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松井優征『逃げ上手の若君』第24巻 尊氏の神力の極まるところ そして直義の運命と「策」

 連載の方は先日大団円を迎えましたが、単行本はまだ刊行が続く『逃げ上手の若君』、今回ご紹介する第24巻では、高師直亡き後の室町幕府に走る激震が描かれます。その桁外れの神力で世界までも危機に陥れる尊氏を、時行は倒すことができるのか。神と一体化した尊氏を倒すための最後の策とは……

 高師直によって追放された直義方と尊氏方に幕府が二分された争いの中、直義方と手を組んで戦う時行たち。
 死闘の末に高師冬=吹雪を破った時行は、さらに失脚した高師直・師泰兄弟に決戦を挑み、その思わぬ反撃ぶりに苦戦しながらも、ついに高一族を討ち果たすのでした。

前巻の紹介記事はこちら。

 というわけで、ついに宿敵・尊氏の片腕をもぎとった時行たち。もう一人、これまで尊氏を支えてきた直義も同じ側にいるのですから、これでついに尊氏も丸裸同然――と思いきや、ここにきて直義が、兄の改心を信じてしまうという痛恨の展開が待ち受けます。

 君側之奸さえ除けば、名君に戻るに違いない――歴史上、クーデターを起こしながらもそう考えて痛い目にあった人間は少なくありません。
 嗚呼、直義もその一人になるのかと思いきや、運命は、いや神はそれどころではない展開を用意していたのです。

 これはぜひその目で確かめていただきたいので詳細は伏せますが、ここで炸裂するのは、太平記でももっともわけがわからない展開として評判のあれ。
 歴史上ありえないことを起こしてしまう、その尊氏のわけのわからないまでのパワーが引き起こした悲喜劇は、ただ必見というほかありません。

 ただまあ、「原作(太平記)がこうだから」「神様の力だから」で済ましてしまうのは、歴史もののフィクションとしてはかなりギリギリ、というかほとんどアウトな展開ではあります。
 それをこれまでの積み重ねと描写の面白さで突破してしまうのは、これはもう作者と作品の力ではありますが、裏を返せば、その禁じ手を使うほど、物語もクライマックスに来ているということなのでしょう。
(ベクトルは違いますが、クライマックスの近さは、直義のエピソードの間に挟まれるゲンバと夏のエピソードからも感じられます)



 しかし、尊氏の狂気としか言いようのない執着の前に、直義も目を覚ます日が来ます。
 神というよりほとんど妖怪状態の尊氏の跳梁を前に、さすがに危機感を覚え、越前を経て信濃に向かった直義主従。そこに駆けつけた時行と諏訪頼継を前に、直義も心を開きます。
 ――この期に及んで可愛い属性を晒すほどに。

 それでも、敢えて時行たちと違う道を行くことを選んだ直義。どう考えても死亡フラグとしか思えない夢を語った末に、直義が辿った運命は――残念ながら、神ならぬ彼が歴史を変えられるはずもありません。
 しかし、その直義が――正確にはその直義を「策」として利用した時行が、ついに神の力に一穴を穿ちます。その果てに挑む最終決戦の行方は……

 クライマックスに相応しい顔ぶれが集結して、次巻に続きます。

前巻の紹介記事はこちら。


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