沖縄の導水管破裂・・「朽ちるインフラ」が生活を脅かす
沖縄県の導水管は“たまたま”壊れたのではない
沖縄県の導水管破裂事故
【11/24 19:00 更新】
影響範囲 :
〇水道用水
18:20に西原浄水場の送水が停止したので、お知らせいたします。
石川浄水場については、深夜0時までは送水停止の見込みはありません。
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【11/24 14:55 更新】
大宜味村塩屋地内で企業局の導水管の破損により漏水していることが分かりました。
当該導水管は企業局が昭和42年に布設した導水管(φ750mm)であり、老朽化による漏水と想像されますが、現時点では原因は不明となっています。
現在、東系列導水路トンネル工事を行っているため、別ルートで導水していたところ、その管で漏水が発生したため、影響が大きいものとなりました。
漏水場所 : 大宜味村塩屋地内(半崎トンネル出口)
影響範囲 :
〇水道用水
石川浄水場、西原浄水場で本日午後から原水不足となる見込みです。
※名護浄水場管轄については、断水は発生しません。
〇工業用水
全域で断水しています。
断水発生見通し:以下の地域で断水が発生する見込みがありますのでお知らせします。(14:45時点の情報)
本日16時頃に浄水場からの送水が停止する見込みです。その後に企業局の調整池、市町村の配水池貯水量に応じて断水になる見込みです。
(全域断水)
金武町、読谷村、嘉手納町、うるま市、西原町、与那原町、南風原町、八重瀬町、豊見城市、南城市、糸満市
(一部地域断水)
恩納村、沖縄市、北中城村、中城村、浦添市、那覇市
復旧見通し:現時点では、不明。
ただし、東系列導水路トンネル工事を中断し導水を開始し、水運用を再開するが、県民のみなさまへ届くまでには、明日の午前いっぱいかかる見通しです。
2025年11月24日午前3時、沖縄県大宜味村塩屋で1967年に整備された導水管が破裂した。この時点では、多くの人が「沖縄県で水道管の事故が起きた」程度に受け止めていたかもしれない。しかし破裂したのは、本島北部の水源と中南部の人口集中エリアをつなぐ基幹導水管だ。

導水管は、取水ポンプ場などの取水施設から原水を取り入れたあと、浄水場まで運ぶための水道管です。原水を水源から浄水場まで導きます。
導水管とは水道の“血管”ではなく、水源から浄水場へと水を運ぶ“心臓”に近い役割を果たす設備であり、その意味を考えればこの破裂が“地域の限定的な事故”ではなく、“日本の水道インフラが抱える構造的な限界の先行発症”だとすぐに理解できる。
今回の導水管の破損によって、沖縄本島中南部では11市町村で断水が発生し、さらに6市町村で一部断水が起き、復旧は早くても翌25日以降になることが発表された。生活、医療、行政、観光、宿泊、物流、製造——社会のあらゆる機能が広範囲に影響を受けることになる。
「朽ちるインフラ」
東洋大学の根本教授が2011年に警鐘を鳴らした「朽ちるインフラ」。

また、国土交通省の委員会でも2014年に「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」が出されており、インフラが市民生活に襲いかかるリスクについて厳しく追求している。
しかし、残念ながらこれらの「わかっていたこと」に対して、十分な対応がされてこなかったと言えるだろう。
近年になり、神流町のカンピロバクター食中毒や八潮市の下水道陥没事故など、「地下に埋めてきた」問題が遂に牙を剥き、全国各地で市民の生命・財産を奪いはじめている。
そして、その影響は瞬間的・短期的に解決できるものではなく、八潮市の陥没事故では、事故発生から既に10ヶ月もの時間が経過しているが、市民生活はいまだに日常を取り戻すには至っていないどころか、体調不良を訴える市民・建築物の(陥没事故が原因と見られる)発錆・周辺の飲食店等が営業できない問題など、その影響は多方面に及んでいる。
