#8-8 空洞に見るもの|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

第8話 空洞に見るもの
コツ、コツ…
濃い靄の中に入った瞬間、空気が重く沈んだ。
三人の足音が小さく響く。そっと呼吸をつなぎながら階下を目指す。
タトは先頭で弱い空気の流れを受けていた。
空洞の闇が、思考の闇と重なって、一歩降りるたびに氷山の深淵へと誘われるようだ。
三人は淡々と降りる。
ひと言も発さず、自分の思考の闇にとらわれて行った――。
***
コツ、コツ、コツ……
螺旋階段が歪む。
……コツ。
一つ、音がずれた。
*
(タト)
いや、自分がふらついたのか?
――ケレド、ホントウダロウカ?
あのときのボクが、唐突に首をもたげる。
不完全でいいのだと、自分に言い聞かせたはずだった。
でも、満足って、何が……?
弱さを正当化するための逃げなんじゃないのか……?
*
(ミミ)
また階段。
ここ嫌だ。
早く逃げたい。
ここではない何処かへ――。
なのに足は止まらない。
タトの手を握る。
……冷たい。
熱が、伝わらない。
あんなに温かかった隣。
もう一人じゃないと信じていたのに。
こんなロープじゃ……
*
(ルリ)
オリジア石の光が、妙に明るい。
白っぽい光が、目に刺さる。
何なの?
……腹立たしいわ。
*
(タト)
自分に魔法が発現した?
それで、何をした。
がむしゃらなタトはどこへ行った?
ボクも、女性らしさを手放さず、そうあるべきだったんじゃないか?
必死だった?
違う。
守っていただけだ。
自分を。
自分だけを。
誰にも触れられないよう、この「ボク」という殻に閉じこもって。
*
(ミミ)
みんないなくなった。
出会っても、出会っても
離れていく。
ミミはまた、
一人ぼっち。
コントロールできるのが偉いの?
迷惑をかけないのが賢いの?
大きな声を出したら、
嫌われるの……?
*
(ルリ)
利用されていた…?
私としたことが。
……とんだ皮肉ね。
ラーが忠告していたのに。
いつだって私は、みんなのために誠心誠意、尽くしてきたわ。
それが、「私が持った力」での貢献だったはず。
なのに……
誰かの「合理」を動かすための、計画の一部に過ぎなかったというの?
このオリジアの光、
まるで
私を笑っているみたい……
いいえ!
私の主導権は、私が握るわ!
*
(タト)
守れ。
奪われないよう、
壊されないよう、汚されないよう…
守れ。
守れ。守れ。
ジブンダケヲ
マモレ。
サモナイト――?
*
ぽっかりと空いた空洞を靄が埋め尽くす。壁に沿ってぐるぐると続く氷の螺旋。
踏み出すたび、自分の足音ではない「誰か」の音が、どこかで重なる気がしてくる。
――三人は、もはや共に歩く仲間の顔さえ、思い出せなくなっていた。
(つづく)


◯本編はこちら
◯設定・サイドストーリーはこちら
〇第八章マガジン
いいなと思ったら応援しよう!
ここまで読んでくれてありがとう♡