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Netflix「匿名の恋人たち」が教えてくれた、誰もが働きやすい職場を作るヒント

つい最近Netflixでリリースされたロマンティックコメディをみた。
「匿名の恋人たち」だ。
予告映像をぜひ観てほしい。

なぜこれをみたのかって?
私は、赤西仁氏のファンだったのだ。(過去形)
「歌って踊れるアイドル」のファンになり、中学校2年生から高校3年生までの私のヲタ活は、KAT-TUNのCDを買うこと。A盤もB盤も、全部、買っていた!封はあけずにただ保管していたものも。

……という青春時代の回想はそこそこにして。

「匿名の恋人たち」は、短編でまとまった小説かのように、8話で構成される。
ロマンティック”コメディ”と表現されているだけあって、「流石にこれは現実世界では起きないでしょう……(笑)」とつっこみたくなる場面もあるのだが。そのやや非現実的な感じが、この物語を体験するアクセルにもなった気がする。4日間ほどで全話を観てしまったよ私は!


まずは簡単に、登場人物とあらすじを紹介したい。
ネタバレにならない程度に。

出典:Netflix

登場人物
壮亮(そうすけ):小栗旬氏演じる、潔癖症で、人と握手さえ交わせない製菓メーカーの御曹司(主人公)
ハナ:ハン・ヒョジュ氏が演じる視線恐怖症を抱える天才ショコラティエ(ヒロイン)
寛(ひろ):赤西仁氏が演じる壮亮の数少ない理解者である友人
アイリーン:中村ゆり氏が演じる壮亮の友人で精神科医
藤原孝:成田凌氏が演じる壮亮の従兄弟で仕事のパートナー
川村元美:伊藤歩氏が演じる 【ル・ソベール】のチーフショコラティエ
黒岩健二:奥田瑛二氏が演じる 【ル・ソベール】のオーナー・ショコラティエ
藤原俊太郎:佐藤浩市が演じる壮亮の父で、双子製菓の会長

というキャスト。豪華だ……!

あらすじ
30-40代の大人の純愛を描く“ロマンティックコメディ”として始動した、Netflixシリーズ「匿名の恋人たち」。“人に触れられない”“人の目を見られない”という、恋愛には絶望的に向かない男女の恋模様を、実力派の豪華キャストと世界で活躍する日韓のスタッフが集結し、不器用だけど愛おしい大人の恋をコミカルに描く。

Nextflixページより一部引用

映画.comのあらすじ、キャストまとめも参考になる。
https://eiga.com/news/20251016/16/


見えないけどそこにある何かしらの事情

誰もが、何らかの「事情もち」でありながらも、その事情はないかのように暮らしている。これが私たちのふつうの日常ではないだろうか。

少しだけ、私自身の話をしてみたい。
先日、知り合ってそろそろ5年になる、Sさんと話していた時のこと。初めて私は、その方は目眩(めまい)持ちであることを知った。海外出張が多く、しかも長期で現地に滞在しているときに症状が出ることもあり、周囲の理解が得られないもどかしさを何度も体験したそうだ。

それを知ることになった経緯は、ある日Sさんとの打合せ中、私が急に目眩で気分が悪くなってしまい、トイレに駆け込むことになったためだった。「ちょっとお手洗いに行かせてください」までは、なんでもない風に言えた。

……が、トイレについてからは、吐き気と視界のグルグルが落ち着くまで動けなくなってしまった。しゃがみ込んだまま、トイレからSさんに電話をし、状況を説明。その日の打ち合わせは予定よりも少し早く終了することになった。

その後、ご挨拶のメール中で、「私も長く目眩には悩んでいます」とSさんからの共有があった。目に見えていなかったけど、そこにある事情がふんわり目の前に浮き上がってきた瞬間だった。


