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新型コロナとビタミンD

医学探偵浮島真一が解説する「ビタミンD」。

今回は新型コロナをはじめとする感染症とそれに対抗する我々の免疫において、ビタミンDがどのように関わるのかを明らかにします。

ビタミンD総論はこちらをどうぞ。


びっくりするようなデータ

まずはこのグラフを見てほしい。

Association of Vitamin D Status and COVID-19-Related Hospitalization and Mortality

このグラフは 米国退役軍人省の医療施設でケアを受けている退役軍人で、2020年2月20日〜11月8日にSARS-CoV-2陽性となり、かつ陽性前15〜90日以内に25(OH)D検査を受けた4,599人を対象として、25(OH)D濃度と死亡リスクを調べたものだ。ビタミンD濃度が15 ng/mLから60 ng/mLに上昇すると死亡リスクは10.4%→5.7%に低下(p=0.001)。なんと死亡率は半分近くまで低下する。しかも、60ng/mLでも頭打ちになっておらずさらに死亡率が低下しているのが見て取れる。一般的には十分とされる60ng/mLでも実は十分ではない可能性がある。

この研究で重要なことは、濃度測定が感染前ということ。つまり、感染によってビタミンDの濃度が低下するという因果の逆転の可能性が排除されている。
これはビタミンDの充足が感染症に対して有効であるという大きなエビデンスだ。

では、なぜ、ビタミンDはこれほどまでに感染症に対抗するのに重要なのだろう?

感染症の重症化の原因はウイルスが爆発的に増えるからではない

一般の人がイメージする感染症の重症化とは、ウイルスが爆発的に増えて免疫がそれを排除できずにウイルスにやられて重症化してしまう、というものだろう。ならば、さぞかし重症化した患者さんの体内にはウイルスが溢れかえっているはずだ。
しかし、この理解は実は完全な間違いだ。

Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections

無症候感染群(Asymptomatic cases)と症候性感染群(Symptomatic cases)のウイルス量を比べたものが上記のグラフだ。aのグラフはPCR検査によるCt値。bのグラフはウイルスの排出期間を示す。見て分かる通り、症状がない群の方が実はウイルスの排出期間が長い。つまり、ウイルス量は症状と全く相関していない。
では、一体重症化の原因はなんなのか?

サイトカインストーム——宿主の免疫反応

では、相関するものはなにか?同じ研究にその答えがある。

Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections

重症化した患者は、急性期に抗体のレベルが高いのだ。驚かれる方もいるかもしれない。実はウイルスから身を守るはずの抗体は多すぎると重症化する。これをサイトカインストームという。

要するに免疫の暴走だ。

典型的な感染後の免疫反応を以下のグラフで示す。

I型インターフェロンが立ち上がり、収束すると次はNK細胞が立ち上がる、という形でそれぞれの免疫反応がピークをずらしながら発生するのが分かるだろう。

そして、ウイルス力価は抗体価がピークを迎える頃には、ほとんどいなくなっている。これは重症患者であってもそうだ。

重症化した患者の抗体のレベルが高いということは、この抗体価の山が高くそして、終わらないことを意味する。
免疫反応は炎症とも言われる。炎症は言葉の通り、火と同じで燃え広がる性質がある。免疫細胞は炎症性サイトカインを出して、他の免疫細胞を呼び寄せる。呼び寄せられた免疫細胞も炎症性サイトカインを出してどんどん炎症を大きくするのだ。

これは、感染という緊急事態では重要なことだ。ウイルスを早急に炎症の炎で焼き尽くす。しかし、これが過剰になると、ウイルスだけではなく体全体が大火事になる。

もちろん、そんなことにならないように、体は精緻な仕掛けを持っている。炎症を収束させる消火活動をする免疫細胞、制御性T細胞(Treg)が存在するのだ。そしてそのTregの活性化にもっとも重要な役割を果たすのが、ビタミンDなのである。

下の図を見てほしい。

樹状細胞は、免疫を活性化する司令塔のような存在だ。この免疫細胞がウイルスの断片を免疫細胞に見せて、免疫細胞は活性化される。これによって炎症が誘導される。

と同時に樹状細胞は前駆体である25(OH)Dを取り込んで活性型ビタミンDに変換する。この活性型ビタミンDがTregを徐々に増やしていくのだ。つまり、樹状細胞は活性化して、炎症を起こしながら、その裏で消火活動のための準備をしているわけだ。

そして、Tregが十分活性化すると消火活動が開始される。ここで、もし、前駆体である25(OH)Dが不足していたら何が起こるか?もうおわかりだろう。Tregの誘導が不十分になり、炎症を止めることが出来ないのだ。炎症はどんどん燃え広がるのだ。

ウイルスどころか体を焼き尽くす免疫反応、それがサイトカインストームによる重症化の実態なのである。

ちなみに、炎症の収束経路はもう一つある。ウイルスを貪食するマクロファージが貪食するウイルスがなくなると、炎症性のM1型から非炎症性、修復型のM2型に変化して、抗炎症性のサイトカインを出し始める、という経路だ。
しかし、この経路もマクロファージ自身が25(OH)Dを取り込んで活性型ビタミンDに変換して、M2マクロファージに転換する。つまりビタミンDがここでも関与している。

こう考えたら、ビタミンDの充足が重症化による死亡リスクを下げる、というのは当たり前すぎるほど当たり前の結果だと理解できるだろう。

なお、特にここでは新型コロナの研究を引用して解説したが、これは全ての感染症で同じことだ。

ビタミンDの充足こそが感染症のリスクから身を守る最大の武器なのである。

ビタミンDに関する記事は下記マガジンにまとめました。



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