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山田尚子監督作品に感化され SONY FX30を購入し Maltine Recordsの朋友Gassyoh のMV「スピーカーが2台あり Megamix」の監督をしてみた

「スピーカーが2台あり」Gassyoh Megamix (Music Video)

本noteではこちらの映像の製作に関するあれこれを語っておりますので、まずはご覧ください。

はじめに


前回のnote - 山田尚子監督作品「きみの色」に感化され SONY FX30で「Mitaka Sound - ACID ACID」MVを製作してみた備忘録の最後に "人の被写体が居る作品を撮ってみたいな" と書いていましたが、その続きです。きみの色のライブシーンの背景に描かれていた"Love Your Neighbor" からインスピレーションを受けたシリーズ第二弾です。


企画立案 - なぜ GassyohのMVなのか

一回自分なりにMVを制作してから他の作品を観て思ったのは、ミュージックビデオというのは一応作品ではあるけれど、それ以上に音楽アーティストの宣伝や広告も兼ねたメディアなのだなと実感しました。

まず"音楽があり"その神輿を担ぐ応援団とでもいいましょうか。そう言う意味でMV監督は山田尚子映画でいうところの牛尾憲輔さんや宣伝プロデューサーの立場に近いような気もします。もちろん山田尚子監督作品 Garden of Remembrance のように映像と音楽が並び立つ音楽的な作品という例外はあるのでしょうが。

その上で冒頭の被写体を撮ってみたいとなった時に、どういう観点で音楽アーティストに依頼をするかというのを検討しました。

  • 音楽アーティストの中で比較的声を掛けやすい知り合いの Maltine Records関係の方々

  • ほとんどMVがつくられてないアーティストでMV製作が何かしら活動に応援やレバレッジになりそうな方

  • 今後も活動を継続してくれそうな方

  • 企画や絵コンテの時点で全てを描ききれない状況で、とりあえず撮影〜編集を行なってはじめて作品の全体像が見えてくるような緩い作り方でも許してもらえそうな関係性

  • 顔出ししてくれそうな方

などを念頭に一緒にAnthem Worldの三鷹タカハシさんと2人でルノアールに集まり検討を重ねて、敬愛するDJ / トラックメーカーである Gassyoh(敬称略)の名前があがり一緒にお声がけさせて頂き快諾して頂きました。

Anthem World打ち合わせは秋葉原のルノアールでやっています

どんなMV企画にするか? Megamix!

最初は"スピーカーが2台あり〜" という歌詞が一部インターネットクラブ音楽のミームともなっている"Dance Music(feat. mochilon)"のMVをつくるのが良いのでは?という提案をさせていただきました。

打ち合わせの中でトラックメーカーとしてのGassyohだけではなく、DJの側面も見せようという流れになり、新旧バライティ豊かな大量のトラックをつぎはぎして一本のMegamix形式にする方が今後の活動にも繋がりそうだといった話にまとまりました。

個人的には打ち合わせの直前にMegamixで我々を楽しませてくれたDJ Funkが亡くなっていた事も深層心理に影響を与えたかもしれません。昔からゲットーハウスのDJ FunkとインターネットミュージックのGassyoh、サンプリングと声の初期衝動感をどことなく重ねてみていたりします。

そして過去わたしがDJをする際に必ず掛けていたのがGassyohのクラブトラック。彼の曲を日本一かけ倒したと自負があった事もあり、このMegamix(音楽)の制作は願ったり叶ったり!久しぶりにコバルト爆弾αΩ名義も持ち出し大量のトラックから厳選・編集し、Gassyohから的確なアドバイスを貰いつつ、なんとか7分未満のmixが完成しました。理想的な形につくりあげられたと思います。

Vコンテをつくった

次に映像です。MVにおける脚本ともいえる音楽が出来上がった所で、どんな映像を撮っていくかロケーションなども検討する必要があります。Gassyohは大阪、私たちは東京在住、しかも大阪の宿は万博の影響で高騰しつつある難しい状況でした。急ぎ万博開催前に滑り込みの撮影日として土日の2日が予定され、限られた時間を有効に活用しなければなりません。

