税収増なのに財政非常事態宣言
ここ数週間、財政非常事態宣言や経常収支比率の悪化が相次いで報じられている。荒尾市では財政調整基金の枯渇が生じ、西予市でも歳出構造への警鐘が鳴っている。大和市では基地を抱え財政的に有利であるはずなのに経常収支比率が100%を超え、北見市は合併特例債を背景に整備された施設群等により財政が逼迫しているとされている。


奇妙なのは、これらの警報が国全体・市町村の税収がこの数年上振れしてきた局面と同時進行で起きている事実である。税収という“総量”はむしろ増えていたのに、個々の自治体では「基金が尽きる」「経常収支比率が100%を超える」事態が生じている。これは外部環境だけでは説明できない。
結論を先に言えば、単年度会計・現金主義の発想で「見映えの良い事業」を繰り返し、「前例踏襲・事なかれ・縦割り」等の行政が揶揄される経営感覚の欠如により(合併特例債・ふるさと納税・財政調整基金の取り崩し等によって誤魔化してきた)キャッシュフローが破綻する事態が、物価・人件費等の高騰でいくつかの自治体で思ったより早く顕在化しただけである。
財政に関する警報の同時多発
物価・人件費の高騰はあるけど
建設物価を中心とした物価高騰、エネルギー価格や人件費の上昇。
自治体が厳しい財政状況を説明するときに枕詞で使う言葉はほぼ同じである。もちろん影響は計り知れないほど大きいことは間違いない。
ただ、それだけで財政調整基金が短期間に目減りして底をついたり、経常収支比率が100を超えるところまで悪化するだろうか、そして物価高騰等にその原因をなすりつけて良いのだろうか。
単年度会計・現金主義で税金・補助金・交付金・起債等に依存し、それが将来に与える影響を見据えず、「その場の“やった感”」でのWin-Winの構造で結びついたオママゴト行政の蓄積が前述のように物価高騰の影響を受け思ったより早く「こんなはずではなかった」現実が訪れているに過ぎないのではないだろうか。
単年度会計・現金主義

首長・議員ともに4年の任期の中で「目にみえる成果」を出していくことが評価≒票にも繋がりやすいことから、どうしても短期的に目に見えるものを“積む”ことに走ってしまう。
補助金・交付金や起債のメニューに合わせてより大きな事業を実施する方が“やっている”ように見えるし、できる人に見える。首長・議員だけでなく、首長の補助機関であるはずの行政職員の間でもいまだに「有利な補助金・起債」という言葉が共通言語になっていたり、事業の中身や経済合理性に基づく持続可能性より補助金・交付金をより多く取ってくる職員が優秀だとされる風潮が残っているまちも多い。
LCCベースで考えない
その結果、ハコモノやインフラについては整備後に必然的に発生する固定費としての人件費・エネルギーコスト・各種設備等の保守点検・修繕・更新経費・指定管理委託料等が、毎年淡々とキャッシュアウトしていく。そしてこれらの固定費は物価・人件費の高騰の影響が直撃するが、そもそもの「固定費」すらまともにLCC(※Life Cycle Cost≒企画から設計、建設、維持管理運営、解体に至るまでに必要な一連の経費)ベースで考えていない自治体が、物価高騰の影響に対応できるわけがない。
こうしたことに対応していくために財政調整基金をはじめとする各種基金も制度上は存在するが、これらは衝撃吸収材でしかない。自分のまちで支えられないほどの固定費が積み上がってしまえば、吸収材としての基金はあっという間に尽きてしまう。
しかも、単年度会計・現金主義では「整備完了」という“成果”を先にカウントし、そこには膨大な労力・マンパワーを注いで帳尻を合わせるが、そこから建設の4〜5倍に及ぶと言われる維持管理・運営費用(≒固定費)キャッシュの出入りは「翌年度以降の別の話」にしてしまう。ここに、見映えと実相のねじれが生じるし、このことこそが、別にまとめた竣工即負債の構図であり、一言で言えば「経営感覚の欠如」でしかない。
財政非常事態宣言をする、あるいは経常収支比率が100%を超える自治体の増加は、繰り返しなるが外部要因によるものではなく内部要因でしかない。(その時間軸を早めたのが人件費・物価の高騰であるに過ぎない)
「まちのバランスシート」で考える
ガチバランスシートではなくとも
「バランスシート」と聞くと、自治体会計の勘定項目の並び替えを想像しがちだが、ここで対象とするバランスシートはもう少し単純化したものだ。まちの中で実際にキャッシュがどのように回っているのか、そして行政が行う個々の事業によってまち全体の経済循環がどのように変わっていくのかを考えることである。

