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ある日のきおく:森の碑石①〜サイドストーリー

【背景】
追憶のオリジン本編から遡ること数年前。タトがまだ10歳前後の頃、希望の塔の街ルミナリーでのお話。



「え?何でジュース作り職人になったかって?」
ジルは目を丸くして、思わず聞き返した。

タトからそんな相談が来るなんて、思いもしなかったからだ。

外では何でもできるふうに振る舞っているタトだが、仲間内では物静かで口数が少なかった。それは、気を許した人にしか見せないタトの“わがまま”だった。

その子が、こんなふうに正面から弱みを見せてくるなんて。


「なんだよ、いよいよ行き詰まったか?」


ついからかいたくなって、ジルはニヤリと笑う。
タトの眉がピクリと動いた。

……あ、これ、茶化しちゃダメなやつだ。


「あー、どうした、急に?」


柱にもたれたまま、タトは言いにくそうに口を開く。


「…まだ仕事が決まらないんだ」


「そういえば、色んな仕事を試してたな。気に入るの、なかったのか?」


「どれもそれなりによかった。だから、よけいに決めきれないんだ。」


「……ふうん。」


少し考えて、ジルは口を開いた。


「おまえは、あれだ。例によってまた、街のためとか、正しい場所はとか…そういうのぐちゃぐちゃ気にしてんじゃねーの?」


ベリーの実を潰す手を止めてタトの顔を見ると、どうやら図星だったらしい。タトらしいな。


「あのなぁ、私だって、薬とか調理とか、他にもいろいろ道はあったんだ。装備屋って道もあった。
でも、選んだのは私自身だ。誰かに言われたんじゃない。自分で、これにすると決めた。」

「お前だって、木こりになるって決めてもいい。力が足りないかも、とか、婆の手伝いが、とか――そんなの関係ない。結局は、自分が決めるしかないんだ。」


「……」


タトは腑に落ちない顔をしている。


「それにさ――例えば、ひとつに決めない生き方だって、あるんじゃねぇの?」


何気なく言ったつもりだったが、そのアイデアが気に入って、ジルはまた、ひとりニヤリと笑った。




(つづく)

森の碑石②


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望月むう(ムーン)🐾|物語と思考|物語に浸りたい ここまで読んでくれてありがとう♡