製造業向け|人を待たせないことも、仕事の品質だと思う
現場で仕事をしていると、作業そのものよりも、誰かの返事を待っている時間の方が気になることがある。
図面の確認を投げた。
材料の仕様を聞いた。
納期の優先順位を確認した。
発注番号や請求先の情報を待っている。
こちらとしては、返事が来るまで動けない。
もちろん、相手にも相手の仕事がある。
すぐ返せない事情もある。
会議中だったり外出中だったり、他の案件に追われていることもある。
それは分かっている。
ただ、現場で止まっている側からすると返事がない時間というのは、ただの待ち時間ではない。
人が止まる。
材料が止まる。
判断が止まる。
場合によっては、後ろの工程まで止まる。
それを見ていると、最近よく思う。
人を待たせないことも、仕事の品質なのではないか。
「早く報告して」と言う人ほど、返事が遅いことがある
現場では、報連相を早くしろと言われることが多い。
何かあったらすぐ言って。
分からなければすぐ聞いて。
勝手に判断しないで。
止まる前に相談して。
言っていることは正しい。
現場でも、勝手に進めて失敗するより、先に確認した方がいい。
あとで手直しになるくらいなら、少し止めてでも聞いた方がいい。
その方が結果的には早いことも多い。
ただ、そこで少し引っかかることがある。
「すぐ聞いて」と言われたから聞いたのに、返事がなかなか来ない。
「勝手に判断するな」と言われたから止めたのに、判断する側が止まっている。
「報告が遅い」と言われる人ほど、こちらからの確認には返ってこない。
これは、現場では意外とよくある。
もちろん悪気があるわけではないと思う。
ただ、待たされる側からすると、少し困る。
聞かなければ「なぜ聞かない」と言われる。
聞いたら聞いたで、返事が来るまで進められない。
それで納期だけは変わらない。
こうなると、現場はだんだん妙な学習をする。
聞いても止まる。
聞かなくても怒られる。
結局、自分で何とかした方が早い。
この空気が出てくると、報連相は形だけになる。
待っている人は、ただ暇をしているわけではない
事務所でメールの返信を待っているだけなら、まだ別の仕事を進められることもある。
でも現場はそうはいかない。
加工の向きが決まらない。
仕上げ範囲がはっきりしない。
数量が合っているのか分からない。
支給品の品番が違うかもしれない。
図面が最新版なのか判断できない。
こういう状態で作業者を待たせると、ただ手が空くだけでは済まない。
人は機械ではないので、止まったらすぐ次の仕事にきれいに切り替えられるわけではない。
途中まで頭に入れていた段取りも抜ける。
一度どかした材料をまた戻すこともある。
別の仕事に入れば、今度はそちらを中断しづらくなる。
少し大げさに言えば、現場の待ち時間は、炊飯器の保温みたいなものではない。
置いておけば同じ状態で保たれるわけではない。
待たせた分だけ、熱は逃げる。
流れも切れる。
気持ちも少しずつ離れる。
それでも外から見ると、ただ「返事待ち」に見える。
ここが怖いところだと思う。
返事の速さは、仕事への姿勢として見えてしまう
私は、すべての返事を即答すべきだとは思っていない。
むしろ、適当に早く返される方が困ることもある。
確認していないのに「大丈夫です」と言われる。
よく見ていないのに「進めてください」と返ってくる。
あとで条件が変わる。
それでは早いだけで、仕事としては危ない。
だから必要なのは、何でもすぐ答えることではない。
すぐ答えられないなら、いつ返せるのかを返す。
確認中なら、確認中だと伝える。
止めているなら、止めている理由を伝える。
相手が待っているなら、待たせていることを忘れない。
それだけでも、現場の受け止め方は変わる。
「まだ返事はないけれど、確認してくれている」
「今日は動けないが、明日の朝には判断できる」
「この件は止めていいのだな」
それが分かれば、現場は別の段取りを組める。
逆に何も返ってこないと、現場は宙ぶらりんになる。
進めていいのか。
止めていいのか。
催促していいのか。