壮亮が持つ潔癖症とは何か

ここからは、主要の登場人物「壮亮」と「ハナ」を中心に、この物語が持つ「働きやすい職場を作るヒント」に着目して書いていきたい。

まずは、主人公の壮亮の事情について。
あるきっかけが原因になって、壮亮は幼少期から、人に直接触れることができなくなる。文字通り「直接」触れられない。触れられないのは、人だけでない。飲食店のメニューさえ、直接触れるのはむずかしく、ハンカチを使ってページをめくる。

菓子メーカーの御曹司である壮亮は、会社の後継者として人に会うこと自体が仕事といってもいいくらいだ。潔癖症が彼の人生に与える影響は、様々なシーンで描かれるのだが、特に印象に残ったものがあった。

それは、他社のキーパーソンと、対面した時のこと。相手方が手を伸ばしたとたん、ジトリ……と汗が、壮亮の顔ににじむ。握手を求められた時、壮亮はそれに「握手で」応えることはできない。

とっさに、その場に居合わせたハナが、握手を代わりにしてくれる。それは、ハナが機転を効かせたからでもあるのだが、同時に、壮亮がハナに、「私のかわりに握手をしてほしい」と合意をとっていたからでもある。


ハナが持つ視線恐怖症とは何か

ハナが付き合っているのは視線恐怖症人と目を合わせることはもちろん、人から集中的にみられることがストレスとなって、パニック発作を起こす。

オンラインでカウンセリングを受けるシーンがあるが、その時ハナは、なんと剣道の面をかぶっている。そう、面のあみあみが、ハナにとっては視線を合わせず人と接するのにちょうどいいガードになってくれるからだ。

ハナは、ショコラティエ(チョコ菓子の専門職)として素晴らしい腕がある。その腕前が評価され、「ル・ソベール」というチョコレート菓子専門店で働いて暮らしている。

ただ、その働き方はちょっと変わっている。彼女の住まいには、小さな工房も併設されており、いつも、ハナは一人でチョコ菓子を作る。作ったチョコ菓子は、誰にもみられなくて済む早朝の時間帯に、ル・ソベールの店舗に配達する。自転車に乗り、ヘルメットを深々と被って。

そうやって、人からの視線を受けずに済む環境設定を作ることで、ハナはチョコ菓子職人として働くことができているのだ。ル・ソベールのオーナー黒岩さんが、ハナの視線恐怖症に理解を持っていることで、この労働環境を実現している。

オーナー黒岩さんが、ハナと晩御飯を食べるシーンがある。
その時二人は、食卓なのにもかかわらず、隣に並んで鍋をつついていた。食卓といえば、向かい合って座る方が多いのではないだろうか?

横に並んで座れば、ハナは黒岩さんの視線を気にせず普通に談笑したり食事ができる。だから、この晩御飯シーンは、「視線を合わせなくて済む」という条件だけをクリアした環境を作れば、ハナは特に難なく人と話したり協働作業ができるのだと私に気づかせてくれた場面だった。そして、黒岩さんとハナの間でも、並んで座ることが「彼らの当たり前」として合意されているのだろうとみてとれた。

環境設定を一部だけ変えた時、「人が変わる」を強要しすぎなくてよくなる

現在私は、WORK RULE SHIFT SCHOOL(ワークルールシフトスクール)という活動で、事務局メンバーの一員をしている。

WORK RULE SHIFTとは、既存のワークルール(職場のルール)では不利になってしまう事情を抱えた方が、不利なく働けるようになる新しいワークルールづくりのこと。

WORK RULE SHIFTについてより知りたい方はこちらへ


WORK RULE SHIFT SCHOOLを運営する母体組織のNIMO ALCAMO(ニモアルカモ)は、大阪にあるちょっと変わった一般社団法人。
チャイの専門店を営業している。

このチャイ店には、「茶葉とスパイス」をブレンドする仕事がある。その仕事では複数の人が一定の時間枠内で働く「シフト」という考え方ではなく、「納品制」を取り入れた業務設計をしている。