今回は浅草の時のように適当に素材を撮りまくって編集でなんとかするのは難しそうだという事で、撮影場所やカット割などをある程度想定するためにVコンテ制作に取り掛かりました。Adobe Premiereに音楽を貼り付けた上で、既存の動画や写真、そして生成AIの画像も駆使してつくりあげました。

冒頭のVコンテ

Vコンテを共有してイメージが伝わったのか、Megamixを聴いたGassyohから「スピーカー2台あり」というタイトルの提案があり、スピーカーユニットを2台持ち運びながらトラックの元ネタになるような大阪の名所を周り、最終的には本当のクラブでパフォーマンスを行うというMVの本筋が何となく浮かび上がってきました。(元々はガチのモニタースピーカーを持たせようと画策してましたが重量の問題で断念)

後半のフェーダーさんのパート Vコンテ

とはいえ映画やアニメのように物語としてしっかりしたお話を描くというよりは、あくまで音楽を主役として捉えて、Gassyohが様々な社会や環境との対話や身近なモチーフから作曲をして踊る事、それがサンプリングミュージックの本質だろうといった事が伝われば十分だなと思い、最終的には雰囲気やノリを重視した構成にしています。今となってはそれがクラブミュージック的だとも思います。

Vコンテをつくる上で自分で絵を描くのは苦手なので生成AIに頼れるのは物凄く助かりました。おかげで具体的なイメージをGassyohや三鷹タカハシさんに共有できたので事前準備やスケジュール立ても比較的スムーズに出来たようにも思えます。完成品には1つ例外を除いてAI素材は基本的には入れてないです。

唯一生成AI(Adobe Photoshop)を利用した部分 tomadアー写の外側に魚を拡張(本人に確認済み)

カラーグレーディング(少し専門的な話)

撮影〜編集で一番困ったのはカラーグレーディングでした。難しい。色が合わなかったり、体調やデバイスによって色の見え方が変わったり・・・試行錯誤した中でなんとなく自分なりのワークフローをつくれたのでポイントを書いておきます。

  • Log撮影した素材を Rec.709へカラーコレクションをする → 音楽でいうノーマライズみたいな

  • Rec.709上でカット間の色調を合わせるカラーマッチングをする → 音楽でいうEQみたいな

  • シーンの雰囲気や演出に合わせて色転びなどのカラーグレーディンをする → インサートエフェクトみたいな

  • フィルム調やボケなどのエフェクトをかける → 音楽でいうマスターエフェクトみたいな

というやり方が(今のところは)一番しっくりくる方法論かなと思いました。

ぶっちゃけ完璧にはできてないと思いますが・・・試行錯誤を無限にやっていると時間が足りない(例えば 200カットある動画で1カット3分かけて調整していくと10時間消えます。これをあっちこっち変更をN回繰り返しながら調整すのはヤバすぎてノイローゼになりそうだった。)ので、ベストではなくベストエフェートを目指して頑張りました。

ベストエフォートの色味

前回同様映像をまとめあげるのにフィルムエフェクトをがっつり掛けました。結果論としてロゴやGassyoh / mochilon両者が持つ邦画的な俳優性みたいなものと上手くフィットしたとは思いますが、カラーグレーディングは誰かに教わりたいと思いました。

協力してくれた方々について

一緒にGassyoh神輿を担いで頂いた皆様、誠にありがとうございました!名前を挙げきれず申し訳ないですが、一部抜粋ではりますがご紹介させてください。Gassyohは共犯なのでここには書きませんがMVに込めました。

テクノスケープ 三鷹タカハシ(Mitaka Sound)

散歩の達人こと三鷹タカハシさん。前回MVをつくらせてもらったMitaka Soundのタカハシさんです。

Anthem Worldという映像企画チームみたいなものをユルッと組んで頂きました。毎回秋葉原ルノアールでのアイデア出しや山田尚子監督作品の感想会などを中心にお世話になっています。

今回は大阪出身のアドバンテージを生かしてもらってロケーションやタイムスケジュールの検討、テクノスケープの撮影など多岐に渡る活躍をしていただきました。

良い感じの引きの映像は全て テクノスケープ 三鷹タカハシ

ソロ活動ではがっつりテクノっぽい風景の映像作品を製作されています。気になる方はテクノスケープレーベルもご覧ください

友情出演 mochilon(Mikeneko Homeless)

