作業工数57%削減——稼働中の倉庫にロボットを並行導入した全記録
この記事を読むと、こんな課題の解決策のヒントが得られます
● 倉庫の自動化・省人化を検討しているが、「稼働を止められない」と
踏み切れない
● 作業の属人化が進んでいて、担当者が休むと業務が回らない
● 入庫のたびに棚スペースが足りなくなり、アナログな管理対応で
ロスが生じている

1.サマリー
本記事は、家電・空調機器メーカーの物流を担う倉庫センターにおける保管棚搬送ロボット導入事例をご紹介します。
作業時間の約半分を占めていた「移動・搬送」の削減、製品群ごとの担当者による「属人化」の解消、そして固定ロケーション管理による「入庫作業ロス」という3つの課題を抱えていた倉庫に、保管棚搬送ロボットを導入。
最大の挑戦は、月〜土まで通常稼働する倉庫を止めることなく、既存運営と並行してロボットを導入しきるという点でした。設備メーカーとの緊密な連携と独自の「段階的ゾーン入替え方式」によってこれを実現し、以下の成果を達成しました。

2.背景:物流業界が直面する「人手不足」と「自動化の壁」
少子高齢化の進行とドライバー・倉庫作業員の慢性的な人手不足を背景に、物流・倉庫業界における自動化・省人化の必要性はかつてなく高まっています。
一方で、自動化設備の導入には大きな壁があります。「稼働を止めれば機会損失が出る」「大規模な移設工事が必要で、その間どうするのか」「導入コストに見合う効果が本当に出るのか」——こうした懸念から、検討段階で止まってしまう企業は少なくありません。
特にメーカー系物流では、荷主である製造会社の出荷リズムに合わせた継続稼働が求められる為、「倉庫を止める」という選択肢はほぼ存在しません。
今回の事例は、そうした「止められない倉庫でも、自動化は実現できる」ことを証明した取り組みです。
3.現場で起きていた3つの課題

課題1:作業時間の約半分が「移動・搬送」に消えていた
対象の倉庫は1,356㎡(約410坪)のフロアに、照明器具・LEDランプ・小物品など多品種の製品を保管。1日あたりの処理量は入庫110アイテム・出庫963件に上ります。
社内の稼働分析を行ったところ、作業全体の44.6%が「移動・搬送」に費やされていることが判明しました。
入庫時は「RBP(ロールボックスパレット)搬送→台車積替え→棚への製品搬送」、出庫時は「棚への移動→製品取出→搬送→仕分け」と、人が何度も保管棚まで往復する構造になっていたのです。
課題2:ゾーン担当制による「属人化」
倉庫は製品群別に5つのゾーンに分かれており、各ゾーンに1〜2名を固定配置していました。人が棚まで移動して作業する以上、移動範囲を狭めるためにゾーンを分けるのは合理的な判断でした。
しかしその結果、「自分のゾーン以外はわからない」という属人化が進行。負荷が偏っても他ゾーンをカバーできず、多能工化も図れない状態でした。
課題3:固定ロケーション管理による入庫作業ロス
製品群別の固定ロケーション方式を採用していた為、入庫量が多い日には棚に収まり切らない製品が発生。空いている別棚に「別置」し、手書きのメモでロケーション番号を控えるというアナログ対応が常態化していました。
別置した製品は元の棚が空いてきたら補充が必要で、本来不要なはずの二度手間が繰り返し発生していました。
4.ソリューション:3つの課題を同時に解決できる設備を選抜
(1)なぜ「自動バケットラック」ではなかったのか?
最初に検討候補に上がったのは、過去に導入実績のある「自動バケットラック」でした。しかし、対象倉庫の梁下有効高さは3.0m。高層化によるスペース活用が最大の利点である同設備では、この倉庫条件では在庫量を保管しきれないことが判明し、候補から外れました。
(2)「保管棚搬送ロボット」を選んだ理由
3つの課題(移動・搬送の削減、属人化の解消、格納スペースの柔軟化)をすべて解決でき、かつ低天井倉庫でも導入可能な設備として選定したのが保管棚搬送ロボットです。
このロボットの仕組みはシンプルかつ強力です。ロボットが専用の保管棚を丸ごと持ち上げ、床に貼付した2次元コードを読み取りながら、人の作業場所(ステーション)まで自律走行で搬送します。「人が棚まで行く」のではなく、「棚がロボットに運ばれて人のところへ来る」という発想の転換です。
導入仕様は以下の通りです。

