記憶のカケラ│ふたりの夜空〜ミニエピソード
【背景】
その日の昼に、森で奇跡的に出会ったタトとミミ。(追憶のオリジン 本編2-6 )
こちらからのミニエピソード。
*
夜。
森はすっかり様子を変え、焚き火が静かに薪をはんでいた。
タトはミミの屋根付きの簡易寝床でマントにくるまり、目を閉じていた。
けれど、耳だけは周囲に集中していた。魔動物の気配は、ない。
それでも、何かが…くすぐったように気になる。
「……タト、ねてる?」
小さな声がすぐ近くから聞こえた。
目を開けると、火を背にしたミミの影が揺れている。
「まだだよ。」
「えへへ、ミミもー。」
タトが身を起こすと、ミミは火にあたるように手を伸ばしながら、ちらっとタトを見る。
尻尾が、そわそわと揺れている。
「なんだかね、誰かと一緒に寝るの、ひさしぶりなの。」
「…そっか。」
「うん。なんか、寝れないの。
タト、他の街から来たんだもんね。すごいね…」
タトはミミを向いて座り直した。
「ボクこそ、今日、森でミミに出会えなかったら、本当に心細かったと思う。」
「えへへ。じゃあ、ミミ、いてよかったね!」
「うん、いてくれてよかった。」
ふたりはしばらく黙って火を見つめていた。
森の上空に開けた夜空に、冷たい光が瞬いている。
「……タト、また明日も一緒にいられる?」
「もちろん。案内、頼んでるからね。」
「うん!」
ミミはふにゃっとした笑顔になり、タトの隣に転がりこんでピッタリとくっついた。
ミミは体温が高いようだ。
タトは、何日かぶりに夜に体を横たえた。
人と炎がこんなにも安心するなんて。
その温もりと共に、泥のように眠りに落ちていった。
ミミは…しばらく尻尾が揺れていたが――やがて動きが止まり、規則正しい寝息が夜に溶けていった。
(#2-7へつづく)
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