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【LEO戦国時代①】Amazon Leoが通信衛星インターネットでスペースⅩに挑む|5分で読める最新テクノロジーあれこれ

最新のテクノロジーに関することを中心にお送りする本シリーズ。
宇宙開発、AI、量子技術から科学全般の話題まで、エンジニア視点で解説。
難しいことは苦手でちょっと。。。という人から、興味はあるんだけど実はあまりわかってない。。。って人まで、「5分でスッと理解できるように」というコンセプトでお届けしています。


このところ話題に事欠かない、LEO(低軌道)を中心とした通信衛星コンステレーション開発。
その中心にいるのは、言うまでもなくスペースⅩ。
ですが、スペースⅩ以外の企業もただ手をこまねいて眺めているわけではありません。むしろ、日々過密度を増していく軌道上の空間を占有されてなるものか、と活発化している状況と言っていいでしょう。

ということで、「LEO戦国時代」シリーズと称して、そういったスペースX以外の衛星コンステレーション計画に焦点を当てます。
初回は、「Amazon Leo」です。


🤔 まずはスペースXの振り返り

2026年に入ってもますますペースを上げてスターリンク衛星の増強を推し進めるスペースⅩ。
軌道上で運用されているスターリンク衛星の数は2026年3月にいよいよ1万機を突破しました。
現在主力となる第2世代(V2)衛星は約3万機の打ち上げをFCC(米連邦通信委員会)に申請し、2022年にまず7,500機の承認を取得。
更に2026年1月に7,500機の追加承認を得て、合計15,000機の承認を取得済み。
現在は、FCCの承認ベースでもV1からの累計で2万機以上の衛星を運用できる状態です。

そんなスターリンクの現在提供しているサービスは大きく分けると二つ
一つは一般ユーザー・企業向けの、専用フェーズドアレイアンテナを設置して利用するインターネット接続サービス
ユーザーはアンテナを購入して直接スペースⅩを契約することで、スターリンク衛星を介してインターネットにブロードバンド接続できます。
つまり、一般家庭で光回線を契約するのと同じ感覚で利用できるサービスですね。
2026年2月時点で契約ユーザー数は全世界で1000万人を突破したことが発表されています。

そして、もう一つはスターリンクDTC(Direct-to-Cell)。皆さんは普段使っているスマートフォンが、そのままの状態で衛星につながるというサービスです。

つい先日、「スターリンクモバイル」への改名とV2の計画が発表されて、ますます注目を浴びています。

他にも米国の軍事・国家安全保障向けにスターシールドという、セキュリティレベルが一段高い通信サービスなんかも行っています。

そんなスペースⅩのスターリンクに対して、真正面から挑む衛星コンステレーション計画もあれば、直接の勝負を避けてニッチ路線を選ぶ計画もあります。
今回紹介する「Amazon Leo」は、そんなスペースXにガチで勝負を挑む、打倒スターリンクの筆頭格と言っていいでしょう。

🛰️ Amazon Leoとは

Amazon Leo」はその名前が示すとおり巨大IT企業アマゾン(ティッカー:$AMZN)による通信衛星インターネットサービスです。
以前は「プロジェクトカイパー(Project Kuiper)」というコードネームで知られていましたが、2025年11月に正式なブランド名として改称されています。

  • 予定衛星数:約7,700機

  • 打上済み衛星数:約200機

  • サービス開始:2026年春予定

(Credit:Amazon Leo)

そんなAmazon Leoの現在までの経緯はこんな感じです

  • 2019年4月:アマゾンより「Project Kuiper」の計画が発表される

  • 2020年7月:FCCが3,236機の打ち上げを承認

  • 2023年10月:最初のプロトタイプ衛星2機の打ち上げに成功

  • 2025年4月: 量産型の運用衛星(最初の27基)の打ち上げに成功

  • 2026年2月:FCCが4,504機の追加打ち上げを承認

尚、FCCの規則により2020年に承認を得た約3,200機のうち、半数の1,600機は2026年7月までに打ち上げる義務があります。
ところが、2026年2月時点で軌道上の衛星は200機程度に留まっており、24か月の期限延長申請中となっています。

そんな状況にもかかわらず、期限延長が認められるより前に約4,500機の打ち上げが追加承認されました。
合計で約7,700機の計画衛星数は、通信衛星ネットワークとしてはスターリンクに次ぐ規模になります。

⚔️ ターゲット市場でスペースXとガチで競合

Amazon Leo がターゲットとするのは、個人向け、ビジネス向けをメインとしたインターネットブロードバンド接続
ユーザーが利用するアンテナもスターリンクと似通った形状となっており、まさに同じ土俵で真っ向勝負を挑むかたちです。

Amazon Leoのアンテナ(Credit:Amazon)

スターリンクがすでに大きく先行している状況で、どうやって戦おうとしてるのでしょうか?

💫通信速度は大きく変わらない?

やはり比較する上で、まず気になるのは通信速度でしょう。
Amazon Leoの場合は、アンテナタイプによって最大速度が設定されており、ダウンロードでは100Mbps(ナノ)、400Mbps(プロ)、1Gbps(ウルトラ)と発表されています。

一方でスターリンクはアンテナによってではなく、プランによって最大速度はある程度異なりますが、ダウンロード速度はだいたい100~400Mbpsといったところ。
Amazon Leoがサービス前のため、実測で比較できないところを考慮しても、決定的というほどの差は無さそうです。

💫やっぱり低価格路線で差別化??

