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梱包コスト25%削減——複数部門を巻き込んだVE手法の使い方

この記事を読むと、こんな課題の解決策のヒントが得られます
 ● 海上運賃・梱包コストが上昇し、荷主との関係維持に苦心している
 ● 梱包仕様を見直したいが、どこから手をつければよいかわからない
 ● 荷主の関係部門を巻き込んだ改善活動をうまく進めたい




1.サマリー

本記事は、重電・鉄道関連メーカーの海外向け梱包業務における仕様改善事例をご紹介します。

世界的な海上運賃の高騰とコンテナ不足が深刻化する中、荷主の物流コスト上昇を抑えるため、VE(Value Engineering)手法を活用した梱包仕様の抜本的な見直しに取り組みました。
荷主の5部門・20名強と連携し、梱包に必要な機能を64項目から14項目に絞り込み、コスト比率の高い機能から優先的に改善。段ボール仕切り材の新設計という具体的なソリューションで以下の成果を達成しました。

さらに翌年度以降も継続的な改善活動に発展しており、荷主との長期的なパートナーシップ構築という定性的な成果も得られています。


2.背景:海上運賃高騰が招いた「梱包コスト」への注目

パンデミックに端を発した経済活動の混乱は、国際物流に大きな影響を与えました。巣ごもり需要の急増と経済活動再開が重なり、海運市場は一時的に異常な活況を呈し、海上運賃は向け地によって前年度比3〜4倍まで高騰。さらにコンテナ不足も深刻化し、希望する船便への積み込み調整も難航する事態となりました。

こうした状況下で物流事業者に求められたのは、荷主の輸送コスト上昇を少しでも抑える提案です。船賃そのものは市況に左右されますが、梱包費用・副資材費・作業費は自分たちの工夫次第でコントロールできる——そこに着目したのが本改善活動の出発点でした。
荷主の物流コスト上昇を抑える提案を行い、荷主との良好な関係を維持・継続することが、長期的なビジネスの安定に直結します。


3.現場で起きていた課題:「慣習的な梱包」がコストを押し上げていた

(1)改善対象の梱包業務
今回の改善対象は、海外向けの産業用部品(鉄道車両用の点検カバー)の梱包業務です。対象品は顧客要求仕様に基づき設計・製造される個別受注生産品で、1車両分(5種類・6品目)をまとめて木枠付き段ボール梱包で出荷していました。

従来の梱包フローは以下の通りです。
製品荷受け → 製品を個別に養生(エアキャップ巻き) → 箱入れ・緩衝材挿入 → 木枠組立

(2)問題の本質:「なんとなく続けていた」梱包仕様
従来の梱包には、長年の慣習から積み重なった「過剰品質」が潜んでいました。
 • 製品1枚ずつをエアキャップで個別養生していたが、本当に必要か検証
   されていなかった
 • バラ状の緩衝材(紙綿)を大量に使用していたが、使用量は作業者毎に
   ばらつきがあった
 • 段ボール内の仕切り材や緩衝材の組合せが複雑で、梱包作業に時間が
   かかっていた

コスト削減の余地はあるはずだが、どこをどう変えれば製品を守る機能を損なわずに済むか——この「見えない判断基準」こそが最大の課題でした。


4.ソリューション:VE手法で「梱包の価値」を数値化する

▮ VE(Value Engineering)とは
VEとは、製品やサービスの「価値(Value)」を、それが果たすべき「機能(Function)」と機能にかかる「コスト(Cost)」を用いて数値として見える化し、価値の最適化を図る手法です。

▮ V(価値)= F(機能)÷ C(コスト)
この式が示す通り、VEの目的は「コストを下げながら機能を維持する」または「同じコストでより高い機能を実現する」ことです。梱包改善に適用することで、「なんとなく入れていた緩衝材」を客観的なデータに基づいて廃止・削減できるようになります。

▮ 当社ならではの強み:荷主5部門・20名強を動かした「巻き込み力」
今回の改善が単なる「梱包の見直し」にとどまらず大きな成果を生んだ最大の要因は、荷主の関係部門(営業・資材・設計・生産技術・工作)5部門・20名強を巻き込んだ協働体制を構築したことです。

物流事業者だけで梱包仕様を変えようとしても、荷主側の製品設計や品質基準に関わる変更は承認が得られません。逆に荷主任せにすると、物流現場の実態を反映した改善案にはなりません。両者が対等な立場でVEワークシートに向き合い、機能とコストを共に議論したことで、実現性の高い改善案が生まれました。

ステップ①:機能定義——64項目から14項目へ絞り込む
まず、梱包に現状付加されているすべての機能、および想定しうる機能を列挙しました。その結果、64項目が挙がりましたが、精査の結果「本当に必要な機能」は以下の項目に絞られました。
 • F1:構成品全体を保護する(強度を保つ/外装を閉じる)
 • F2:構成品単体を保護する(気泡の保持/適切な寸法)
 • F3:構成品の位置を固定する
 • F4:運搬を容易にする
 • F5:構成品同士の距離を保つ
 • F6:衝撃を緩和する(適切な寸法)
 • F7:濡れを防ぐ
 • F8:帳票類を保護する