例えば、池袋西口公園(GLOBAL RING)は、このリングを含む整備費を公園内のカフェから上がってくる賃料だけで回収することはとてもできないが、西口公園がこのような形にブラッシュアップされることで周囲のテナント構成・テナント構成等が変化することで、エリア全体から反射的に豊島区には都市計画税・法人税・固定資産税等が入ってくることになる。
行政運営と自治体経営
地域コンテンツ・地域プレーヤーとリンクしたプロジェクトをいかに数多く、クリエイティブに構築・運用していくのか、そのことによってまち全体のバランスシートがどう変わっていくのか考えながら自治体経営していくことが求められる。

つまり、この瞬間に「決められたことをつつがなく行う行政運営」とは全く異なるし、結局、物価高騰等を言い訳にして財政が詰む自治体は、単なる行政運営しかしてこなかったに過ぎない。
公共「資産」を自ら負債に堕とす
反対に、本来は市民生活を支えたり豊かにするために貴重な行政のリソースを投入して整備した公共「資産」であるはずの公共施設やインフラは、(そもそもビジョン・コンテンツ等を精査せずにコンサル等への丸投げ委託やオママゴト市民WSを立法事実としてしまう「やる前からアウトなもの」も多数あるが、)マネジメント不在で“負債化”してしまう。
このnoteで紹介する自治体だけでなく、世の中のほぼ全ての事例が「良かれ」と思って各種事業を実施したのだろうが、「どう整備するのか」だけにフォーカスが置かれ、(ほぼ全てを一般財源で賄わなければならない)固定費を精査することもなく、「金がないから」と固定費すら削減してしまう。
その結果、近年では指定管理施設において「指定管理委託料の不足」を理由に応募者が現れず・あるいは現行の指定管理委託料では経営が困難だとして、指定管理者不在で休館となってしまう事例も多く見受けられるようになってきた。これらにも物価・人件費の高騰が影響を与えていることは間違い無いだろうが、前述のとおり決定打ではなく「時間を早めただけ」である。
ハコモノ・インフラを整備することだけが目的化し、そこがゴールになってしまうと、ハコそのものが固定費を生み出すだけの物理的な要素になってしまい、固定費は「やった感」の代償として積みあがってしまい、「やってしまった」ものに堕ちてしまう。財政非常事態宣言をした自治体には、こうした構図を直視することなく、「一過性の増収(ふるさと納税など)でなんとかします」と財政再建プランを打ち出したりするが、それは根本的な経営対策には全くなっていない。
まちのバランスシートとは、こうした回路を直視し、まち全体のお金の循環を構築しマネジメントしていくことである。科目の再分類ではない。
事例から考える
荒尾市


荒尾市では2025年度に財政調整基金が底をつくと報道されている。しかし、よく見れば2025年度当初予算の概要でそのことについて、グラフで明確に示されている。つまり、当初予算が議決されているのだから予算の議決権を持つ議会も「知らなかった」と言い訳することはできない。
また、財政調整基金がここ数年で激減していることもこのグラフを見れば一目瞭然である。
報道では「物価高騰で旧荒尾競馬場跡地の再開発費が増えたことに加え、市施設運営費も増加したことなどが要因」とされている。
https://www.city.arao.lg.jp/fs/2/1/2/9/7/1/_/02___1___________.pdf

しかし、根本はそこでない。
2025年5月に開催された行政改革推進審議会の資料でも、2020〜2022年度には「通常行うべき事業に新型コロナ交付金を充当している」と、財政調整基金に手をつける以前にも単年度会計・現金主義が成立しておらず、臨時財源に依存していたことが見て取れる。