そのようななかで、非常に市民生活に甚大な影響を及ぼしうる事故が今回の導水管破裂である。この導水管も敷設されたのは1967年に敷設された約60年前のものであり、まさに「朽ちるインフラ」の象徴である。
全国の水道事業の老朽化や低更新率の実態については、上記のまちみらい公式note「水すら飲めない時代」に統計データも含めてまとめているので、そちらを参照いただきたい。
沖縄の水道事情
「沖縄県が水道事業が特別に脆弱だった」わけではなく、むしろ沖縄県は南北に細長い地形や多数の離島を抱える地勢もあり、多様な技術を駆使しながら水道事業に取り組んできた。
水道普及率は100%と全国でも極めて高く、海底送水管は64,000m(16ヶ所)に及び、ダム水源・地下水・広域連携を組み合わせて安定供給を試みてきた。それでも老朽化した導水管は、今回の事故が発生するまで更新がなされることはなかった。今回の事故は「沖縄だから起きた事故」ではなく、「全国どこでも同じ条件下で起き得る事故が、先に沖縄で表面化しただけ」だと捉えるべきである。
全国の水道事業を取り巻く実態


全国の自治体における上下水道施設・管路は、沖縄県よりも老朽化率が高い、更新率も低い状況で、耐震化率も追いついていない。例えば沖縄県の管路(導水管・送水管)の更新率は1.3%だが、全国平均の管路の更新率は(導水管以外も含んでいるので単純比較はできないが、)0.64%と沖縄県の約半分である。
全国の料金体系も沖縄県と同様に脆弱で、人口減少に直面し、技術者不足が深刻になっているにも関わらず、フルコストベースでの経営的な観点から毎年のように上下水道の料金改正を行なっている自治体・事業体はほとんどないだろう。条件が沖縄県より厳しいケースは少ないはずだ。
今回の導水管の破裂は“未来予想”ではなく、“現在位置の提示”である。沖縄県で起きたことは、全国の自治体が抱える“必然”を前倒しで顕在化してしまっただけだ。水道は壊れれば一瞬で止まるし、和歌山県の水管橋崩落でも約1週間にわたって約60,000世帯が断水したように、簡単に復旧はできない。
何が起きたのかー沖縄導水管破裂の構造的意味
本島全体の導水管であったこと
破損した導水管は、末端の配水管の破裂とは意味が根本的に違う。
全国で数千件/年発生している配水管の事故とは異なり、導水管は取水施設から浄水場へ水を運ぶ“基幹”であり、これが止まればシステム全体が停止してしまう。つまり導水管の破裂は、単なる供給トラブルではなく「水道の心臓停止」に等しい。
沖縄本島では水源が北部に集中し、人口は中南部に集中している。
公式資料に記載されているように、水源として機能するダムは国管理の9ダム、県管理1、企業局管理1であり、これら北部の水源から中南部へ導水する構造になっている。この地理的・構造的条件は、基幹導水管が「一本の命綱」となるリスクを内包している。
だからこそ破裂の影響は極めて広範囲に及ぶこととなった。

北部が南部を支える構図
このようなことから、今回の導水管の破裂によって沖縄県内の中南部に集中する主要都市の大半が断水する事態となった。断水した11市町村には名護市、沖縄市、浦添市、那覇市、豊見城市、糸満市など県の行政・経済・観光の中枢が含まれている。
日本の水道インフラは多くの部分が単線構造であり、複線化や冗長性の確保は進んでいない。水道は“細い一本の管の連続”で守られている。太い幹線でさえ複線化されていない区間が多く、沖縄も例外ではなかった。
報道によると別の導水管から繋ぎ直すこととしているらしいが、那覇空港のテナントが休業に追い込まれるなど、影響は非常に大きくなっている。
沖縄の水道の特徴
給水人口100%
沖縄の水道は普及率100%を達成している。しかし、この“美しい数値”は維持コストの高さと裏腹の関係にある。島嶼県である沖縄は、地形条件が他県とは大きく異なる。島の形状は南北に細長く、北部に水源、南部に人口が集中するため、導水管・送水管等の長距離化は避けようがない。
また離島が多く、離島に水を供給するために海底送水管が64,000m(16ヶ所)にわたり敷設されている。海底送水管は劣化発見が難しく、補修も困難で、更新費用は陸上の比ではないことも容易に想像できる。