具体的な戦略というのはまだ定かではないですが、考えられることとしてはまずは価格で差をつけるという点があげられます。
ここは、後発である以上は当然と言えるかもしれません。

ただ、ライバルのスターリンクはロケットの打ち上げから端末の製造まで、すべてを自社完結する垂直統合モデルで、究極のコスト構造を達成しているわけです。
後述しますが、自社でロケットを持っていないアマゾンはどうしても打ち上げにコストがかかってしまうので、なかなか厳しい戦いになることは想像ができます。

💫最大の武器は「アマゾン経済圏」と「AWS」

なんといってもアマゾンには、世界最強とも言える強大なエコシステムとパートナーシップをすでに保有しているという強みがあります。
そこを生かさないわけはありません。

「アマゾン経済圏」や「法人向けクラウド事業(AWS)」との連携によるシナジー効果。そして、そこから生み出す新たなサービスという面でも大きな期待が持てます。

🚀 キーとなるのは打ち上げロケットの確保!?

アマゾンは現在、衛星を打ち上げるペースが上がらず苦慮しています。
理由はロケットが確保できないからです。

💫まさかまさかの、ロケットがまったくないという事態

アマゾンは、2022年4月にULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)、アリアンスペース、ブルーオリジンの3社をロケット打ち上げパートナーとして、合計80回以上の打ち上げを行う大型契約を発表。
しかし、この時点で二つのリスクを抱えていました。

一つは、もっとも安定した打ち上げができるスペースXとの契約を、ライバルであるという理由で避けたこと。
そしてもう一つはパートナー3社が保有する4つのロケットのうち、3つは新型でまだ一度も打ち上げ実績がなかったこと。
結果的にこれが仇となってしまいます。

2024年になっていよいよ運用衛星の打ち上げ開始、という段階になりましたが、頼みのロケットのすべてが開発遅延やトラブルにより、利用不可に。
なんと衛星はあっても、打ち上げるロケットがまったくない、という状態になってしまったんです。
その結果、2024年は1機の衛星も打ち上げることができませんでした。

💫結局はスペースX頼みに・・・

危機感を強めたアマゾンは、とうとうライバルであるスペースXのファルコン9の採用に踏み切ります
2023年12月、電撃的にスペースXと3回の打ち上げを契約締結を発表したのです。

おかげで2025年は、旧型のアトラスV(ULA)とファルコン9(スペースX)で計7回の打ち上げを重ね、なんとか180機の衛星を軌道に投入することができました。

アトラスVによるAmazon Leoの打ち上げ(Credit:Amazon)

💫FCCの期限は待ったなし

なんとか打ち上げは開始できたものの、このペースではまったく計画に追いつきません。
前述のとおり、FCCの規定では2026年7月までに申請した衛星数の半数である約1,600機の打ち上げが必要ですが、どう考えても間に合わない状況です。
そのため、FCCに24カ月の期限延長を申請しました。
まだ申請中で結果は出ていませんが、仮に認められたとしても2年間で1,400機の打ち上げが必要です。
FCCの基準を守れなかった時のペナルティはけっして甘いものではなく、以降の打ち上げ承認は無効とされてしまうため、大損害となってしまいます。

さらに半数の期限をクリアできたとしても、その先には2029年までに全数(最初に申請した3,200機)の打ち上げ期限が設定されており、まったく余裕はないのです。

💫やっと打ち上げ体制も整いつつある!?

ここにきて、やっと当初予定していた新型ロケットによる打ち上げの道すじが見えてきました。
まずは欧州のアリアン6(アリアンスペース)が商用稼働を開始。初の商用案件として、2026年2月にAmazon Leoの衛星32機が打ち上げられました。

アリアン6ロケットによるAmazon Leo打ち上げ(Credit:Amazon)

アトラスVの後継であるヴァルカン(ULA)も、2024年1月の初飛行から4回連続で打ち上げ成功。現在は、部分的な異常の原因究明で打ち上げを一時停止していますが、2026年後半には再開されることが見込まれています。

更にニューグレン(ブルーオリジン)も、ここにきて打ち上げの成功が続いており、いよいよ本格稼働も見えてきました
ブルーオリジン社といえば、アマゾン創業者であるジェフ・ベゾス氏がオーナーの企業。
特定のロケットを常用できるようになれば、打ち上げ枠の確保というボトルネックを解消できるかもしれません。
ニューグレンロケットの成功が、Amazon Leoの成功の鍵を握っていると言っても過言ではないのです。

アマゾンは2026年の目標として「年間20回以上の打ち上げ」を掲げています。1回に30機の衛星を軌道に投入できるとしても、年間20回では600機にしかならないので、けっして高い目標ではなくギリギリのライン。
2026年中のサービス開始に向けて順調に打ち上げを重ねていけるのか、今後に注目です。

📝 まとめ

というわけで、「LEO戦国時代」の第1回としてAmazon Leoの解説でした。スペースXがほぼ独占している現在のLEOにおいて、このままスペースXの独走を許すのかどうか?

現状では正面から勝負を挑もうという猛者はなかなか少なく、Amazon Leoの肩にかかっていると言ってもいいかもしれませんね。


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