#6-8 届かない場所・【番外編】|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
6-8 届かない場所
ルリは、ラーフェの応接間を出た。
地下都市の整備された通路を歩きながら、頭の中でモーゼとラーの言葉が木霊する。
なぜ?
タトやレイは「女王を救おう」と言い、
ラーフェの人々は「女王に感謝している」と言う。
今まで、ヴァリスの町では、みんなが私の言葉を喜んで聞き入れ、賛成してくれていたのに。
なぜ、こうも誰も協力してくれないのだろう?
人前で手が震えるなんて、初めての経験だった。
(これがエレメンタルの力なの…?)
いいえ、そんなはずはない。
「私は、間違っていないわ……」
地下都市の天井、透明のドームを見上げる。
ルリの心の中に、新たな疑問と、より強い決意が生まれた。
そうだ、探そう。
なぜ、タトやラーフェの人々が私を支持しないのか。
それは、今まで私が知っているものとは、根本的に違う何かがあるに違いない。
それを見極めてからでも遅くはない、多分。
それに、私には切り札がある。
イオが……
ルリはハッと、別れ際に言われたラーの言葉を思い出した。
『イオフィリアには気をつけなさいね。心を持っていかれないように。
常に軸は自分に置いておくのよ。あなたの力は、あなたの意思で使うのよ』
あの女性は、不思議なことばかり言う。
なのに、その言葉はどれも、ルリの心に強く残った。
ルリの足が、地上へと続く通路の途中で、ゆっくりと止まった。
(つづく)
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ここからは、
タト、レイ、ミミの番外編となります。
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【番外編】〜守りのカタチ
「服!!また服がなーい!」
意識が戻ったミミの声が響き渡った。
激しい炎の力で、また身につけていた服を燃やし尽くしてしまったのだ。
彼女はあらわになった自分を見下ろして困り顔をした。
「燃えてしまったからね。でも大丈夫」
タトは落ち着かせるように言うと、用意していた一着を得意そうに差し出した。
「ボクの腰布とトナカイの毛皮で作ったんだ。ほら!」
ミミは嬉しそうに新しい服を受け取った。
「だけど不思議だね。ミミの胸の毛皮は、いつも無事だね」
その白い毛皮は、ミミが常に身につけているもので、あの激しい炎にも耐え抜いて彼女の胸を守っていた。
「うん! これはミミが生まれた時からつけてて、ミミの炎では燃えないんだって」
タトは感心するように微笑んだ。
「そうか。ミミは、最初から守られているんだね」
「うん!
でも今回は、タトが守ってくれたんでしょ?」
タトは、そばのレイを頼もしそうに見た。
「レイのおかげだよ」
「えへへ、二人とも、ありがと。」
ミミは照れくさそうにモジモジとお礼を言った。
「あれ、レイも服、変わったんだね」
レイは自身の服を見下ろしながら苦笑した。
「ああ。魔法をかけていたんだけど、かなり焼けた。…タトのは無事なんだな」
タトは自分が着ている服を愛おしそうに撫で、その秘密を明かした。
「これはね、操作魔法を扱う布折り職人の子が仕立てた服なんだ。ルミナリーの守り人も火を扱うから、炎には特に強いんだよ」
「すごい技術だな」
レイは改めて、その控えめな色合いの服に感嘆の声を漏らした。
それを聞いたミミは、自分がもたらした被害を思い出し、しょんぼりとうつむいた。
「ミミ、また怒っちゃって……ごめんなさい。怒らない作戦だったのに……」
タトはミミの隣に座り、慰めるようにその小さな頭を撫でた。
「いいんだよ、謝らなくて。ミミはよくやったし、みんな無事だった。それでいいじゃないか」
「うー、ふえ〜ん! ごめんなさぁい!」
タトの優しさに触れて、我慢していた涙が溢れ出す。
そんなミミをタトはそっと抱きしめ、背中をさすってやった。
「よしよし、いい子だね。ミミは十分頑張ったよ」
ミミが落ち着きを取り戻した頃、タトは彼女を元気づけようと話題を切り出した。
「そうだ、笛の秘密を知っているかい?」
「ふえ?」
ミミは涙で潤んだ瞳で見上げる。
「ライアンからもらった角笛だよ」
「あ、みんなお揃いのやつ!」
「そう。あれを吹くと、すごいんだ。音を聞いた人は、吹いた人の場所が分かるんだよ。
頭の中に『ピーン!』って居場所をガイドしてくれるんだよ」
ミミは好奇心に目を輝かせた。
「えー!すごーい!
ねぇねぇ、試してみたい!みんなで隠れて吹いてみようよ!」
そして、ミミはふとタトの顔を覗き込み、その変化に気づいた。
「そういえば、タト。一人になったね?」
タトは顔をほころばせた。
「はは、そうなんだ。無事にひとつになれたみたいだ」
「あはは!よかったねぇ!」
ミミは弾けるように笑い、立ち上がった。
「よーし、じゃあ、かくれんぼだーー!」
ミミの元気な声が、雪の止んだ冬の森に明るく響き渡った。
(おわり)
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