#6-6 無垢なる殻|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
【前回までのあらすじ】
ルリとイオが離脱し、ラーフェへと引き返してしまった。残されたタトたちは空白の塔を目指すが、恐れていた「魔攻撃」が彼らを襲う。壊滅的な被害で命の灯が消えかけるミミ。救いたいと願う一心で、分裂していた二人のタトは一つへと統合を果たし、目醒めた魔法の力でミミの命を救ったのだった。
6-6 無垢なる殻
「タト、一旦ここを離れよう。」
焦土と化した大地に冷たい風が吹き込む。
レイの声にタトは頷き、
腰布を外してミミをくるんだ。そしてそっと抱きあげると、二人は森の奥へ入った。
いつまた魔攻撃が飛んでくるか分からない。木々は風を遮り、雪が枝に静かに積もっていった。
「大きい攻撃があったら、しばらくは間が空く。今のうちに落ち着こう」
レイが周囲を見渡しながら言う。
「タト、さっき……君の力でミミを癒したんだね」
「え、うん。気づいたら夢中で……」
「それと、分かってるかい? 君、一人の体に戻ってる」
「あ……本当だ」
レイが小さく笑う。
「君はタかい?トかい?」
「タトだよ」
「はは、そうだった」
レイのまなざしが、タトを静かに確かめる。
「あの呪文、ルリと同じ歌だね…。より、精度が高かった」
「思い出したんだ。昔、ルミナリーで見た碑石にあった癒しの歌……。
ボクにも魔力があったなんて」
「言ったろう?みんなに、あるのさ」
タトは少し目を伏せ、ミミの寝顔を見つめた。
「ミミを助けられてよかった……これでちゃんと休ませてあげられる」
タトがそっと地面に手を触れる。すると大地から太い枝が伸び、ゆっくりと編み込まれるようにして、丸いシェルターを作り上げた。
中は薄く香る木の匂いと、ほのかな暖かさが満ちていた。
「すごいな……風も入ってこない。
僕らも少し休もう。魔法は消耗するからね」
「うん……。
レイ、飛ばされる直前に魔法をかけてくれたんだね? ボク、無傷だったよ。
それにライアンの笛も……」
「ああ。角笛にも呪文を彫った」
「ありがとう……。ライアンも……」
その言葉はしだいにかすれ、タトはそのまま深い眠りへ落ちていった。
レイはそれを見ると、自分も静かに目を閉じた。
***
一方のルリとイオは、
愛の塔へ戻り、地下都市ラーフェへと向かっていた。
イオは地下へは立ち入らず、ルリだけが小さな木戸から地下都市へ降りていく。
入り口は変わらず温かな緑の光で満たされ、彼女をラーフェへと迎え入れた。
彼らの暮らしを支える柔らかな光に、ルリの美しい横顔が照らされている。
「……いきさつは、以上です。
私たちは女王を倒して、この地に安寧を取り戻したいと思います。」
言葉を切ると、ルリは温かな談話室をゆっくりと見渡した。
「この地下都市の優れた技術、そして水と光のエレメンタルの大いなる力。
これらをもって女王を制すれば、閉ざされた世界に光を取り戻せるはずです。
その先に待つのは、この街のさらなる発展――。私は、そう信じて疑いませんわ」
ルリの語りは歌うようで、聴き心地のよい響きを持っていた。
長であるモーゼと妻のラーは、ルリの話を遮ることなく、その優しい瞳でじっと見つめていた。
壁をつたう水が、チロチロと静かな音を奏でていた。
(つづく)
〇ルミナリーの碑石の話(全3話)


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