輸送コスト19%削減——「中ロット便」という第三の選択肢
この記事を読むと、こんな課題の解決策のヒントが得られます
● 路線便に断られ、やむなく割高な貸切便を使い続けている
● 貸切便の手配業務に担当者の時間が取られ、本来業務が
圧迫されている
● 輸送コストを下げたいが、サービスレベルは維持したい

1.サマリー
本記事は、家電・空調機器メーカーの物流を担う配送センターにおける輸送コスト削減事例をご紹介します。
路線便の集荷拒否が慢性化し、貸切便への切り替えが増加。その結果、輸送コストが膨らむだけでなく、配車担当者の手配業務も逼迫するという二重の課題が生じていました。
そこで当社は、「路線便と貸切便のちょうど間」に位置する新たな配送手段「中ロット便」を独自に設計・構築。
新規輸送業者の開拓から販売会社との料金合意まで一貫して対応し、以下の成果を実現しました。

2.背景:物流業界が直面する構造的課題
近年、物流業界は複合的な課題に直面しています。
ドライバー不足と「2024年問題」による働き方改革の影響で、路線会社は従来のように積み卸しに時間のかかる荷物や積載効率の低い配送を引き受けることが難しくなっています。
特に1納品先あたりの荷量が多い案件では、ドライバーの拘束時間が長くなるため、集荷拒否が増加傾向にあります。
一方、荷主企業側では、物流コストの上昇圧力が続く中、「コストを下げながらサービスレベルは維持する」という矛盾した要求への対応を迫られています。
このような状況下、路線便から貸切便への強制的な切替えという問題は、今や多くの荷主・物流担当者が共通して抱える頭痛の種となっています。
3.現場で起きていた課題:路線便の集荷拒否が止まらない
今回の事例の舞台は、九州地区で家電・空調機器の物流を担う配送センターです。1日あたり3,000件の出荷オーダーを処理し、500㎥の商品を出荷するこのセンターでは、ある時期から現場担当者がこんな報告を上げるようになりました。
「路線会社から『集荷が難しいため別の配送手段に変更してほしい』と依頼され、貸切便に切り替えるケースが増えている。販売会社と輸送業者への相談・手配業務も増えて手が回らない」
▮ 実態を数字で確認すると、状況の深刻さは明らかだった!
事象が発生するようになった時期とそれ以前の比較では、全体の出荷件数はほぼ横ばい(105%)にもかかわらず、容積は121%に増加。配送手段別に見ると、路線便が件数78%・容積80%と2割以上減少する一方、貸切便は件数138%・容積157%と大幅に増加していました。
路線便が断った荷物が、そのまま貸切便に流れている——現場の肌感覚が、データによって裏付けられました。
▮ なぜ路線会社は集荷を断るのか?
路線会社5社のドライバーにヒアリングを実施したところ、最も多かった回答は「1納品先あたりの総容積が多い」(46%)というものでした。
具体的には、2㎥以上の荷物になると、車両に積み切れない可能性や、積み卸しに時間がかかることで他の納品先へのスケジュールに影響が出るためとのことでした。
この状況を放置すれば、貸切便コストは膨らみ続け、担当者の手配業務も増え続けます。既存の配送手段での対処は限界と判断し、根本的な解決策の検討に着手しました。

