#3-6 塔の少年|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜
「うわあ……」
教会の扉がゆっくりと開いた瞬間、ミミが小さく声を上げた。
厳かな空気が流れ出す。
どの塔も、同じ作りのはずだった。
けれど今、祈りの間の奥に、もうひとつの部屋が見えている。
二人の故郷の教会塔では、崩れていて辿り着けなかった場所——
“光の間”が、初めてその姿を現していた。
その部屋の中心には、細い柱が立っていた。
中を通る一筋の光が、地から天へと、まっすぐに伸びている。
二人は祈りの間を進み、その奥の光の間へ、吸い寄せられるように足を踏み入れた。
石造りの壁。
らせん状に伸びる階段。
白い光の柱。
崩れず、完全なまま残された教会塔の内部——
その静かな美しさに、二人は言葉を失った。
しばらくして、タトはその光の前で祈りを捧げた。
ミミも真似をして、少しの間だけ目を閉じた。
今までにない、心の静けさがそこにはあった。
タトはどれほど祈っていただろう――。
「熱心に祈っていますね」
顔を上げると、ひげをたくわえた初老の男性が立っていた。
「おや、森からの帰りかね? 見慣れない……、獣族、の子……?」
赤毛のミミを見て、男性は言葉を止めた。
「知識の塔、ノーレムの守り人様ですか? 私たちは、ルミナリーとフェリサリアから参りました。タトとミミと申します」
故郷ルミナリーの長老婆に似た、ゆったりとした雰囲気の男性に、タトはひと目で好感を持った。
男性が目を見開き、言葉を発しようとしたその途端――
「やっと来たね」
子どもらしい高い声が、上から響いた。まるで天の声のように。
螺旋階段のその上に――
細身で、整った顔立ちの少年がいた。
白っぽい髪が、光に照らされて輝いているようだった。
「君たちが来るのを、待っていたよ」
「——えっ?」
その言葉に、二人だけでなく、守り人の声も重なった。
細身の少年は、静かに石階段を降りてくる。
「レ、レイ……」
守り人らしき男性は唖然と少年を見つめた。
「な、何がどうなってるんだ…。いや、まずは落ち着こう。
…お二人とも、どうぞこちらの部屋へ。お茶を用意します。
…レイも、それでいいかい?」
「ああ。」
レイと呼ばれた少年は、少しも表情を動かさずに返事をした。
(つづく)
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