#3-7 鎮座したオリジア|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜
暖炉のある談話室は、フェリサリアとはまた違う、整然とした静けさがあった。
「レイ、君が上から降りてくるなんてな」
男性が感慨深げに言うと、少年は軽くうなずいた。
「僕が行かなければ、始まらないからね」
男は一瞬、潤んだ目を伏せ、それからしずかに向き直った。
「私は知識の塔の守り人、ライアンです。
こちらはレイ。」
レイはグレーの瞳が印象的な少年だった。
「さて……、どのようにしてここまで辿り着かれたのか、お聞かせ願えますか?」
タトはこれまでの出来事を語り、それぞれの街の様子も伝えた。
ライアンは、時に少年のように目を輝かせ、またある時は深く思案に沈みながら、話に聞き入っていた。
その横で、レイは静かに本を読んでいる。
話がひと段落したころ、ミミがジャムクッキーを頬張りながら尋ねた。
「レイは、なんで待ってたのー?」
「…」
レイはちらりとミミを見て、無言のまま本に視線を戻した。
代わりに、ライアンが少し困ったように笑って答える。
「我々は代々、オリジアを守ってきた。
生まれた子どもには、必ずそれに触れさせる習わしがあってね。
生まれたときから、彼がオリジンだと分かっていたんだ。」
「彼が、オリジン……。
その、オリジアって……光る石のことですか?」
「その通り。
我々は崩れた塔を改修し、できる限りのものを発掘して、街を整えてきた。
ここには、たくさんの知識があるはずだよ。」
「では…、なぜ動かなかったのですか?」
レイはページをめくる手を止めることなく、口を開いた。
「合理的じゃないからだよ。役割というものがあるだろう?
君たちが来るのを待っていた。それだけさ。」
ごく当たり前のことを話すような口ぶりだった。
「我々も、いつか誰かを迎える日が来ると、信じていたよ…」
ライアンは感嘆の吐息をもらし、タトとミミを見つめ直した。
その顔には、喜びと安堵の色がにじんでいた。
「レイは無類の本好きでね。幼いころから塔中の本を読みあさって、ほとんど図書館にこもりきりさ。
彼の声を聞くのも、何ヶ月ぶりだろうね」
肩をすくめながら、ライアンは仕方なさそうに――
けれどもどこか、誇らしげに笑った。
(つづく)
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