そのため沖縄の水道は、全国平均よりも構造的・技術的に負担が大きく、複雑性の高いインフラ体系となっていると考えられる。
硬水
地下水は国の水質基準300mg/lに迫る硬度だった。硬度を左右するカルシウムなど複数の成分を除去することで低減化を図ろうと実験や事前協議を経て1999年に完成した。国が定める「おいしい水」の硬度要件は10~100mg/l。以前はやかんなどに石灰が付着したり、お茶やコーヒーがおいしくないとの苦情があったという。
沖縄県の地下水の硬度が高い地域(名護市・宮古島など)では、硬度低減処理施設が整備されている。高度処理は導入時には歓迎されるが、導入・維持管理及び更新時に莫大な費用がかかるため、インフラコストが積み上がっていく構造を内包している。これらの高度化・複雑化は宮古島などの水源が限られているエリアで必然性が高いものであることは間違いないが、同時に沖縄の水道を強くする一方で、更新負担も加速度的に増やしてきた。
広域化
沖縄では離島向けの広域化が進んでおり、2018年の粟国村、2020年の北大東村、2021年の座間味村が企業局の支援を受けて広域連携を強化している。しかし広域化は本来、水道事業の経営基盤を強化する制度であり、基幹導水管の老朽化そのものを解決する仕組みではない。
同時に元々経営基盤の弱かった離島を企業局の経営に組み込むことによって、経営指標は自然とマイナスに振れることとなった。これも同様に広域化が構造的に「基幹設備・管路等の更新に直結するものではない」ことの証左である。
老朽化した導水管の“構造的罪”
更新できない理由は問題を「埋めてきたこと」
今回破裂した導水管は1967年に整備された基幹設備である。これは単なる“古い設備が壊れた”話ではない。むしろ「なぜ更新されなかったのか」という問いにこそ、今回の事件(≠事故)の核心がある。
更新できなかった理由は「更新できるよう制度・財政・構造も設計されていなかった」ことと、(更新率が理論値より圧倒的に低い状況を把握しながらも、料金の見直しすらせず)地下に埋めてきたことである。そこにこそ、日本の水道インフラの本質的な問題が存在する。
必然性
水道管の耐用年数は、一般には40〜60年と言われる。今回破裂した導水管はほぼ60年前のものであり、今回の事件は“時間の問題”だったという見方もできる。しかし重要なのは「沖縄だけでなく、日本中の基幹管路が同じ年代につくられ、同じペースで老朽化している」点である。つまり日本の水道は、高度経済成長期(1960〜1980年代)に集中的に整備されたものであるから、ほぼ全国共通で同じ世代の管路が同時期に“高齢化”している。
更新ペースが追いつかなくなっていることは明らかであり、“老朽化が一斉に押し寄せる”事態に陥っている。
更新率
次に問題となるのが更新率である。全国平均の水道管路の更新率は前述のとおり0.64%にとどまっている。更新率1%でも100年かかる計算だが、0.64%であれば理論的には全ての管路を更新するために140年以上が必要になる。実際には管路の寿命はそこまで長くないため、「更新が追いつかない」のは誰の目から見ても明らかである。
導水管や送水管のような基幹管路は、そのなかでも特に径が大きいことや水圧が大きくかかることから更新費が特に高く、埋設できる道路等も限られることから複線化しにくいし、財源や道路の通行規制なども含めて更新もままならない。自治体は(そもそもそうした計画がないことが多いが、仮に)更新計画を立てても実行が困難な構造に置かれている。
沖縄ならではの課題
沖縄の場合はこれに加えて、海底送水管や硬度処理施設、長距離導水など、全国的にも高度な設備を様々な要因から多く抱えている。そのため「普通の自治体よりイニシャルだけでなく維持管理、更新コストが高くなる」宿命を負っている。