結局、自分たちのまちが「日常すら回っていない」のにも関わらず、6,264百万円に及ぶ事業規模の競馬場跡地の市街地開発事業(国費・市費ともに2,000百万円近い交付金を入れること前提)に手を染めてしまったこと、これの見直しを図らなかったことがトドメを刺したと考えられる。
競馬場跡地の利活用は、荒尾市にとって大切なプロジェクトであることは間違い無いだろうが、「ハコモノ・インフラを整備したからといってまちが活性化する」わけではない。
しかも、今回の土地区画整理事業は保留地処分が全て完了して収支バランスが(国費・市費を除いて)合う形で計算されているが、阪神大震災を契機とした神戸市長田区の土地区画整理事業ですら32,400百万円もの赤字を発生させ、2025年10月現在で「市が整備した再開発ビル25棟の商業床計約52,000㎡のうち約6割が売れ残っている」現実を見れば、荒尾市が置かれている状況がどれほど厳しいかは想像がつく。
荒尾の財政調整基金の枯渇は、物価高騰等の外的ショックが導火線になったとしても、内部の単年度会計・現金主義すら回っていなかったという可燃物(固定費の塊)と自ら新たに発生させた競馬場跡地という爆弾によって顕在化したものに過ぎない。
大和市
大和市でも2024年度一般会計の決算で経常収支比率が100%を超えたことが報道された。比較的裕福なエリアであるだけでなく、大和市には基地関係で毎年数億円もの基地関係の交付金が入ってきており、財政的には有利だったはずである。
その大和市がこのような状態に陥り、2027年度には財政調整基金まで枯渇するかもしれないと報道されている。

2024年度一般会計決算は認定されたものの、その附帯決議では厳しい言葉が並ぶ。もちろん予算編成権・執行権を有する執行部の問題も大きいが、当該予算を議決してきた意思決定権者としての議会の責任も同等に重い。
そして大和市といえば、文化創造拠点「シリウス」である。
大和駅に近接した一等地に建設された図書館・芸術文化ホール・子育て支援・生涯学習等の複合施設で、指定管理者制度で運営(シリウス中心に7施設を包括的に指定管理)されている。
約3,000百万人/年が訪れる公共施設として、ザ・公共施設マネジメントの世界では優良事例として紹介されることも多い。

このシリウスを中心とした文化創造拠点等指定管理者事業の報告書では、約1,072百万円/年もの莫大な指定管理委託料が「シリウス等を運営するため」に投下されている。それに対して利用料収入は121百万円/年(指定管理委託料の11%)、事業収入(≒自主事業)は40百万円/年にとどまっている。指定管理者制度の肝といっても良い自主事業が(収入だけがポイントではないとしても)十分な費用対効果を生んでいないことは明らかであり、事業費として事業収入の2.5倍近い131百万円/年ものコストを要している。
更にいえば、7施設合計ではあるが維持管理運営費や事業費を除いても人件費が790百万円/年である。仮に10百万円/人で雇用したとしても790人分であり、この7施設でどれだけの人が動いているのか、それが適正であるのかは十分に検討の余地があるだろう。
この単純なキャッシュフローも大和市にとっては固定費としてボディブローのように効いているはずだ。
また、まちの一等地に巨大な公共複合を配置することは、もしそこに民間の施設が立っていれば得られたはずの固定資産税・都市計画税・法人関係税等の歳入の機会損失にもつながっている。このロスを上回る価値(教育・文化・子育て・生涯学習の質と量、及びそれが地域の売上・雇用・周辺の地価
等に与える影響)を生じさせているのか検証することも必要だろう。
経常収支比率が100%を超えるまでの過去5年間の推移はこうだ。2023年度99.3%、2022年度96.8%、2021年度92.2%、2020年度98%、2019年度99.7%。赤字一歩手前のギリギリの行政運営が続いていたことが分かる。
大和市の財政調整基金の取崩額や上記報道にあるように赤字一歩手前の行政「運営」であったことを考えると、シリウス等のキャッシュフローの改善は今すぐできることの一つであり、その象徴にもなってくるはずだ。
西予市
西予市でも2025年10月10日に財政危機脱却プランを公表した。