これによって「いつ来てもいつ帰ってもいいフリーシフト制」が運用できる。体調に波があって「シフト=決まった日時」に合わせた働き方にハードルがあるひとでも働くことができる仕事・ルールを作り出したのだ。

DE&Iに明るい人であれば、「合理的配慮」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。概念としては、次のような定義がされる。

合理的配慮とは、障害のある方々の人権が障害のない方々と同じように保障されるとともに、教育や就業、その他社会生活において平等に参加できるよう、それぞれの障害特性や困りごとに合わせておこなわれる配慮のことです。2016年4月に施行された「障害者差別解消法 (正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」により、この合理的配慮を可能な限り提供することが、行政・学校・企業などの事業者に求められるようになります。
LITALICOジュニアより引用

ここには、「障害のある」と表現されているが、何らかの診断がついていない場合にも、合理的配慮によって誰かとの協働がしやすくなる場面がある。

壮亮が急に握手を求められた時にハナがかわりに握手をする
ハナとご飯を食べるときは横に座る

これは、「合理的配慮」が健全になされた場面だと私は思った。
こういった合理的配慮とともに、ワークルールが実装されると、「働ける」の枠組みに入る人が増えるのではないか…という希望を私は持っている。


ここで、また私の話に戻る。
私は組織開発・人材開発コンサルティングという分野で仕事をしている。職業柄、人がある環境の中で力を発揮するとはどういうことかを考えさせられる場面がよくある。

その代表例が、人事制度を検討する時だ。
人事制度を構成するのは、「報酬」「評価」「等級」の3つの制度。この3本の柱を考える時に問われるのが、「人間をどういう存在としてみるか」という人間に対する眼差しだと思う。

例えば、管理職の人物像を考えるとき、「〇〇スキル」も「▲▲スキル」も……と、もっともっとと能力を期待するのか?と立ち止まりたくなる時がある。
よくあるのは、気づいたら、「これ全部できる人はいるのかな?」というくらいに、求める基準が高くなった人物像。たしかに理想論としては正しいのだろう。でも、人間観としては……?

そんなことを考える中で、私は、「人が変わって一生懸命適応する」ことを「強要しすぎない」働く環境・ルール作りを実践することに興味を持つようになった。
ワークルールシフトスクールや、NIMO ALCAMOの実践を追う中で、あまたあるルールや、働くにまつわる暗黙的了解の中の、何をズラすと、事情もちでも働ける環境が生まれるのか?が目下の関心ごとだ。

なぜここまで、ルールの作り方に興味が湧くのか?
その理由はシンプル。私自身が、ルールの中におさまることができない時期があったからだ。そして、似た状況にいる人の顔もたくさん浮かぶ。

本音を漏らすと、20代のうつ病を経て再び働けるようになってから、私はいつも心の中ではヒヤヒヤしている。
「今はなんとか、ルールに内包される人として働けている。でもそのうちまたはみ出る事情が生まれるんじゃないか?メンタル不調の再発もあり得るんじゃないか?」と思ったりするのだ。

……というか、ルールに内包されない働き方に直面する可能性はそれなりに高いと思う。これから自分が育児を経験するかもしれないし、介護と労働を両立する時期もあるかもしれない。いつだって自分も当事者の一人なのだな、と思う。

だから、ルールや仕事を作る人としての修行の旅に出たいと思うようになった。30代は、「仕事をつくる」をテーマに過ごしていく。

もしかしたら、全国に足を運べばまだまだ事例を掘り起こせるかもしれない。現時点で掲載できる事例をこちらに記録しておきたいと思う。

仕事をつくるプレーヤーの一人として、ワークルールシフトの動向、そして全国で進む「働く」のパラダイムシフトをこれからも追っていきたい。
(2026.02.18)

シブヤ大学でのWORK RULE SHIFT KYOTO活動発表

一般社団法人NIMO ALCAMO

WORK RULE SHIFTの実装を始めた団体事例

一般社団法人青草の原



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