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文学談義|比喩を楽しむ読書のすゝめー村上春樹・川端康成編

好きな文法はなんですか?

そう聞いて身構えないでほしい。
ストーリー性とかキャラの良さとか本の魅力はたくさんあるけど、
言葉の面白さを感じるというのも、やはり読書において重要だと思う。

体言止めや倒置法が多いと、なんだかテンポUPって感じがする。
反語が多いとなんかイヤミな感じがする。

そして突然だけど私は比喩が好きだ。
比喩はすごい力を持っていると思う。

小学校の文法の授業で、最初に習うような、簡単な存在に思われるかもしれない。

でも、今回はそんな比喩のすごさと、大好きな文たちを紹介しながら、
私の考える読書の楽しみ方を紹介したい。

比喩の魔力

比喩は「似ているもの探し」ではない


まずは比喩の凄さについて。

「りんごのような頬」

この文をみてどんなことを思い浮かべるだろうか?
おそらく、赤い子供のような愛らしいほっぺを思い浮かべたのではないだろうか。

それでは次はどうだろう。

「死んだ蝶の羽のようなまつ毛」

美しいのか醜いのか。
第一死んだ蝶を私はみたことがない。
でもなんか、ただのまつ毛じゃなくて、不穏で、退廃的で、美しいものなんじゃないだろうか。そういうニュアンスは感じとれる気がする。

いずれにせよ、「死んだ蝶の羽」と「まつ毛」は普段なら結びつかないもの同士だ。


新しい言葉を作る効果

普通なら「AのようなB」と言えば、AとBは似ている要素があるのだろうと考える。

しかし、比喩の真髄はそうではない。

佐藤信夫は著書「レトリック感覚」の中で、こう言っている
「比喩とは、既存の類似を発見することではなく、
それまで無関係だったものの間に新しい関係を設定する行為である」。

つまり、この2つの要素を「ような」でつなげることで、普段イメージするまつ毛ではなく、新しい「死んだ蝶の羽のようなまつげ」というモノを作りだすわけだ。
そして、言葉は有限だけど、言葉同士を組み合わせることで、新たに言葉を無限に作り出すことができる、と言っている。

比喩は新しい言葉を作り出す、無限の可能性を秘めている。

余談
「レトリック感覚」は名著なのでぜひ読んでほしい。大学生の時に授業で読んでから、心にずっと刻まれている。
ちなみに著書の中では、川端康成の「蛭のような唇」(「雪国」)という表現が取り上げられていた。なんて官能的で気持ち悪いんだ…

ツッコミながら味わう比喩表現

それではいよいよ、私の好きな比喩表現を紹介します。
そしてぜひ、つっこみながら読んでください。
ここにあるのは思わずつっ込まずにはいられない、わかるようでわからない、そんな文たちです。

読みながらどんなツッコミをしたか、ぜひ教えてください。

村上春樹

いちばん巨大で、いちばん物静かなのが父親カンガルーだ。
彼は才能が枯れ尽きてしまった作曲家のような顔つきで餌箱の中の緑の葉をじっと眺めている。

村上春樹「カンガルー日和」より

お父さん、アンニュイすぎるよ…。
動物なのに芸術家のような顔つきをしてるって
やはり意外性過ぎて、凡人には思いつかない...

我々が立ち去る時にも父親カンガルーはまだ餌箱の中に失われた音符を探し求めていた。

村上春樹「カンガルー日和」より

音符探してたんかー

密やかな朝霧が太陽の光に消えてしまうみたいに。

村上春樹「街とその不確かな壁」p285

なんて繊細さを感じさせるんだろう。「密やかな」「朝霧」がさらに光の中に消えていく。

元気の良いラブラドール・レトリーバーに踏みつけられた砂の城のように、あっけなく崩壊してしまう

村上春樹「イエスタデイ」より

すごい、喜劇と悲劇が入り混じって反応に困る。すっごく頑張って作った工作を、悪意なく弟とかに壊された、みたいな。怒るに怒れない。感情のやるせなさをひしひしと感じる!

ちょうど口の中で舌がどんどんふくらんで、しまいには窒息してしまうのと同じようなかんじです。

村上春樹「野球場」より

なにが「ちょうど」⁉ぜんぜんわかんないんだけど!
ドツボにハマる的な?

川端康成「雪国」より

細く高い鼻が少し寂しいけれども、その下に小さくつぼんだ唇はまことに美しい蛭の輪のように伸び縮みがなめらかで、黙っている時も動いているかのような感じだから、もし皺があったり色が悪かったりすると、不潔に見えるはずだが、そうではなく濡れ光っていた。

川端康成「雪国」より

ここですね。問題の。
改めて、なんて気持ち悪いんだ…。美しいは醜いと紙一重なのかもしれない…。

国境の山を北から登って、長いトンネルを通り抜けてみると、冬の午後の薄光りはその地中の闇へ吸い取られてしまったかのように、また古ぼけた汽車は明るい殻を上ンネルに脱ぎ落して来たかのように、
峰と峰との重なりの間から暮色の立ちはじめる山峡を下って行くのだった。こちら側にはまだ雪がなかった。

川端康成「雪国」より

長い。目に映ったままそのまま、まるで俳句のように映像が切り替わる文だなあ。
「古ぼけた汽車」が「殻」を「脱ぎ落す」
なんて清々しいというか、すうーーっと音もたてずに着物を落とすような感じがした。すごく日本的ではないだろうか。

まとめ

読書を楽しむ方法は様々だと思うけど、比喩に注目するのがおすすめ、という内容でした。

みなさんの楽しみ方、読み方もぜひ教えてほしいです。

本当は三島由紀夫も取り上げたかったけど、春樹だけで随分な量となってしまいました。
好きな表現まとめ、またやります。

おわりに

好きな一文を書き溜めるノートがあります。ロールバーンのちょっといいやつ。
いいやつに書かないと雑に書いてしまうから。
雑に書くと読み返したいと思えないから。

みなさんも忘れたくない言葉を書き溜めたりはするのでしょうか?

最近読書の味わいが枠を捉えるようなものなってしまったので、自戒も込めて記事を書きました。
染みわたるような読書体験をしたいですね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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本を深読みするのが大好きです。



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