4.ソリューション:「中ロット便」という第三の選択肢を独自設計
(1)なぜ既存の配送手段では解決できなかったのか?
直接配送便・中継配送便・量販店便のいずれも、2〜4㎥の物量を追加で引き受けると既存の固定ルートに支障をきたすリスクがありました。路線便に近い条件で新たな業者を探しても、同じ問題が繰り返されるだけです。
既存の概念の枠内で考える限り、解決策は見つからない——そう判断した担当チームは、「これまでにない新しい条件」で輸送会社を探すことにしました。
(2)当社が設計した「中ロット便」の骨格
集荷を断られるオーダーを整理すると、共通する条件が見えてきました。
• 配送エリアが九州全域と広範囲
• 1納品先で2〜4㎥の荷量
• 納品先が日によって異なる(不特定)
• 毎日安定して発生
この条件を踏まえ、当社が設定した新たなコンセプトが「毎日・安定した物量を担保する代わりに、路線運賃より高く・貸切運賃より安い従量制料金で引き受けてもらう」というものです。
荷主にとっては路線便より単価は上がるものの、貸切便への切り替えを防ぐことでトータルコストは下がる——このロジックが新スキームの核心です。
(3)新規輸送会社の開拓:断られ続けた末に気づいた「本当の障壁」
当初、複数の輸送会社に打診しましたが、返ってくる回答は芳しくありませんでした。
• 2〜4㎥では積み切れない車両が出てくる
• 納品先が固定なら対応可だが、不特定では確実な納品を約束できない
• 九州全域は配送範囲が広すぎる
ここで担当チームが重要な気づきを得ます。それは、問題は「荷量の大きさ」だけでなく、「九州全域という広いエリア」と「不特定多数の納品先」が組み合わさっていることでした。
この分析に基づき、打診先を「保有車両台数が多く、九州の広範囲に配送可能エリアを持つ輸送会社」に絞り込んで再アプローチ。その結果、「料金設定も魅力的で、当社の配送網ならチャレンジできる」と前向きな回答をくれた輸送会社との合意に至りました。
(4)販売会社への丁寧な説明と合意形成
新たな配送手段の導入には、荷主である販売会社の理解と合意が不可欠です。当社は実績データを用いた導入前後のコストシミュレーションを提示し、以下の3つのメリットを説明しました。
①輸送コスト低減:低積載率の貸切便を削減し、コスト構造を改善
②働き方改革:貸切便への切替や手配業務を削減し、配車担当者の
負荷軽減
③輸送品質向上:路線ターミナルでの残荷による配送遅延リスクを低減
「単価は上がるが、総コストは下がる」という逆説的な提案を、データで丁寧に説明したことで販売会社の理解と合意を獲得しました。
(5)社内オペレーションの再設計
輸送会社・販売会社との合意と並行して、配送センター内の業務も見直しました。
• 新配送手段を「中ロット便」と命名し、社内で統一
• 接車バーススケジュールを見直し、中ロット便を既存の中継配送便の
集荷前に設定。バースを「二回転化」することで追加スペースを確保
• 配車管理システムを活用し、2〜4㎥のオーダーを自動識別・振分け
する業務フローを構築
検討開始からわずか4ヶ月でトライアル稼働を開始し、その後本格運用に移行しました。

5.具体的な効果:コスト・業務・品質の三方よし

コスト削減だけでなく、担当者の業務負荷軽減(働き方改革)と輸送品質向上を同時に実現した点が、この事例の大きな特徴です。

6.横展開・応用可能性:こんな企業・課題に有効です
今回の「中ロット便」のアプローチは、以下のような状況に置かれた企業・物流担当者に特に有効です。
• 製造業/メーカー系で、サイズの大きい商品(家電・空調・OA機器等)を
扱っている
• 路線便の集荷拒否や積み残しが慢性的に発生している
• 貸切便の手配が増加し、担当者の業務が逼迫している
•「路線便より高くても、貸切便より安く」という配送ニーズがある
• 特定の配送エリアで毎日ある程度の安定した物量が見込める
物量の大小・エリアの広狭に応じて設計は変わりますが、「既存手段の二択から抜け出す第三の選択肢を設計する」という発想は、さまざまな業種・規模の物流課題に応用できます。
7.まとめ:物流の「空白地帯」を埋めることが競争力になる
路線便が断り、貸切便では割高——この「空白地帯」に悩む物流担当者は少なくありません。
今回の事例が示したのは、「既存の配送手段の枠にとらわれず、データと現場ヒアリングをもとに新たな仕組みを設計する」という課題解決のアプローチです。
新規輸送業者の開拓にあたっては、単に「安く引き受けてくれる業者を探す」のではなく、「なぜ断られるのか」の本質を掘り下げ、双方にとって合理的な条件を設計することが成功の鍵でした。
また、輸送会社・販売会社・センター内オペレーションの三者を同時に動かすプロジェクトマネジメントと、データを活用したコスト説明力も、今回の改善を支えた重要な要素です。
当社では、こうした「物流の課題を多面的に整理し、関係者全体を巻き込んで解決する」ノウハウを積み重ねてきました。
コスト・品質・業務効率の三方よしを実現する物流改善を、ぜひご一緒に検討しませんか。
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