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「一式お願いします」が通用しなくなる年──"分けて頼む発注力"が会社を生かす

2025年12月、改正建設業法が全面施行されました。新しいルールの一つに「労務費・法定福利費・安全衛生経費を内訳明示した見積書を作る」という努力義務があるんですよね(出典:国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第11版)」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001765310.pdf )。

業界で長く当たり前だった「工事一式 ○○○万円」という見積もりが、静かに終わろうとしている年です。

私はこの動きを、建設業だけの話としては見ていないんですよね。仕事を頼む側・受ける側の関係そのものが、いまどの業界でも「一式」から「分けて頼む」へ変わろうとしている。今日はそのあたりの話を、私が先日お会いした経営者の言葉と一緒に書いてみたいと思っています。

データで見る「丸投げ」の限界

中小企業の半分は、すでに外注を使っています。2018年版中小企業白書では、中小企業の50.5%が「既存業務をアウトソーシングした経験がある」と回答していて、3年前と比べて活用を増やしている会社も14.1%ありました(出典:中小企業庁「2018年版 中小企業白書」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_3_2_2.html )。

ただ、ここからが本題なんですよね。同じ白書で、これからアウトソーシングを検討する企業に課題を聞くと、トップが「導入時の費用対効果が不明」で50.0%、次が「適切な委託先が見つからない」で32.1%。

「導入のメリットそのものが見えない」と「相手が見つからない」が、検討段階で会社を立ち止まらせている、ということです。

なぜ費用対効果が見えなくなるか。アウトソーシングの現場を見てきた人の話を集めると、原因のかなりの部分が「丸投げ」にあるんですよね。

中小企業のBPOがうまくいかない代表的なパターン

・業務範囲を曖昧にしたまま発注し、確認・修正・説明に追われて社内負荷が逆に増える
・委託したあと、社内で業務を理解している人がいなくなり、戻したくても戻せなくなる
・「長く付き合いがあるから」という理由だけで発注先を選び、業務と相手が合っていない

出典:SFA JOURNAL「中小企業のBPOサービス導入のよくある失敗と対策」( https://next-sfa.jp/journal/bpo/common-mistakes-and-countermeasures-for-implementing-bpo-services-for-smes/ )。

つまり、「使えない外注先に当たった」のではなく、「分けずに頼んだから測れなくなった」。


建設業法改正で見積もりの内訳明示が義務化された流れは、たぶんこれと地続きなんですよね。社会全体が「一式」をやめ、「中身を分けて言える側」に発注の主導権を渡そうとしている。

「分けて頼む発注力」を3ステップで身につける

じゃあ、どこから手をつけるか。私が伴走モニター先の建設業の社長と一緒にやっている順番は、いつもこの3ステップです。

①業務を分けて書き出す

「うちの事務」を一行で言わずに、「請求書作成」「協力会社台帳の更新」「現場日報の集約」のように、最小単位で書き出す。多くて20〜30個くらいになります。書いた瞬間に「これは社員、これは外、これはAIに振れる」が初めて見えるんですよね。

②範囲と量を数字で書く

「月に何件・何時間相当・繁忙月はいつ」まで添える。「請求書作成 月50枚 1枚あたり7分 月6時間相当」のように。

これがあるだけで、外に出すときの値決めが「相場感」ではなく「うちのサイズの実費」になります。費用対効果が見えなかった50.0%は、この一行が抜けているケースが多いです。

③確認ポイントを決める

「何を見て合格とするか」を最初に1〜3行で決める。請求書なら「取引先名・金額・税区分の三点が伝票どおり」、現場日報なら「人工数と作業内容が日付に紐づく」。

ここが空白だと、納品物のあらを見つけるたびに発注主が直して、結局自分でやるのと変わらなくなるんですよね。

この3つが揃って初めて、外注先・AIツール・在宅の業務委託パートナー、どこに頼んでも回り出す。「分ける・量る・基準を決める」、たったそれだけなんですけど、ここまで握れているかどうかで、外注はびっくりするくらい結果が変わります。

先日お会いした経営者の言葉

先日、ご紹介ベースでだけ仕事を受けている、独立2年目のアートディレクターの方とお会いしました。住宅メーカーで12年9ヶ月、営業をやってから独立し、いまは外部のエンジニアやデザイナーをプロジェクトごとに束ねて、ブランドやウェブサイトの仕事を一人で回している経営者です。

私は商談前、「業務を分けて、雑務を外に出してリソースを空けませんか」という提案を準備して臨んだのですが、その方の話を聞いていて、提案の優先順位を入れ替えました。

その方はこう言ったんですよね。

「丸投げされても何も作れないんですよ。アーティストではないので。窓口の優秀さが成果物の質を決めるんです」。

依頼の質が低いと、こちらも作れない。デザイナーの腕がない、ではなくて、頼む側の「分け方・量・基準」が曖昧だと、誰がやっても通り一遍のものになる。だからクライアント側の「発注リテラシー」を上げてくれることを、心から望んでいる、と。

これは建設業の現場でも同じ話なんですよね。「協力会社の質が落ちた」「最近の職人は…」と感じることが増えた社長は、一度、自分が出している指示書・図面・段取りを「分けて・量って・基準を決めて」見てください。

中身がスカスカのまま「一式お願い」をやってきて、相手側が"忖度"でなんとか帳尻を合わせていただけ、という構図に行き当たることが少なくないです。

そしてこの先、建設業法改正で「一式」がそもそも出しにくくなります。社外の協力会社だけでなく、社内の総務・経理・新人にも、「分けて頼める社長」かどうかで仕事の流れ方が違ってくる。

発注力って、たぶん新しい経営スキルなんですよね。

まとめ

人を増やす前に、まず仕事を分ける。

これはShakeHandsで私が伴走モニター先と一緒にやっている考え方ですが、根っこにあるのは「分けないと、誰にも頼めない」という地味な現実です。

丸投げできる外注は、もうほぼないんですよね。AIにも、在宅の業務委託パートナーにも、長年付き合いの協力会社にも、「分けて・量って・基準を出した上で頼める社長」は、これからどんどん仕事が回り、人が集まると思っています。

まず、いま自分の頭の中にしかない仕事を「20行のリスト」に書き出してみる。たったそれだけで、見える景色がだいぶ変わるはずです。

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