Gassyohさんの楽曲をセレクションした際にどうしても外せないのが mochilon 氏。彼のボイスサンプルを利用しているDance Music や Sushi Than My をはじめ、Mikeneko Homelessの大ヒット曲 KANEKUREもGassyoh Remixがあり是非Megamix使いたい。Gassyohから企画意図を説明し出演快諾いただきました!感謝・・・

昭和の映画俳優みたいな雰囲気を一発でつくりあげるmochilon氏

とくに演技指導などをしていないのですが、完璧な笑顔やダンスを披露してくれて本物のアーティストはステージが違うと思わされた。聖地で輝く彼の姿を是非観てみてください。

題字デザイン Shimada Midori / dollly

Shimada Midori / dolllyさんに題字デザインをしていただきました。こちらの意図を汲み取ってグラフィックに落とし込み、それを言語化して説明する能力がずば抜けすぎていてビビらされました。昭和の映画的なケレン味とローマ字の組み合わさり方がカッコ良過ぎる。

Gassyoh企画のイベントフライヤーもヤバイ。Shimada Midori / dolllyさんに美味しいお仕事があれば紹介してあげてください。

Barフェーダー / 5364氏 / NEO GEO

最初はGassyoh氏が大阪の街を回るだけの映像を想定していましたが、イベント出演があるという事で急遽調整、快諾を得ましてGassyoh氏のプレーを撮影させていただきました。

Barフェーダーさんのスピーカーが2台

最後のフェーダーさんでのDJシーンがあるとないとでは、映像的・文脈的にも閉まらなかったと思います。イベントNEO GEO企画の5364氏も誠にありがとうございました。

機材レビューコーナー

SONY FX30

7割このカメラで撮影してます

前回に引き続きメイン機材!Log撮影 / Cine EI Quick / 4K120p あたりがお気に入り。使い倒して分かったけどAPSCである事は特に問題を感じた事はないんですが、イベントで使って思ったけど暗所性能だけはマジで弱点。Base ISO 12800のFX3が映像クリエーターに大人気だったのかも良くわかる。

Tamron 17-70mm F/2.8 Di III-AVC RXD (Model B070)

7割このレンズで撮影しています。

Eマウント & APSC & 動画撮影でとりあえずこれ買っておけば夜間などの暗所以外は全部なんとかなる便利ズーム。カメラ内手ぶれ補正が入ってるのが動画的にもアツい。フェーダーさんのシーンを除くほとんどのシーンで使いました。(三鷹タカハシさんパートはもちろん別)

ただし昼間に使うならF2.8でも明る過ぎるので、ボケみがある映像を撮りたいならNDフィルター必須。5月の撮影でも減光しなければならなかったので急遽 Nisi 可変ND True Color ND Varioを利用しました。

Voigtlander Nokton 50mm F1 Aspherical

暗所撮影の最終兵器

フェーダーさんでの撮影シーンはどれくらいの明るさになるか予想も付かなかったのとFX30は暗所性能が悪いことも理解していたので、日本で普通に売ってる中で一番明るそうなF1のレンズを用意しました。

夜間に使ってみると人間の目よりも明るく撮れるのでヤバいレンズだなと思いました。ただし被写界深度が激浅&マニュアルフォーカスなので自分と被写体のどちらかは静止している状況じゃないと動画撮影は難しいなと思います。

今回はGassyohが激しく動いて私が静止できる状況だったのでライブ撮影的にギリこなせました。

マニュアルフォーカスですがEマウントの電子接点がついているので、後処理でジャイロ手ぶれ補正(Catalyst Browse)が使えるのがありがたい。

こんなに明るいレンズを用意してもそれでもFX30ではISO10000に上がってしまいセンサーノイズが結構出ていたので、暗所撮影をするならFX3の方が100%良いと思います(使った事ないけど)。

“山田尚子監督作品の要素”を入れ込めたか?

足のアップ

奥行き方向の移動

最初の横断歩道を渡るシーンは似たようなカットばかりになると面白くないなと思って足から撮ってみましたが、どうなんでしょう?

