【キャンベルの法則】達成率105%を目指せ! KPIが茶番に変わる瞬間
グッド・ハートの法則の罠
前の記事で、ビジネスや行政の現場で「改革」を行う場合、「計画」を策定して「数値目標」を盛り込むことが絶対的なルールになっていることを述べました。
そして、その「数値目標」が設定された瞬間、現場は「改革」の本来の目的を忘れてしまう、「グッド・ハートの法則」について述べました。
「数値目標」を設けた瞬間、「改革」の本来の目的を忘れ、「数値を良くすること」だけを最優先としてしまうのです。
「数値目標」を設けるということは、「数値目標」に引っ張られるだけでなく、とんでもない欺瞞が満ち溢れることになります。
KPIという「完璧なものさし」への幻想
そうした「数値目標」ですが、様々な企業や行政で用いられているのが、KPIです。
KPI( Key Performance Indicator)
企業や行政、チームが目指す目標に対してどれだけ進捗しているのかを示す指標で、「重要業績評価指標」とも言います。
KPIは、プロジェクトの目標達成度を測るための指標です。
KPIは、SMART原則※に従うことで、現実的な「数値目標」が設定できるとされています。
SMART原則
Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の頭文字を取ったものです。
適切なKPIを設定することで、チームのモチベーションが高まり、組織は同じ方向を向くとされていますが、現実はどうでしょうか。
現場で働く人々は知っています。
そんな理屈どおりのKPIなんて、できるはずがないことを。
そこで、欺瞞に満ちたKPIが作られることになります。
現場が必死にひねり出す達成率105%の数値目標
「改革」を行うにあたって経営陣は、KPIをまとったきらびやかな「計画」の策定を求めます。
一方で現場は、KPIを設ければ、それが単に進捗の「ものさし」ではなく、「達成すべきノルマ」に変わるということを知っています。
もし、KPIをチャレンジングな数値にしてしまうと、KPIの達成に大変な苦労が伴いますし、結果的に未達に終われば経営陣に何を言われるか分かりませんし、対外的にも見栄えが良くありません。
逆にKPIを低く設定し過ぎると、すぐに達成してしまって、「チャレンジングでない」とか「見通しが甘い」と責められることになります。
そこで、どういう数値をKPIとして設けるかと言えば、普通に業務を行えば自然に105%くらいの達成率になるような数値をひねり出すことになります。
そうした絶妙な数値を設定できれば、経営陣からの覚えも良く、対外的にも「順調に進んでいるのだな」と思わせることになります。
そして、そんな絶妙なKPIを設定できる人が優秀な人材で、馬鹿正直にチャレンジングなKPIを設定する人がダメな人材とみなされることになります。
実は、こうしたKPIにまつわる茶番劇が、全国の企業や行政で繰り広げられているのです。
数字のハックでKPI達成の嘘
「改革」が推進されても、KPIに設定した数値に表れるまでにはタイムラグが生じる場合があります。
また、KPIの数値自体、「改革」の努力とは無関係な「外部要因」に大きく左右されて、見込んだ数値が出ない場合もあります。
そうなると、とにかくKPIの数値を達成しようと「帳尻合わせ」をしようとすることになります。
例えば、「新規顧客獲得数」をKPIに設定した場合、サービス品をくばったりすることで、特に売り上げにつながりそうもない質の低い顧客も含めて、新規顧客を増やそうと努力することになります。
顧客からの問い合わせに対して、オペレーターが最初に応答する「平均応答時間」をKPIに設定した場合、顧客への丁寧な対応は置き去りになって、とにかく早く電話を切って回転率を上げようとすることになります。
KPIを達成することだけに注力すれば、本来の「改革」の目的を忘れた本末転倒な事態に陥いるのです。
キャンベルの法則という呪縛
これこそが、KPIが「改革」を壊してしまう「キャンベルの法則」の正体です。
KPIを真に「現状を把握するための物差し」として使っておれば、KPIは有効に機能するかもしれませんが、KPIを設けた途端、「報酬や罰則を伴う目標(ノルマ)」となり、組織はKPIを良くするために、「改革」の本質とはかけ離れた「数字のハック(操作)」に終始するようになるのです。
キャンベルの法則(Campbell's Law)
数値指標が評価や意思決定に使われるようになると、その指標は操作の対象となり、本来の価値を失うという現象
「改革」の旗印として掲げるKPIは、本来の目的を照らす「灯台」であることをやめ、現場を縛り付ける「鎖」へと変貌してしまいます。
更に深刻なのは、そのKPIそのものが「偽装」と「操作」の対象となる「キャンベルの法則」の毒に組織が侵されてしまうことです。
KPIという「完璧なものさし」への幻想を捨て、数字には表れない現場の体温や、泥臭い試行錯誤のプロセスを正当に評価すること。
それこそが、キャンベルの法則という呪縛を解き、組織が再び「確かな一歩」を踏み出すための、唯一の道なのです。
数字上の成功が、本質的な失敗を隠してしまう事態。あなたの頭に浮かんだのはどういうふうな「帳尻合わせ」の風景でしょうか?皆さんの周りであった「キャンベルの法則」の事例を、ぜひコメント欄でシェアしてください。
