#2-13 塔の石の沈黙|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜
第13話 塔の石の沈黙
タトは話題を変えた。
「この街に、オリジンはいますか?」
その問いに、エリザは少し考えて答えた。
「いいえ。ここにはもう、オリジンも石を探す者はいません。どちらも伝承で聞くくらいで、今まで、本当かどうかも疑っていたほどです」
その声には、諦めの色と、拭いきれない期待がにじんでいた。
「そうですか……」
タトは、そっとカップを置いた。
微かな音が、静けさのなかに響く。
「別の街のことを、なにかご存じでしょうか?」
エリザはうなずき、壁の古い地図の一角を指さした。
それは地図というより、切れ端だった。
だが、丁寧に額に入れられて飾ってある。
「ここから北東に、“知識の塔”があると言われています。ノーレムと呼ばれる地。
古くから書などの蓄えがあったと聞いています。けれど……今は確かめる術もありません」
その指は、ほんのわずかに震えていた。
「ありがとうございました」
タトは静かに立ち上がった。
「ノーレムへ向かわれるのですか?
あちらは…先ほども申しました通り、水で覆われています。
過去の業火で湿原になっていて進めません。」
エリザが言いにくそうに口を開いた。
「もし、向かうとしたら、大周りをして魔獣の連峰を抜けることになります」
自分達の過去の過ちと、何度もの挑戦の苦悩が見て取れた。
タトは黙って頷いた。
食事と宿を勧められたが、丁重に断った。
タトが深く一礼をすると、
エリザが何かを言いかけたように見えたが、言葉にはならなかった。
教会の外は、もう日暮れの匂いがしていた。
(ミミが、待っている)
タトは足早に、街を後にするのだった。
(第三章へつづく)
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