沖縄県の資料を読むと、海底送水管は64,000mに達し、16ヶ所に設置されている。海底送水管の更新費は陸上の数倍に達することも珍しくない。さらに地下水の硬度に対応するための高度処理施設も抱えている。このような複雑で高負荷なインフラ体系を維持しつつ、同時に基幹導水管の更新まで行うことは、自治体(・事業体)単独では物理的に不可能である。(実際にはかなりの部分を国交付金に依存している状況が見られる)
水道事業そのものの構造

水道事業の収入構造にも限界がある。人口減少によって給水人口は減り続け、産業構造の変化によって大口需要も減る(上記グラフにもあるように沖縄県ですら人口総数は減少局面に入っている)。水道料金は生活インフラの根幹に関わる問題であることから政治的に取り上げにくく、住民への説明責任のハードルも高い。そのため、更新が必要であることは理解していても、実行に踏み切れない自治体は多い。その収支構造の歪みにあたるコストを一般会計からの繰入れや必要な設備・管路等の更新を先送りすることで誤魔化し続けてきた。
しかしその間にも、老朽化は確実に進み、事故リスクは高まり続ける。まさに“逆ざや構造”の典型である。
さらに技術者不足も深刻だ。水道技術者の高齢化が進み、若手採用は困難で、外部委託によって補っている自治体も多い。沖縄県企業局は離島向けに技術支援を行っており、その実績として2018年の粟国村、2020年の北大東村、2021年の座間味村での広域支援が挙げられている。しかしこれはあくまでも離島向けの支援であり、基幹導水管の更新や技術者の確保・育成にはつながらない。
つまり今回の事故は、「老朽化した導水管が壊れた」という単純な話ではなく、「更新できない構造が放置され、限界に達した」結果の発症である。これは全国の自治体にもそのまま当てはまる。更新率の低さ、耐震化の遅れ、財政構造、人口減、技術者不足——いずれも全国共通の課題だ。沖縄はこの“必然”を最初に見せただけである。全国の自治体は“次は自分だ”という認識に立つ必要がある。
全国の暗い未来
日本の水道が抱える宿命そのもの
沖縄の水道は普及率100%を達成し、離島支援と広域化に取り組み、海底送水管という日本の中でも特異な設備体系を抱える。しかし、この“高度で複雑な体系”こそが脆弱性を内包している。沖縄の水道の弱点は「特殊だから弱い」のではなく、「全国がこれから向かう構造的未来」である。
まず沖縄の地形は南北に細長い。北部に水源(ダム)があり、南部に人口が集中している。この構造は、水を運ぶ導水管が“長く・太く・単線になりやすい”ことを意味する。太い幹線が長距離で単独運用されれば、壊れた瞬間に全体が止まる。沖縄本島の今回の断水の広さは、その構造の必然だと言える。そしてこの構造は、実は本州でも同じ傾向を持つ地域が増加している。山間部に水源を持ち、平地に人口が集中する自治体は多い。構造的な脆弱性は沖縄だけの問題ではない。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/suisinkaigi/joukyou_dai8/siryou3.pdf
2024年元旦に生じた能登地震でも同じような構図が発生したことを忘れてはならない。全国の自治体において今回の沖縄県と似た構造が眠っている。
海底送水管等の抱える課題
また海底送水管という存在は、沖縄の水道の高度化を象徴している。64,000mに及ぶ海底送水網は、離島支援の生命線であり、地域の暮らしを支える不可欠な要素である。しかし海底送水管は劣化の発見が難しく、補修費用は莫大で、台風や波浪の影響を受けやすい。これらは全国の離島自治体にも共通する課題であり、北海道・本州・四国・九州沿岸部にも同様のリスクを抱える地域が数多く存在する。
加えて前述のように沖縄の地下水は硬度が高く、名護市や宮古島などでは硬度低減処理施設を整備して対応している。高度処理施設の導入は品質を高める一方で、イニシャル・ランニングや更新費用が跳ね上がる問題を抱える。インフラは高度化すればするほど、更新負担は指数関数的に増すと同時に、それを支える高度な技術者が多数要求されることになる。
これも全国の自治体がこれから直面する現実だ。
群マネの虚構?
