#7-9 氷の狭間|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
第9話 氷の狭間
目の前の、ルリの手の中にある六角柱の石は、ウォールのいた氷門の頂点に据えられていたものだった。
門は厚い氷で閉ざされていたはずだ。
「わぁ!これで六つの石が揃ったね!!」
ミミが嬉しそうに声を上げた。
「……これも、イオが?」
ゆっくりとレイが尋ねる。
「はい。門は破壊しました」
レイはピクッと眉を寄せた。
「……僕が預かろう」
手を差し出すレイのその顔を、ルリはじっと見つめた。
「そうね、重いからイオに持ってもらう?」
「いいや、僕が預かる」
「…わかったわ」
オリジンであるレイが受け取ると、オリジア石はその手に反応して白く輝きだした。
「これは、空白の塔の石だな…」
レイは腰の袋から別のオリジア石を取り出し、ルリの前に差し出した。
「……こっちは、門の前で凍っていた旅人が持っていたものだ。自信の塔の石だと思う。持っていた彼は、もう……」
ルリはそれを受け取ると、指でそっと石を撫でた。
ほんの少し断面が歪んでいる。
「ええ、間違いないわ」
「分かるのか?」
「私も持ったことがあるの」
ルリはそう答えると、ゆっくりとレイの手に石を戻した。
そして皆の方に顔を上げた。
「みんな、お腹は空いてない?何か少し口に入れましょうよ」
「そういえばペコペコだぁ!!あのジグザグ階段で全然食べてなかったよー!」
「そうね、不思議な道のりだったわ…。夢の中に迷い込んだようで」
ルリが白いマフラーの首元をキュッと握る。
「登っても登っても長くて…、ようやく頂上に辿り着いたら、この崩れかけた門でしょう?
あなたたちがいて良かったわ」
ホッと息を吐くと、ルリは自分の荷物からいつもの手つきで保存食を取り出した。
レイは黙ってその様子をみていたが、それ以上は何も言わなかった。
吐息が白く凍りつく。
五人は以前のように休息の支度を整えた。
ルリのハーブティの香りがふわりと広がる。
氷の壁に、薄い湯気と自分たちの姿が歪んで映っていた。
タトの呼吸はようやく深く、安定してきたようだった。
氷がわずかな光を反射して、氷山の青い内部は、暗くもあり明るい。
氷の切れ目からのぞく空には、グリーンの光のカーテンがゆらゆらとなびいていた。
「ねぇルリ、何か歌って?」
身を寄せたミミがポツリと言う。
「ええ。みんなで少し眠りましょう」
氷山の内部にうっすらとルリの歌声が響いた。
透き通った氷に小さく反響していく。
ルリはその残響すらもコーラスにして、即興を歌う。
不思議で美しいその音の波に揺られ、皆の心は凪いでいく。
癒しと光の歌姫、ルリ。
その声は、氷山の果てなく広い空間の奥へと吸い込まれるように消えていった。
(第八章へつづく)


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