在庫管理はロボット側のWMSによるフリーロケーション方式に移行。棚の場所を気にせず作業でき、補充作業も不要になります。

(3)当社ならではの強み:「並行導入」の設計力
本事例で最も差別化されたノウハウは、既存運営を止めずに設備を導入しきった「並行導入」の実行力です。
通常、倉庫への大型設備導入では「既存の棚と保管品を全部かわしてから設備を入れる→導入後に戻す」という手順を踏みます。しかしこの方法では、大規模な移管が2回発生し、その分のスペースも必要になります。月〜土まで通常稼働している倉庫ではそもそも実現不可能でした。
そこで当社が設計したのが「1ゾーン完結型の段階的入替え方式」です。保管棚搬送ロボットはアンカー等による固定が不要で、専用保管棚を所定位置に置くだけで稼働します。この特性を活かし、5つのゾーン(E→D→C→
B→A)を順番に、平日業務終了後の時間帯を使って少人数で入替え作業を進めました。
各ゾーンの手順は以下の通りです。
①既存棚の解体・搬出(Eゾーンから着手)
②導入設備位置の墨出し・床への2次元コード貼付
③専用保管棚の搬入・設置
④保管品の専用保管棚への移し替え
⑤専用保管棚への社内WMSロケーション表示
設備(コンテナ7本分)の搬入には外部倉庫を経由し、自社の配送車両の戻り便を活用して輸送コストを抑制。組立は外部倉庫内で先行し、完成した棚を順次センターへ横持ち輸送するという効率的な物流設計も行いました。
社内WMSは設備稼働前日まで従来通り使用し続け、業務終了後に保管品の棚卸を実施。翌日から新システムでの運用を開始するという切替えにより、顧客へのサービスを一切止めることなく移行を完了しました。

5.具体的な効果

▮ 定量効果:作業工数57%削減

出庫件数が特に多かったため、出庫作業における改善効果が最も顕著に現れました。
▮ 定性効果:属人化の解消と作業標準化
導入後、作業者は作業ステーションで待機するだけでよくなりました。必要な保管棚はロボットが自動で運んでくれるため、作業者は作業指示モニターに表示された通りに取り出し作業を行うだけです。
これにより、「自分のゾーンしかわからない」という属人化は完全に解消。誰でも同じ手順で作業できる標準化が実現し、人員の柔軟な配置転換も可能になりました。
6.横展開・応用可能性:こんな倉庫・企業に有効です
今回の「保管棚搬送ロボット×並行導入」のアプローチは、以下のような状況に置かれた倉庫・物流担当者に特に有効です。
• 多品種・中小物品を扱う倉庫で、ピッキング作業員の歩行距離が長い
• 天井高が低い(3m前後)倉庫で、立体自動倉庫の導入が難しい
• 稼働を止められない事情があり、設備導入に踏み切れていない
• 担当者ごとに保管エリアが固定化され、属人化が進んでいる
• 入庫の度に棚スペースが不足し、アナログな別置管理が発生している
• 省人化・省力化を検討しているが、具体的な進め方がわからない
7.まとめ:「止められない倉庫」でも自動化は実現できる
倉庫の自動化において最大の壁は、技術でも予算でもなく、「稼働を止められない」という運用上の制約である——今回の事例はそのことを示しています。
当社が今回実証したのは、設備の特性を深く理解した上で「並行導入」を設計し、日々の進捗管理を徹底することで、ゼロ・ダウンタイムでの自動化移行が可能であるという事実です。
設備選定から導入設計、工程管理、システム切替えまで一気通貫で関与できるのは、物流現場を知り尽くしたメーカー系物流会社ならではの強みです。
今回得られたノウハウは、既に他の拠点への展開にも活用されています。
「うちの倉庫でも自動化できるのか?」という疑問をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
8.お問合せ
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