待つべきなのか。
こういう小さな迷いが積み重なると、仕事の品質は落ちていく。
品質は、完成品だけに出るものではない
製造業で品質と言うと、完成した製品の寸法や見た目、不良の有無を思い浮かべやすい。
もちろん、それは大事だ。
傷がないこと。
寸法が合っていること。
決められた仕様で仕上がっていること。
納期通りに出荷できること。
でも最近は、それだけではないと感じる。
仕事の品質は、完成品になる前から出ている。
依頼の出し方。
確認への返し方。
待たせ方。
止め方。
優先順位の伝え方。
そこに、その人や部署の仕事の質が出る。
返事が早い人は、単に手が速いわけではない。
相手が止まっていることを想像しているのだと思う。
逆に、何日も返事をしない人は、忙しいのかもしれない。
ただ、待っている側からすると、自分の仕事が軽く扱われているように見えてしまう。
実際にはそうではなくても、そう見える。
仕事は、こういうところで少しずつ信用を失う。
待たせない人は、相手の時間を自分の時間のように扱っている
現場で信頼される人は、必ずしも何でも知っている人ではない。
分からないことは分からないと言える。
今すぐ無理なら、無理だと伝える。
確認に時間がかかるなら、先に一言返す。
相手が止まっているなら、止めていることを気にする。
そういう人の仕事は、やり取りがしやすい。
反対に、能力が高くても返事が遅い人は、周りを止める。
本人は忙しいだけかもしれない。
けれど、周りから見ると、その人のところで仕事が渋滞している。
道路で言えば、信号が壊れている交差点のようなものだ。
車はある。
道もある。
目的地もある。
でも、どちらが進んでいいのか分からないから、みんなそろそろと様子を見る。
現場の確認待ちも、それに近い。
人を待たせないというのは、相手に媚びることではない。
自分の仕事だけでなく、相手の仕事の流れも少し見ることだと思う。
報連相を求めるなら、返す側の品質も問われる
報告が遅い。
連絡がない。
相談してこない。
こういう言葉は、現場でもよく聞く。
ただ、相談された側がどう返しているかは、意外と見落とされる。
聞きに行った時に面倒そうな顔をしていないか。
確認を投げたまま放置していないか。
判断を求められているのに、先延ばしにしていないか。
あとから「なぜ止まっていた」と言っていないか。
報連相は、する側だけの問題ではない。
受ける側にも品質がある。
相談しやすいか。
返事が返ってくるか。
待たせるなら理由があるか。
止めた分の責任を持つ気があるか。
ここが弱いと、現場は相談しなくなる。
相談しない人が悪い、と言うのは簡単だ。
でも、相談しても返ってこない職場で、人は本当に相談し続けられるのだろうか。
小さな待ち時間が、現場の空気を変えていく
人を待たせることは、すぐに不良として出るわけではない。
図面が間違っていた。
寸法を間違えた。
傷をつけた。
納期に遅れた。
そういう分かりやすい問題ではない。
ただ、じわじわ効いてくる。
確認するのが面倒になる。
聞く前に自分で判断する。
催促する人だけが嫌な役になる。
待たされた人が、次は誰かを待たせる。
仕事全体の流れが少しずつ鈍くなる。
こういうものは、数字に出にくい。
でも、現場にいると分かる。
流れが良い職場は、返事がうまい。
早いだけではなく、止め方がうまい。
待たせ方が雑ではない。
逆に、どこかでいつも止まる職場は、誰かの能力だけではなく、返事や判断の渡し方に引っかかりがある。
人を待たせないことは、やさしさだけの話ではない。
仕事を止めないための品質なのだと思う。
もちろん、自分も完璧にできているわけではない。
忙しさにかまけて返事が遅れることもある。
あとで返そうと思って、そのまま抜けることもある。
だからこそ、気をつけたい。
品質は、出荷前の検査だけで作られるものではない。
誰かを待たせている時点で、もう仕事の品質は少し試されている。
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