地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)とは
「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」とは技術系職員が限られる中でも、的確なインフラメンテナンスを確保するため、複数自治体のインフラや複数分野のインフラを「群」として捉えることで、効率的・効果的にマネジメントしていく取組です。

沖縄県は水道事業の離島支援の広域化も進めており、企業局による技術支援は粟国(2018年)、北大東(2020年)、座間味(2021年)で実施されている。このような広域支援は高く評価されるべきだが、広域化は“経営基盤の拡大”に寄与しても“基幹導水管の更新”には直結しない。
広域化は制度改革であり、基幹更新は土木投資である。両者の次元はまったく異なる。沖縄県は上水道の広域化において全国でも進んでいる状況にあることは間違いないが、その沖縄でさえ導水管更新には手が届かなかった。
この事実は「広域化しても更新が進むわけではない」という現実を全国に突きつけている。

単独自治体(・事業体)ですら
国やコンサルは、平成の大合併にも懲りず公共施設マネジメントでも広域化を標榜したり、インフラ分野でも上記のように「群マネ」を魔法の手法のように扱っている。
もちろん、広域化して施設・設備や職員・発注等を集約することが効率的であることは間違いないが、単独の自治体(・事業体)ですら当たり前の経営合理化ができていないのに、複数の自治体(・事業体)に活路を見出そうとすることそのものがノーリアリティで、相変わらずお花畑な人たちである。
そして、更に総務省の場合は上記資料にあるように「調査検討経費」や「説明会等の経費」に特別交付税措置をするらしい。つまり、ここでもお抱えコンサルに金を流す構図にしかなっていない。
こんなオママゴトに乗じる自治体は所詮、喰われる自治体でしかない。
こうした条件・状況は“沖縄固有”の特殊事情ではなく、上記で述べたように“日本全体の未来”(≒日本の縮図)である。
人口減少・料金凍結・老朽化・更新率の低さ・耐震化の遅れ・技術者不足・構造の複雑化・オママゴト広域化——これらすべてが日本の水道の宿命であり、沖縄は単に先にその宿命を経験しただけである。
全国の自治体は、沖縄を“特殊事例”として他人事にするのではなく、“自分たちの未来を先に見せてくれた実例”として分析し、自分たちらしく覚悟・決断・行動しなければならない。
行政の“構造的問題”
誰が悪いのでもなく、誰も変えられない・変えようとしない
沖縄の導水管破裂は、担当者個人のミスや不勉強で生じたものではない。
しかし「行政は悪くない・仕方なかった・運が悪かった」と言って短絡的に終わらせて良い問題ではない。“行政の構造そのものが、更新不能な仕組みを生み出してきた”のであり、今回の事件は氷山の一角であることを忘れてはいけない。
水道は市民の生命・財産を支える根幹的なインフラであり、シビルミニマムの観点からも自治体の責務であるが、それさえも難しい現状を今回の事件が示した。
法律で独立採算を原則とすることが位置付けられているにも関わらず政治的に料金を上げることを躊躇し、インフラ投資を後回しにしてしまう構造。
その実態を知っているのに「誰も変えられない・変えようとしない(・変えようとすらしない)」ことが最も深い問題だ。
先送りされる構図
水道は“資産劣化の蓄積”という宿命を抱えてきた。
水道管は地中にあり外からは見えないし、直接悲鳴を上げることもない。
壊れるまでは「まだ大丈夫」と思われ更新を先送りにされ予算措置されることなく、壊れたときには「なぜ予防しなかった」と批判される。
しかし予防保全のための更新費は莫大で、政治的な説明責任も重く、財政的にも簡単に決断できるものではない。水道事業は料金収入で賄う独立採算が原則だが、多くの自治体が人口減と料金据え置きで収支が悪化している。料金改定は住民の反発を招き、政治的リスクも大きい。
