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#8-2 レイの語り②|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

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〜前回のあらすじ〜
氷山内部の深い空洞に沿う螺旋階段を降りながら、レイはこれまでを語る。
かつて、中央のパレスから発せられた光が、地を巡り各塔のオリジア石を介して再びパレスへと還る光の循環があった。しかし数百年前、全ての塔が突如として倒壊。パレスは凍りつき、氷山と化す。こそからあふれ出した冷気と瘴気で世界が狂い始めた…。
深淵へ進むと共に、五人はその核心に迫ろうとしていた。

8-2 レイの語り②


「ここからが重要だ」

階下からの靄がじわりと足元に立ち込める。


「この世界は定期的に、氷山からの大規模な災害が起きている。まるで街が発展しようとするのを妨げるかのように……。
みんなから聞いた各街の記憶と照らし合わせると、世界全体を襲ったものもあれば、フェリサリアのような局部的なものもあった」


「モリトケ湿原だね…」


「そう。
イオの分析では、森の瘴気や魔現象は『記憶と苦しみの残響』だったね?」


「はい。氷山の方向から思念が観測されています」


「あれらはすぐに命を奪うものではない。
しかし精神を蝕み、動きを奪い、凍死や魔獣の襲撃へと追い込む。
あるいは内面を削り、力の暴走を誘う……
多くの火魔法能力者が破滅し、フェリサリアの湿原が生まれたという伝承も、辻褄が合う」


みんなの息遣いが、長くため息のように響いた。


「錯乱した魔獣、幻覚を見せる魔植物……世界は均衡を失い、森によって分断された。

そして、冷害のたびに氷は厚くなり、氷山は巨大化していった」


レイは言葉を選びながら、歩みを若干緩めた。


「これは僕の憶測だけど、
誰かがこの氷山に近づこうとするたび、大規模災害が引き起こされた可能性がある……」


「まさか……」

タトの次の一歩が、止まりそうになる。


「そして、あのドーマの言葉で確信した。
あの災害は、門番ウォールと裁判官ドーマが『制裁』として手を下していた……」


「なんてこと!」

驚くルリとイオに、門での出来事を簡潔に伝える。


「本来、この氷山は瘴気と冷気、それに魔攻撃で近づくことすらできない。
唯一の入り口が、あの門だった。

けれど、ウォールはあそこに辿り着いた有能な人々を、選別して凍らせていた。
オリジンは城壁の一部にされ、それ以外は地面の下だ。
そして、彼女が気まぐれに通した僅かな者も、この氷山にいたドーマに裁かれて散っていった……」


「ひどいわね…」

ルリの声が震える。


「……あの二人は、パレスに眠る女王と、この世界を必死に守っていた。

どこまでが彼らの意志だったのかは、わからないけれど」


レイはここで言葉を止めた。

彼らはこの氷山の深淵に、落ちていったのだ。

五人は、頂上から徐々に広がっていく中心の空洞を無言で見つめた。


ふと見上げれば、階段の始まりは、はるか上で淡く光っているだけだった。



(つづく)


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