合併に伴う特別交付税措置が段階的に縮小されていくことは事前にわかっていたはずなのに、その「特別」な措置を生活費として取り扱ってきてしまった。(薄々気づきながらも?)その交付税措置の縮小に合わせて予算規模を調整していくことを選択せず、誰も歯止めをかけなかったことが致命傷であっただろうし、残念ながら自業自得である。



西予市の「はちのじ」まちづくり整備事業は、PFIで進められ総事業費1,937百万円とされている。駅舎・公共施設・立体駐車場・駅前広場等の整備・運営事業であり、この過程でも総事業費を論点として(事業期間・事業範囲の見直し等の)紆余曲折があったようだが、ここで忘れてはならないのは、この事業が企画・実施された時期と西予市の財政状況が悪化した時期が皮肉にも一致していることだ。
また、当初の6,000百万円/30年近い事業の事業期間を15年に短縮し、一部の工事をPFI事業から外す等の「PFI事業としての事業費」の削減は行なっているが、それは当該年度の一般会計予算書上の数字でしかなく、この駅前周辺整備全体のLCC、まち全体のバランスシートはそれほど変わらないことを忘れてはならない。
PFI法に基づくPFI事業は単なる調達の形式に過ぎず、目的ではないし、そこにどこまで事業を盛り込もうが、整備する施設・インフラの総量・規模が同様であれば全体としてのLCCに大きな差は発生しない。
西予市でアラートが働くチャンスのひとつはここにあったのかもしれない。そもそも、この事業自体が合併に伴う特別交付税措置に依存したもので、やる前から「将来支えきれない規模」であったのではないか。
そして、この「はちのじ」まちづくりによる駅前開発は、あまりにも全国での既視感のある事業ではないだろうか。
また、西予市は市役所オフィスの改革でも先進事例として紹介されることが多い。確かにワークプレイスはクリエイティブな仕事を効率的にしていくうえで重要な要素であるが、これも「形」をアウトプットとしては意味がない。このようなワークプレイスを構築することで、どれだけ公共サービスが向上したのか、まち全体のバランスシートが良くなったのか。
これらが本当に改善し、無駄にコンサルへ業務委託していたものが内製化して人件費や委託費を軽くしたり、職員のアウトプットの質と速度が市民の体感として上がるのであれば、ワークプレイス改革に大きいな意味があるだろう。「見映えの良いワークプレイス」ではなく、「仕事の質と速度が上がったワークプレイス」であること。ワークプレイス改革がこの線で語られ、地域プレーヤーとつながりまちが良くなるなら、初めて“改革”と呼べる。
そして、少しだけ厳しく見れば、このワークプレイスが本当に機能しているのであれば、今回のような単純な論理での財政危機に陥ることは回避できたのではないだろうか。
財政危機脱却プランでも旧来型行政の思考回路・行動原理による「減らすこと・止めること」のほぼ一辺倒で、短絡的に直近のキャッシュアウトを抑制することが主眼に据えられているが、公共施設・インフラの老朽化は待ってくれない。減価償却が進み、本来投資すべきときにやらなかったことは「積み残し額」として後年度により大きな負担・特大ブーメランとして襲いかかるだけでなく、リスクが顕在化して市民の生命・財産を奪うかもしれない。



更にふるさと納税に期待しているようだが、これまでも合併による特別交付税措置や合併特例債という臨時ボーナスがまちを悩ましてきた(そのことは上記資料にあるように検証されている)のに、また臨時の世界(だし、そもそも制度欠陥で明日をもしれぬ仕組み)のふるさと納税に活路を見出そうとするのは、それだけ状況が厳しいことの現れなのかもしれないが、経営感覚が問われるだろう。
また、このような弱った状態のところには、ハイエナふるさと納税関連業者が群がってくるので、余計なキャッシュアウトや弱っているにも関わらず「喰われる自治体」に堕ちてしまう懸念がある。
北見市
北見市については、上記のnoteで概要・経緯等を記しているのでここでは割愛するが、庁舎・図書館などの合併特例債に依存した巨大で華美な公共施設、「書かない窓口」などの表面上のキラキラした「やってる感」に溢れた政策、合併特例債や特別交付税措置に依存していた構図などは、前述の西予市と類似している。
また、合併に伴う広大な市域・歯止めのかからない人口減少・中心市街地の衰退等の周辺状況も、皮肉なぐらいに同じ様相を呈している。
同時に先日noteで紹介した八代市も(財政非常事態宣言等は出していないものの)似たような構図にあると言えるだろう。
ふるさと納税への依存
目の前にぶら下がる誘惑



