#9-7 胸の痛み|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
第7話 胸の痛み
女王に取り込まれたミミは、ズキズキとする痛みを感じていた。
体に傷はなかった。だが、痛むのは胸の中心だ。それは、くり返し刺されるような、鋭い痛みだった。
胸に手を当てたまま目を開くと、そこは荒野だった。
草木が一本もない。
びゅうびゅうと強く冷たい風だけが、ミミを押し倒しそうなほど吹き付けてくる。
胸も痛い、身体も痛い。
あまりの痛さに、涙が溢れてくる。
「うう…っ」
声が漏れる。
痛い、
つらい、
悲しい、
さみしい、
怖い、
苦しい、
その次に、何を感じればいいのだろう。
(誰か、誰か……)
誰も、思いつかなかった。
何をして欲しいのかも、分からない。
(ああ…お願い…)
どうしようもなく痛む胸の前で、両手を握り、ひざまづく。涙におおわれた顔は、重くて上げられない。
うなだれたまま、祈った。
(どうか、お許しください。罪深きこの存在を…)
あのとき言われた言葉が、思い出された。
『存在する恥を知れ!』
体は震えない。
けれど、より一層、涙が溢れた。
(お許しください……)
泣きながら、一心に祈った。
その耐え難い痛みは徐々に全身に波及して、
ミミはまた、意識を失った。
たった一人。
何度も何度も目覚めては、同じように
痛みと、涙と、祈りと、繰り返す。
そして、許しを乞うた。
(お許しください、お許しください……)
『ミミッ!!』
はっ!
声が聞こえた。
『まだ子どもだ!できなくて当たり前だ!』
『ボクも一緒に行くよ』
『きみこそ素晴らしいよ』
『君とならきっといけると思うんだ』
『始めまして』
『いてくれてよかった』
『自分を大切にするんだよ』
『君さえ生きていてくれれば、何もいらない』
タトが微笑む。
レイが頷く。
ルリが笑いかける。
一つ一つの時間が、言葉が、日々が、
光となって集まる。
それはミミの目の前に合わさって、オリジア石のように輝き出した!
光から声が響く。
『お願い、苦しまないで……』
『……もう、いいんだよ』
『すべてのことから君を許すよ、「ボク」が……』
ミミは心の中で応えた。
(うん……そうだね。)
(私も、許すよ……)
『赦そう……』
目を、開いた。
胸が熱い。
呼吸が苦しく、吸っても吸っても、肺に入らない。
ハーッ、ハーーッ
ハーーーッ
視界がクリアになってくる。
ミミは、上空に浮いていた。
炎に包まれた鳥となって、
灼熱の翼を羽ばたかせ、飛んでいる。
世界のすべてが眼下に見えた。
「ミミ……!!」
白鷹に乗ったボロボロのレイが、悲しそうな顔でミミを見ていた。
『わらわは…』
口から勝手に言葉が出たが、
後が続かなかった。
(つづく)
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