体の一部分だけをアップにする絵面は作画的には顔を描かなくて良いメリットがあるのかもしれませんが、実写でもカットのパターンを増やす、演出的には人に表情や体の動き全体を想像させる空白みたいな意味で役立つ演出な気もします。

山田尚子監督がアニメ上で発明したのか、元々映画などの文脈で利用されてた演出がある意味先祖返りしているだけなのかは分かりませんが、実写でやっても良さがある演出だと思いました。

マニュアルフォーカスでライブ撮影

このへんのシーンは微妙にピントが合ってない = Gassyohの勢いが凄過ぎる

きみの色の最後の演奏シーンで凸子を上手から写しているシーンなどは分かりやすいですが、トツ子の顔へのフォーカスが若干ブレて外れたりしています。マニュアルフォーカスで撮影する雰囲気・・・実際にDJ撮影する経験ができたのは良かった。ピントが合ってない = 見にくい所も実は視聴者に欲求を掻き立てたり、撮影者も一員として興奮しているライブ感がでる演出の一部になっているのではと思えた所が良かったです。

動画においてピントが外れる = 使えない というわけではないと思いました。

その他

山田尚子監督作品はとても好きですが、その演出を真似することがGassyohのMVをつくる上で正解という訳でも無いと思ったので、あまり積極的に真似しようとはしませんでした。とはいえわたしが近年みている映像は山田尚子監督作品か京都アニメーション作品がほとんどなので、どこかで影響を受けているかもしれません。ちなみにテロップはBlu-rayの影響を受けています。

むしろテーマや対象に心を寄せる的な意味で Gassyoh氏の本質を外さないように神輿を担ぐという部分で一番影響を受けている気がします。

上手・下手の演出論の先生は、むしろ富野由悠季?

mochilon氏とは寿司を食いながらガンダムやガイナックスの話しができて楽しかった・・・!

映像演出の方法論を学ぶという意味で富野由悠季著「映像の原則」くらいしか持ってないんですよね。これを昔買った時は文章が難解で挫折しましたが。今回編集しながらちょこちょこ読んでいました。

余談ですがターンエーガンダムとかを見ると、最初に右からガンダムが出てきて、左に移動してから振り返り右に進撃みたいなシーケンスが多いなという印象だったんですが、なぜ最初は左からこないんだろう?という疑問が残ったりしています。山田尚子監督作品では左端に安心できる家があり、そこから出発して右に行くイメージが割とあります。主人公の戦艦の位置が右だと逆ですよね。監督や作品によってクセが違うのだろうと思いました。

そういえば山田尚子さんが手がけた「アン・シャーリーOP」はわかりやすく右向きに進行させて最後に左に振り返ってますね。理解していないながら本映像も基本的に移動は右方向、左向きにアクションするというのを徹底してみました。

アン・シャーリーリスペクト

映像の最終盤に過去のシーンを走馬灯的に回想するシーンが挿入されているのですが、この4:3の映像はアン・シャーリーのOPからパクりました。編集してるときに丁度公開されたのを観て「これだ!」と思いました。

回想シーンは4:3
Gassyoh × アン・シャーリー 夢が交わる

山田尚子版「映像の原則」出してほしい!

まとめ・今後の課題

という訳で「スピーカーが2台あり」Gassyoh Megamix (Music Video)について色々書きました。Gassyohの活動が広がると良いですね!個人的にはWIREに出て石野卓球さんやKEN ISHIIと肩を並べてほしいと願っています。

個人的にはMV制作の全体像がぼんやり見えたので、次回はもうちょっと狙って逆にめちゃくちゃ山田尚子監督リスペクトな映像を撮ってみるのも面白いのかもしれないと思ったりしています。

赤子が落ち着いたら、いつかまた何かやりたいと思います。

告知

Gassyoh スピーカーが2台ありMEGAMIX Release Party

本MVから派生したGassyoh スピーカーが2台ありMEGAMIX Release Partyが東京と大阪2地点で開催されます!わたしも東京場所のVJで参加させて頂きます。メンツもオールドスクールMaltine Records/インターネットミュージックな雰囲気で楽しみです。ぜひ現地でお会いしましょう。というか映像発イベントを開催して頂けるなんて嬉しいですね!

詳細はGassyohのXをご覧ください↓


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