ふるさと納税の2024年度の寄附総額は約1,272,800百万円に達している。自治体の歳入にとっては(制度上、他の自主的な歳入確保策とは異なり地方交付税の算定対象外となるため)キャッシュとして確かに魅力的なものであり、「非常事態」をひとまず和らげる効果はある。しかし、上記の資料にもあるように返礼品・ポータルサイトの法外な手数料等の関連経費で全体の50%近くが消えていく構図にあり、制度欠陥が各方面から叫ばれている。
甘い誘惑に手を出してしまう体質
前述の自治体を含め「財政ガー」と嘆いている自治体は、このような危うい・官製カタログギフト方式のEC販売に活路を見出そうとする体質こそが堕ちていった原因のひとつであることを認識しなければならない。
そもそもふるさと納税自体が「他自治体からの税源奪取」であって、更にピンハネ業者に日本全体の貴重な税収を横流ししてしまう構造にあり、地域の稼ぎを増やす構造にはなっていない。
ぜひ観てください!そして拡散もお手伝いお願いします!【緊急動画配信】まさかのふるさと納税停止30億円超!「世界一美味しいぶどう」350房が廃棄の危機!長野県須坂市のEGAO FARMを助けたい! https://t.co/raJ5CnR8yp @EgaoFarm
— 川原卓巳|Takumi Kawahara (@takumikawahara) September 16, 2025
同時にこれに巻き込まれた本物の地域プレーヤーにまで直接の被害を与える事態も発生しており、まちのバランスシートは決して良くならない(須坂市のEGAO FARMの件については筆者も少しだけ協力させていただいたが、ふるさと納税に流すのは正直あまりにももったいない、わかる人にきちんとした単価で流通させるべき強烈なグレードのブドウであった)。
臨時でボーナスであるはずのふるさと納税を行政運営(≠自治体経営)の固定費に充当してその場を取り繕おうとすること自体、完全に昭和100年の発想であり、単年度会計・現金主義のオママゴト行政に染まっている証拠である。この強烈な不確定要素を持つ変動費であるふるさと納税が何らかの(外部も含む)要因で激減した瞬間に、その自治体は更に詰んでしまう。
財政非常事態は曝け出すチャンス
「今の財政状況」やまちの姿は、残念ながら過去から今日まで自分たちで選択してきたことの結果でしかないし、どんなに取り繕っても何も変わらない。そして、それらは「あなた」だけの責任ではないし、そのように思っているなら思い上がりである。そのまちに関わる多くの人たちが、長い年月をかけて何百・何千もの選択をしてきたことなのだから、たったひとりで背負い込むものでもなければ、解決できるようなレベルの問題でもない。
だからこそ、このような事態に陥っていることを素直に曝け出し、自らのまち全体の経営感覚の欠如を認め、根本的に思考回路・行動原理を改めるチャンスであり、市民や議会とも共通認識をつくるまたとない機会である。
そういえば、自分の公務員時代には財政部門だけでなく、多くの関係者がいろんな要望を叶えられないときには「財政が厳しいので」と言い訳し、予算や決算審査では「財政状況は健全である」と見事な二枚舌を駆使していた。

