#8-1 レイの語り①|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

第八章 邂逅する記憶
第1話 レイの語り①
昼も夜もないこの氷山で、どれくらい休んだだろうか。
タトの頬にようやく赤みが差したのを確認し、一行はいよいよ螺旋階段を降りることにした。
氷山の内部は、巨大な円錐状の空洞になっていた。
壁に沿って刻まれた螺旋階段は、下へ行くほどにその径(けい)を広げ、深い靄に包まれた階下へと続いている。
手すりも何もない段差は、決して歩きやすいとはいえなかった。
さすがのルリも、底の見えない暗がりに不安げな声を漏らす。
「ここを降りるの?……底が見えないわ」
「大丈夫だよ、ルリ。底は、必ずある」
タトがなだめるように微笑むと、ルリは自分に言い聞かせるように深淵を見つめた。
「……そうね、そうよね。…イオ?」
「はい。私は後ろからサポートし、皆さんの安全に最善を尽くします」
レイを先頭に、タト、ミミ、ルリ、イオと並び、慎重に一歩を踏み出した。
カツ、カツ、と足音が冷たく響く。
裾野へと広がる空洞は、一周するごとに階段の数が増えていく。
先の見えない空間を見据えたまま、レイがおもむろに口を開いた。
「ここまで判明しているこの世界について、一度整理して、共有しておこうと思う」
その声は氷壁に反射し、凛と響いた。
「これは、ノーレムに遺された資料とこれまでの旅で得た知識を合わせた、僕なりの推論だ」
単調な足音を追いかけるように、レイの語りが始まった。
*
「……本来この世界は、女王のいる中央のパレスから光が放たれていた。
それを六つの塔が受けて、再びパレスへと返していたと言われている」
「……その役目が、オリジア石だね?」
タトの問いに、レイは足元を確かめながら答える。
「うん。
地を通って送られた光を、各街の塔の地下にある『源光盤』で受け取る。そして、光は空洞の心柱を通って、塔の頂上に据えられたオリジア石からパレスへ返る。
その循環こそが、塔とオリジア石の役割だったと考えられている」
「オリジアの光と塔……本当だったのね。おとぎ話かと思っていたわ」
ルリの呟きに、レイは淡々と事実を重ねた。
「ノーレムの古い文献と、ラーフェの書物に同じ記述があった。おそらく間違いない」
下からヒュウ、と冷たい風が吹き上がる。
「……だが、約六〜七百年前、何らかの原因で塔が倒壊して、その光が失われた。
同時に中央のパレスは凍りつき、そこから瘴気が漏れ出した。
そして、森や動物が狂い始めた……」
誰かがゴクリと唾を飲み込む。
「塔の倒れ方から見て、中央からの力の暴走で倒壊したのだろうと考えている」
ミミはフェリサリアでの石の発掘を思い返して頷いた。
レイは立ち止まらず、さらに声を潜めて続けた。
「ここからが重要だ」
(つづく)



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