だから更新は暗黙の了解で「先送りされる」。
短絡的なウォーターPPP

https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001619239.pdf
国はウォーターPPPを掲げ、こうした課題に対応しようとしているが、出口戦略がなぜかコンセッションしかないこと、各種資料でも完全に仕様発注
となってしまっていること等、残念ながらこれ(だけ)では、今回のような事件を予防していくことはできないだろう。
誰も真剣に取り組まない問題
重要なことは「誰かを責めても解決しないこと、国の方針に則っているだけでは不十分であること」という点である。水道事業を取り巻く構造・文化等が問題であり、現実を直視し、多額のコストを要しようが誰かに反対されようが、経営的・技術的な視点で根幹に踏み込んでいくしかない。
沖縄の導水管破裂は、その構造の限界を露呈した“不幸な事件”ではなく、“構造を変えなければ全国で同じことが起きる”という現実のメッセージである。
ではどうするのか
本当の意味でのPPP/PFI、広域化
第一に必要なのは「覚悟」である。
水道は単独の自治体(や事業体)では守れない。人口減少、技術者不足、財政制約、地形条件、施設高度化——これらの要素を考えれば、自治体単独の経営で持続可能性を維持することはもはや不可能である。“単独でやる”という幻想を捨てる覚悟が必要だ。PPP/PFIや広域化の議論を避けてきた自治体も多いが、もはや選択肢ではなく前提である。
「社会資本整備交付金の対象にしてもらうためにウォーターPPPの検討をする・下水道の相談窓口を作る」などと戯言を述べている場合ではない。
市民・利用者と向き合う
第二は「決断」である。
料金改定、基幹更新、耐震化、ダウンサイジング、広域連携、再編——これらは政治的なリスクを伴う決断だが、決断を避けるほどリスクは拡大する。水道料金は“上げにくい”のではなく、“上げなければ維持できない”段階に入っているし、本来は遥か昔から取り組んでこなければいけなかったことだ。更新率の低さ、耐震化率の遅れ、財政制約——これらを放置すれば、沖縄のような事件が全国で連鎖する。
勝手に自分たちで地下に埋めて見て見ぬふりをしている場合ではない。
政治の役割は過去から今日までの不作為を認め、「将来に向けた投資・利用者への負担を決断する」ことである。
経済合理性に基づく行動
第三は「行動」である。
行動とは、単なる対策を指すのではなく、構造を変えることを意味する。
たとえば基幹更新の計画策定では、管路の状態管理、更新優先順位の明確化、投資の平準化、複線化の検討、水源・導水・送水の総合的再評価が必要である。
PPP/PFIも取るべき唯一の手段は単純なウォーターPPPではないはずだ。
建て替え用地等の遊休地の有効活用、自販機の貸付等による小さな歳入確保、ポンプ等の流量調整等によるESCO等、民間と連携すればできることは山ほどあるはずだ。
宍粟市では、老朽化した浄水場を事業パートナー方式を採用して、電源開発(株)と連携して更新を行うこととしている。
広域化では経営統合だけでなく、施設の統廃合、専門人材の共有、バックアップルートの構築など“実質的な広域化”が求められる。さらに、技術者不足に対応するための研修、採用戦略、外部人材活用、官民連携も必要になる。
覚悟・決断・行動
行動には痛みが伴う。
しかし行動しなければ、次の破裂は“避けられない未来”になる。今回の沖縄の事件は、「行動を先送りした結果」であるのと同時に、「行動が不可能になる構造が限界を超えた結果」でもある。
構造が壊れれば、誰がやっても防げない。
だからこそ、構造を抜本的に変える覚悟・決断・行動が必要だ。
水道を守るために構造を変え、民間事業者との本当の意味での連携(≒ガチPPP/PFI)、広域連携を進め、基幹更新に踏み出し、料金体系を見直し、技術者を育成し、計画的に設備を更新する。
