2026年2〜3月メキシコ(時々アメリカ)滞在記⑯オアハカ一人旅編(5)
前回のミトラ遺跡編はこちら
ミトラ遺跡をゆっくり見学し、名残惜しさを感じながらミトラの街をバスターミナル方向へと歩いて戻る。

途中、伝統の刺繍が入った衣類などを売る店がたくさんあり、オアハカ市内よりも若干安いような気がしたのとカオス感がなく落ち着けたためあれこれ物色。
私は普段あまり物欲がなく(主な欲は睡眠欲と不定期な食欲くらいだ)、気がつくと服を半年以上買っていなかったりする。ふと、手持ちの服がヨレヨレのものばかりだと気づいて慌てて探しに行くことがあるが、対面の接客が苦手なのでたいていネットや接客されない店舗でサクっと買う。
どちらにしろあまり日本では購入のモチベーションが上がらないため最近は海外旅行に行った時に買うようにしているけれど、どこへ行っても最後の最後まで買い物スイッチが入らないことが多い。

メキシコ(特にオアハカ)は可愛いものに溢れていてとても魅力的だ。
ここミトラにもたくさん素敵な衣服を売るお店があり、ちらっと奥を覗くと機織り機のようなものを使って実際に作っているところがあった。
でも、私の中では「可愛い=欲しい」にはなかなか繋がらない。
別に「イケメン=好き」にならないのと同じだし、「美味しそう=食べる」に結びつかないのと同じだ。

海外での買い物は楽しいが難しい。旅行のぶっ飛んだテンションで買った衣類はなかなか日本での日常に馴染めない。
インドで買ったスカート、プエルトリコで買ったTシャツ、台湾で買ったサンダル、すべてタンスの肥やしになってしまった。持ち物は極力少なく身軽でいたい。だから最低限しかモノを増やしたくないのだ。
タンスの肥やしにしてしまったモノは不幸である。ノリで買ったけれど飼いきれなくなったペットと同じだと思う。作り手の方をはじめとして、そのモノ作りに関わった人たちの顔を思い浮かべると悲しさと罪悪感が溢れる。
そのため最近はノリで買わず、ちゃんと日本で着るかどうか具体的に使用するシチュエーションまでイメージ出来たものしか買わないことにしている。

私が買ったのは真ん中の黒のに似ている
一番下はなぜかパリ?
ミトラで道を歩いていると突然買い物スイッチが入った。いくつかお店をはしごして、色やイメージ、素材の希望するイメージを絞り込む。
ここだと決めた種類の多そうなお店に入り、商品を見てよいかお店の人に許可を取る。接客されるのが苦手だが、日本とは違ってスペイン語は少ししかわからないため、カタコトで「ゆっくり考えたいから1人にして欲しい」という旨を伝えて放置してもらう。
無限にパターンのある刺繍入りブラウスの中から「ちゃんと日本で着る」と決めた候補のものを3つまで絞り、「試着したい」という意志を伝える。
買うのは1着のつもりであったが、3着中2着しっくりきてしまったため、どちらも購入することにした。が、言い値ではすぐに買わずダメ元で少し値段交渉をしてみることにした。2着買うから、とか色々言ってほんのちょっと安くしてもらえた。

バス停に戻ると、イエルベ・エル・アグア行きの乗り合いバスの勧誘に声をかけられた。約2500年前の古代灌漑システム跡でもあり、石灰成分が固まってできた「石化した滝」と頂上にある「天然のインフィニティプール」からオアハカ渓谷の絶景を望む観光名所とのことで、珍しい地形を見るのも遺跡同様好きなので気になっていた場所である。
そこに行くかどうかは前日結構悩んだところで、一般的に行くなら先ほど訪れたミトラ遺跡を含むツアーが便利なよう。でも、そのツアーに参加すると終日かかるため他のことが出来なくなる。近くまで行くのにもったいないが、よくよく考えてミトラ遺跡だけに行くことに決めたのである。
声をかけてきた乗り合いバスはミトラからの往復のようで、サクッと行って戻って来られそうだし少し気になる。念のため値段を聞いてみたら、なんと手持ちの現金が微妙に足りなかった・・・(この時、ATMを探そうという発想にはならなかった)お金が足りなかったお陰で悩むこともなくあっさり断りオアハカに戻るバス(このバス代は小銭をかき集めたらぴったりだった)に乗った。

