#4|生まれる、ということ|彼女が母になるまで、僕は何を知らなかったか
Episode1|第4話「それでも、父になっていく。」
子どもが生まれたら、自然と父親になれると思っていた。
でも現実は、そんなに簡単じゃなかった。
何もできなかったあの日から、
それでも僕は、父になっていった。
僕はできるだけの準備をして、我が子を迎えた。
ミルクも、寝かしつけも、
自分にできることはやろうと思っていた。
でも現実は、思い通りにはいかなかった。
ミルクを飲まない。
何度試してもダメだった。
「哺乳瓶で飲むのが普通」だと思っていた僕は、
それが“普通じゃないこともある”と初めて知った。
寝かしつけも同じだった。
バウンサーも電動ゆりかごも用意した。
でも結局、3時間抱っこし続けて、やっと眠る。
そして、布団に置いた瞬間に起きる。
——背中スイッチ。
毎日探り探りの子育てだった。
壁にぶつかる度に
調べて知識を得ても、我が子が好むかはわからない。
どれだけ準備しても、思い通りにはならない。
何をしても、うまくいかない。
そんな毎日だった。
それでも、時間は流れていった。
子どもが生まれて3年後、僕は網膜剥離になった。
数年をかけて8回の手術。
右目の視力を失った。
趣味だったサーフィンにも行けなくなった。
正直、かなり落ち込んだ。
でも、子どもがいる。
支えてくれる妻もいる。
守る存在がいることで、前を向けた。
あのとき何もできなかった出産も、
うまくいかなかった育児も、
失意から前を向けるようになったことも、
全部、この子が僕にくれた経験だった。
父になっていくというのは、
こういうことなのかもしれないと思った。
もしこれから父になる人がいるなら、伝えたい。
出産には、ぜひ立ち会ってほしい。
命の誕生に立ち会う経験は、
今、一緒に生きていることへの感謝を思い出す出来事になるから。
大好きな『コウノドリ』の言葉を借りるなら
「出産は奇跡だ」
僕は今もそう思っている。
彼女が母になるまで、
僕は何を知らなかったのか。
出産は、予定通りに進むものじゃなかった。
父親は、何かができる存在でもなかった。
それでも、
その場にいることには意味があった。
僕はそれを知ることができた。
—— 第4話 おわり
次は、「まさか」から始まった父親の物語。
Yさんのお語をお届けします。|4/14公開予定
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