#8-7 三人の出発|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

氷山の山頂から、内部の空洞を通って、底のパレスを目指す一行。立ち込める靄の中、一本道がループしていることに気付き、レイとイオが上階へ調査に向かった。しかし、二人はいくら待っても、戻ってこなかった。
8-7 三人の出発
「それにしても遅すぎる…」
「ええ。ゆうに一日は経っている気がするわ」
「ねえ、ねえ、タト。
あの靄……なんかこっちにきてない?」
ミミの声に、タトは階下に視線を移した。
階段の下から這い上がってくる青白い靄は、いつの間にか先が見えないほど濃くなり、じわじわと三人の足元に迫ってきていた。
思わず後ずさりし、一段、上った。
「……私たちも、上の階へ戻りましょうか?」
ルリが不安げに螺旋階段の上を見上げる。
タトは少し考えて、レイの言霊が彫られた角笛を胸元から取り出した。
これを吹けば、同じ物を持つ者同士、お互いの位置が分かるはずだ。
フィー!フィーー!
細く乾いた音が、荒々しい氷壁に反響しては巨大な空洞に吸い込まれていく。
――しかし、何の反応もなかった。
タトは硬い表情のまま言った。
「この歪んだ螺旋階段で、レイ達は別の空間に紛れ込んだと思ったほうがいい。
上っても、会えないだろうね」
「えー、じゃあ下りるしかないじゃん」
ミミが真実をサクッと言う。タトは靄をじっと見つめた。
「うん。下へ進もうと思う。ルリはどう?」
「そうね、目指す場所は決まっているもの」
ルリは毅然と頷いた。
「底で落ち合えるかな〜」
この寒さと不安の中、こともなげに言うミミ。その軽さにいつも助けられてきた。
タトは決意し頷いた。
「ミミ、何をしてるの?」
ルリが、壁に張り付くミミに声をかけた。
「へへ、レイの真似〜。印つけておこうと思って」
ミミは鋭い爪で、氷の側面にガリガリと落書きをするように削っていた。
「いいね、メッセージを残そう」
タトも加わる。
「ふふ、何か記念に書いておこうかしら」
三人は思い思いに彫り終えると、荷物をまとめた。
「二人とも、ロープは繋がっているね?」
「うん!」「ええ」
「よし、行こう」
覚悟を決め、青白い靄の海へと足を踏み入れる。
冷たい煙のような感触が、一瞬で三人の視界を奪った。
延々とつづく階段は一体どこに終わりがあるのか、先は見えない。
それでも、繋いだロープの重みだけを信じて、ただ目の前の一歩を確実に降りていった。
(つづく)
※本来1話だったものを前・後編に分けたので、明日は後編を更新します。
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〇第八章マガジン
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