ステップ②:機能評価——コストの「偏り」を可視化する
次に、各副資材(エアキャップ・スチロール板・緩衝材・ポリ袋・段ボール・木枠・テープ等)の使用量と作業時間を計測し、各機能に割り当てられているコスト比率を算出しました。

F2(構成品単体を保護する)はコスト比率34%と最も高いにもかかわらず、機能評価値比率は17%に留まり、価値の程度は0.5と最低でした。F3も同様に割高な状態です。この2機能を改善対象とし、梱包費15%削減を目標に設定しました。

ステップ③:代替案作成——23のアイデアから最適解を選ぶ
改善対象機能に対し、荷主部門と協議しながら23のアイデアを列挙。実現可能性(○:実施可能 / △:課題あり)で評価した結果、以下の5項目が主要改善項目として選ばれました。
 ㋐段ボールのサイズを縮小し、バラ状緩衝材をなくす
 ㋑エアキャップを廃止し、位置を固定できる緩衝材を取り付ける
 ㋒発泡スチロールでカバー同士の接触を防ぎ、積み上げる形で積載する
 ㋓発泡スチロールで上下からはめ込み、エアキャップ・バラ状緩衝材を
  廃止する
 ㋔構造を変更した仕切り材を新規作成する

さらに3つの代替案(①段ボール仕切材への置換え案、②垂直方向への積み上げ案、③スチロール仕切材への置換え案)の実現性・経済性を比較評価した結果、「案①:段ボール仕切材への置換え案」を採用することに決定しました。

▮ 改善内容:段ボール仕切り材の自社設計
採用案の具現化にあたって、当社技術者が手作業でカッティングや隙間の微調整を繰り返しながら試作品を作成。製品同士の間隔を保持した状態で固定できる段ボール仕切り材の形状・寸法を試行錯誤の末に最終決定しました。

▮ 従来の梱包フロー:
製品荷受け → 6枚分の個別養生(エアキャップ) → 緩衝材挿入 → 木枠組立

▮ 改善後の梱包フロー:
製品荷受け → 段ボール仕切り材挿入(養生・緩衝材は廃止) → 木枠組立
➤ ビニール養生とバラ状緩衝材が不要になったことで、内装作業が大幅に
   簡素化されました。


5.具体的な効果

▮ 定性効果

バラ状緩衝材が不要になったことで、開梱時の廃棄物が大幅に低減しました。また、バラ状緩衝材の廃止により、従来は作業者ごとにばらつきがあった緩衝材使用量が統一され、梱包品質がより均質になりました。これは荷主にとっても安定した品質保証につながる重要な効果です。


6.横展開・応用可能性:こんな企業・物流担当者に有効です

今回の「VE手法×荷主協働」のアプローチは、以下のような状況に置かれた企業・物流担当者に特に有効です。
 • 海外向け輸送を担っており、国際物流コストの上昇に頭を抱えている
 • 梱包仕様が長年変わっておらず、過剰品質になっている可能性が否定
   できない
 • 梱包コストを下げたいが、「品質を落とさずに変えられるか」の判断
   基準
がない
 • 荷主との関係を活かし、共同での改善活動に発展させたい
 • 個別受注生産品のように品目・サイズがまちまちで、標準化が難しいと
   思っている

VEは製造業のコスト管理でよく使われる手法ですが、梱包・輸送という物流領域にも有効に適用できます。特に「機能とコストを数値化して関係者に見せる」というアプローチは、荷主との合意形成において非常に強力なツールになります。


7.まとめ:「梱包の価値」を問い直すことが競争力になる

長年続けてきた梱包仕様に「なぜそうなっているのか」と問いかけ、機能とコストを数値で可視化する——これがVE手法の本質です。
今回の事例が示したのは、以下の3点です。

①荷主を巻き込むことで「実現できる改善」が変わる。
物流事業者単独では変えられない梱包仕様も、荷主の設計・品質部門と協働すれば抜本的な改善が可能です。

②数値化することで「説得力」が生まれる。
VEワークシートによる機能評価は、「なんとなく」ではなく「データ」で改善箇所を特定します。これにより荷主の承認も得やすくなります。

③一度の改善が「継続的な関係」を生む。
本事例では翌年度以降も新規案件の梱包改善が継続されており、荷主との信頼関係が長期的なビジネスの安定につながっています。

当社では、VE手法をはじめとした体系的なアプローチで、梱包・輸送コストの削減を荷主とともに推進するノウハウを積み重ねています。「梱包コストをどうにかしたい」「でも品質は落とせない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。


8.お問合せ

「梱包コストの見直しを検討したい」「VE手法を物流改善に活用したい」「まずは現状の梱包仕様を評価してほしい」「物流を最適化したい」という方は、お気軽にお問い合わせください。
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