行政だけでも、民間だけでもできることではない。
関係者が同じ方向を向けば、構造は変えられるし、変えていくことは不可避な状況にある。
沖縄の事件は、全国に向けた“最終警告”であると同時に、新しい水道の未来を描くための起点でもある。
水道は基幹的な社会インフラである。
生活を支え、産業を支え、地域を支える。
その水が止まることは、地域や経済が止まることを意味する。
実際に那覇市では飲食店が休業したり、透析にも影響が出る恐れなどが報道された。
だからこそ、現実から目を逸らすのではなく、リアルに試行錯誤しながら対応しなければならない。沖縄の導水管破裂は悲劇ではなく、未来を変えていくための真実・第一歩である。これを“きっかけ”として、日本の水道を次の世代に引き継ぐための道をつくること。
それが、いま全国の自治体・民間事業者に求められている。
岡崎正信氏も本件について、非常に示唆に富むnoteを書かれているので、末尾に記しておく。
お知らせ
2026年度見積受付中
現在、2026年度のまちみらいとしてのアドバイザー業務・個別案件等の見積を受付中です。
受託できる数には物理的な制約がありますので
・既契約のところ
・早くお問い合わせをいただいたところ
・モリモリパックで検討いただけるところ
・やる気のあるところ
から順に対応させていただきます。
ぜひお気軽にお問い合わせを。
2025年度PPP入門講座
約10年間にわたって毎年定期的に実施してきたPPP入門講座。
本年度も2025年6月27日まで全6回、会場・オンライン合わせて過去最高の533名(終了時)にご参加いただき大変ご好評をいただきました。
全6回(各回_60分×3コマ)にわたって、弊社の基本理念である「現場重視・実践至上主義」に基づいた生々しいリアルな姿を事例を通じて学んでいくものですが、教科書的な「PFI法に基づくPFIとは」「VFMの算定方法」「事業手法比較表」等の話は一切ありません。
最近、類似の「PPP入門編」のセミナー・勉強会があちこちで開かれているようですが、それらとは一線を画す超オリジナリティ溢れたものになっています。
今回は更に内容をブラッシュアップして、能登地震・八潮市の道路陥没事故・Next PPP/PFIや事業パートナー方式なども交えながらPPP/PFIを解説しています。
来年度の開催時まではアーカイブ配信をご覧いただけますので、今からでもぜひお申し込みください。
※詳細はリンク「まちみらい公式HP」をご覧ください。
noteプレミアムへの移行
2025年1月からまちみらい公式noteは「noteプレミアム」に移行しました。(単純に今まで知らなかっただけ。。。)
noteにコメントも受け付けています。双方向型になっていけるようコメントにはレスを入れていきます。記事の「いいね!」も積極的にお願いします。
また、最下段にあるように「投げ銭」は絶賛募集中ですw
実践!PPP/PFIを成功させる本
2023年11月17日に2冊目の単著「実践!PPP/PFIを成功させる本」が出版されました。「実践に特化した内容・コラム形式・読み切れるボリューム」の書籍となっています。ぜひご購入ください。
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2021年に発売した初の単著。2025年5月現在7刷となっており、多くの方に読んでいただいています。「実践!PPP/PFIを成功させる本」と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。
まちみらい案内
まちみらいでは現場重視・実践至上主義を掲げ自治体の公共施設マネジメント、PPP/PFI、自治体経営、まちづくりのサポートや民間事業者のプロジェクト構築支援などを行っています。
現在、2026年度以降の業務の見積依頼受付中です。
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