3日後かもしれない。
3ヶ月後かもしれない。
3年後かもしれない。
今はそうでなくても、関係性は変わり得る。
あなたのプロジェクトの進行を妨げる存在に見える相手もまた、
その立場で「正しいこと」をしているだけかもしれない。
環境や役割が変われば、
その正しさに救われる日が来ることもあります。
だから、
今すぐ仲間でなくても、敵になる必要はない
のです。
おわりに──誰とやるか、ではない
新規事業において重要なのは、
「誰とやるか」ではありません。
その人と、仲間になれているか
協働とは、単なる役割分担ではない。
関係性を編み直すプロセスです。
あなたが今、一緒に取り組んでいるその人は、
関係者ですか?
それとも、仲間ですか?
仲間づくりの具体的な手法については、こちらの「仲間づくりの極意」シリーズへとお進みください。
最後までお読み頂きありがとうございました☆
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