もし服を買っていなければイエルベ・エル・アグアに行っておりまた違った旅になったのかもしれないが、服を買って乗り合いバスの運賃が足りなかったことで午後はオアハカでゆっくりすることが出来たし、ミトラで買ったその服たちは帰国した後もちゃんとお気に入りの2着になっており、早速仕事着としても大活躍している。
後悔はまったくない。どちらを選んでいても結局楽しかったと思う。
一人旅をしていると瞬間瞬間の判断や選択が連続していて、こんなプチパラレルワールドみたいな経験がたくさんあることも面白い。

歩き疲れたのかバスに揺られていると眠くなってきた。聴いていたAudibleの小説の話がわからなくなっている。ほぼ人が乗っていないとは言え路線バスである。日本の感覚で居眠りなんてしていたら危ないだろうと思い、荷物をがっちり抱えて肩紐を手首にぐるぐる巻いて盗難防止対策をして眠気と戦うが、気がついたら抗えずに落ちていた。
目を覚ますとオアハカの街のすぐ外側まで来ていた。街の南側にあるバスターミナル周辺は苦手な場所だ。出来ればそこを通らず帰りたいなと思い、グーグルマップを見ながら無駄なくエアビーに戻る方法を考える。バスの進行方向を予測して降りたい場所をざっくりイメージし、タイミングを見て声をかけて現地の人たちみたいにバス停のない場所で下車してみた。
作戦成功、と思い少し歩いてエアビーに戻った。共用の入り口を開けるとホストのお母さんがいて少し会話。明日は何時に帰るのか、と聞かれたから飛行機の時間を伝えた。さらに、空港までどうやって行くのかと聞かれたから、タクシーかな、と答えると、タクシー会社に電話して呼んであげると言われた。
空港までの交通手段で悩んでいたからちょうど良い。ソカロ(広場)のところにだいたいいつも数台タクシーが止まっていたから、そこまで歩けばどうにかなるかなと思っていたが確実性がなく不安だった。自分で電話できるほどのスペイン語力はないし大変助かる。

なんとなく家に帰るようにエアビーに戻ったが、お昼を食べていなかったことに気がつく。昨夜市場で買ったオアハカチーズを共用キッチンの冷蔵庫に入れておいたことを思い出して取り出し食べてみると、結構それでお腹いっぱいになった。日本人には馴染みのある「さけるチーズ」に似ていて食べやすくとても美味しい。
先ほど購入した服などを部屋に置いて身軽になり、午後の観光に出かけることにした。昨日は途中で体力が尽きてダウンしたし、行ったけれど開いていなかった場所もあった。今日はそのリベンジと新たに行きたかった場所を貪欲に周ることにした。スパの予約が18時。それまでの時間の使い方を真剣に考えよう。
まず向かったのが、オアハカテキスタイル博物館。

実はこの博物館、知ってはいたが行く予定はなかった。私の中の優先度は歴史関連のものが最上位であり、少し興味はあったがたぶん行かないと思っていた。
しかし先ほどミトラのお店の奥にある工房のような場所をたまたま目にして、伝統的な方法で実際に布を織り服を作る職人さんたちの姿を見てしまってからは、どうしても行かずにはいられなくなった。しかも無料。






これまでは漠然とした「メキシコの服はカラフル」みたいなイメージしかなく、オアハカ周辺だけでもその背後にはこんなに細分化された豊かな伝統と文化があるなんて知らなかった。
その奥深さに称賛と尊敬の気持ちを感じつつ、後で民芸品の市場にも行ってみようとまた計画を変える。
とりあえず財布の中身が寂しすぎたためATMに入ってみた。持っていたクレジットカード3枚のうち何故か2枚は使えなかったが、ラスト1枚が使えて本当によかった。無事にキャッシングして不審者がいないか確認してから通りに戻った。
次回、オアハカ街歩き後半に続く
