#9-4 六つのオリジア石|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

第4話 六つのオリジア石
ドーマとウォールの化身である氷が、イオの手によって霧散した。
「あ……」
タトを抱えていたレイが、その光景に目を見開く。
「タト、大丈夫!?」
ミミの問いかけに、タトは荒い呼吸を繰り返しながら、自分の腹部に震える手を当てた。
血に濡れた服の下、傷がふさがっていた。激しい熱がまだ全身を駆け巡っている。
「……う、ん……ありがとう、ミミ、レイ。平気……」
タトは口を拭うとレイの腕を借りて、ふらつきながら自分の足で床に立った。
まだ顔色は白いが、その瞳はしっかりとしている。
「良くやったわ、イオ!!女王は氷の下よ!」
ルリが、乱れた息を整えながら高揚して言った。
イオは仮面の奥で、静かに地下の氷床を見つめている。
「私は、イオフィリア。女王を支えるためにこの世界にいます」
その声は平坦だった。
ルリの瞳が、青く沈んでゆく。
「……イオ?なぜ……?」
「女王を確認したことで、初期設定が復帰しました」
タトを支えながら、レイが一歩前に出る。
「女王を、目覚めさせよう。――いいかい?」
「危険だわ!!また…また攻撃されるかもしれないのよ」
「それでも…、彼女に会いにここへ来たんだよ、ルリ」
「タト……」
傷を受け、まだ手足が震えているタトの言葉に、ルリは言葉を失った。
「賢者の石よ」
レイが問いかける。
「深い氷の底にいる女王を、どうしたら目覚めさせられる?」
石はゆっくりと答えた。
「オリジア石をはめ、呼びかけてみるがいい。
だが……、女王は眠ることで守られている。
――覚悟はあるか?」
「はい」
タトとレイがうなづく。
ルリは唇を噛んで、短剣をギュッと握った。
台座に、六つのくぼみがある。
一つずつ六角柱の石をはめていく。
希望の塔…
タトはそっと石に触れた。祈るように。
友情の塔…
ミミはためらいながら、不安そうに差し込んだ。
知識の塔…
レイは位置を確かめ、静かにはめる。
自信の塔…
ルリはかすかに震える指で、押し込んだ。
愛の塔…
イオは迷いなく、淡々と置いた。
そして、最後の石。
ウォールの守っていた門にあった、空白の塔の石を、レイが丁寧にはめた。
台座に六つの石がそろう。
石は淡い光を共鳴するように放った。
カチリ。
レイは台座に顔を寄せ、静かに呼びかけた。
「女王様――お目覚めください」
「………」
「この世界の女王。どうか、世界のために、目覚めてください」
オリジア石の光がスーッと氷の下に降りていき、わずかに地面が揺れた。
【……だれ…】
その声を聞いた瞬間、ドクン、と大きな鼓動のような振動が、そこにいる全員の身体を突き抜けた。
氷の底から、ゆっくりとなにかが浮かび上がる。
それは、眠り続けていた女王の身体だった。
同時に、透明の箱の中の幻が揺れ、二つの姿はピタリと重なった。
ピントが合うように、輪郭が合い、色づき、光があふれ――
パリン!
透明の箱が砕け散った。
中心にいたはずの女王の姿は、消えていた。
「女王は……?」
その時、上空から、か細い声が振り注いだ。
【ここ……どこ……?】
見上げると、白い光が、広間の上空に浮かんでいる。
その中心に、女王がいる。
女王はその体から光を発し、目覚めとともに高い場所から、
世界のすべてを見渡そうとしていた。
(つづく)


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