これはどこのまちでもあるあるではないだろうか。
裸の王様にならない
上記の写真のような実態、それを何十億円というレベルで必死こいてコスト削減・歳入確保を行なっても対応する費用を調達できない困難さ、現場にはそのまちの財政状況が如実に現れるし、誤魔化しは全く効かない。
そういえば、常総市の業務を行なっていた際に、神達市長は全議員も参加する勉強会で「うちのまちにこんなに金がないとは思わなかった、このままでは予算が組めません」と堂々と宣言されていた(流石に側で聞いていても驚くような発言であったがw)。この予算編成権者としての包み隠さない姿・現実を直視する姿勢こそが「できることはなんでもやるしかない」積極性に結びついていたのだろう。
誰かが(何かにビビったり・誰かに忖度したり・自己保身に走ったり・同調圧力に屈したりせず)「本当のこと」を正直に話す、それこそが多くの自治体で最も欠けていることであり、苦しいときにこそ必要なことだろう。
また、首長をはじめとする経営層やまちの意思決定機関である議会は、財政部門の単年度会計・現金主義の世界における「うちのまちの財政は健全です」の言葉に惑わされたり、いくつかの派手で見栄えの良い事業を展開することで周囲からチヤホヤされて足元の財政状況を見落とすような裸の王様になってはいけない。
ヒューマンスケール/エリアスケールでやり直す
「喰われる自治体」そのもの
厳しい財政状況に陥る自治体によく見られる共通項は、そのまちのヒューマンスケール/エリアスケールを逸脱した地域コンテンツ・地域プレーヤーと全くリンクしない、まちの文脈を無視した、更には経済合理性を考慮しない巨大な公共施設を建設したり、強烈な規模の土地区画整理事業(や市街地開発事業/市街地再開発事業)に手を染めていることである。
また、更にタチの悪いのは、こうしたド派手な事業はコンサル・ゼネコン・ディベロッパー・ベンダー等によって持ち込まれ、そうした事業者は導入部分だけでガッチリとキャッシュを得てビジネスとして成立させ、時には「点としてだけ」は見栄えの良いことを理由に「都合の良い側面だけ」を見せる自社のショールームのように使っている。
まさに「喰われる自治体」そのものの構図である。
エリアとしてのキャッシュアウト
前述のように、こうした事業がまちなかの一等地で行われることは、その土地を民間が所有し、何らかのクリエイティブなビジネスを展開していた場合に得られるはずの固定資産税・都市計画税・法人税・市民税等の税収を喪失させることを意味する。
(クリエイティブなプロジェクトは、周辺のエリア価値も向上させ、点として当該敷地だけでははなくエリア全体の税収を増加させていくことになるが、一方で)まちと乖離した公共施設がそこに鎮座することで周辺のエリア価値を下落させ、周辺を含めた税収を目減りさせてしまう。
流山市のNorth Square Market
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/committee/280201/shiryou1_2.pdf
流山市のおおたかの森駅北口市有地活用事業も、残念ながら「まちなかの一等地に・・・」という前述の自治体と似たような構図で、確かにホールは定期借地権と市有地の一部売却による等価交換で市の財政負担ゼロで整備したものの、指定管理委託料だけで約100百万円/年のキャッシュアウトをしている状況にある。

現在では流山市職員の有志による「Nまちデザイン」が毎月、この場所を活用してマルシェを開催し、少しずつではあるがこの場に「人の匂い」をビルトインしつつあり、それに呼応するように北口周辺でも緩いスピードではあるが個性豊かなテナントが出店するようになってきている。
こうしたことから考えても、自分たちのまちの文脈を読み取り、地域コンテンツ・地域プレーヤーとリンクした小さいかもしれないが、地道で愚直な取り組みが本来やるべきことなのだろう。
規模がそのまちからスケールアウトしているから
・図体が大きすぎてうまくいかないときに軌道修正ができない
・整備に全てのリソースを全振りしてしまったから、運営段階でリソースが何も残っていない
この必然的な結果として、エリアの価値が下がってしまったり、後に引くことを自ら難しくしてしまっている。膨大な税金を投下し続けて何とか現状を取り繕うことでキャッシュアウトが蓄積するだけでなく、まちのリソースを浪費し、更にまち全体が衰退することでバランスシートが崩れていく。
身の丈経営
地方の自治体が置かれている状況が厳しいことは間違いない。そして目の前に安易なキャッシュインの方法論であるふるさと納税というニンジンをぶら下げられているのだから、そちらに流れてしまう心理もわからなくはない。
ただ、こうした「脆くて淡い臨時ボーナス」を生活の糧にしてしまうのは、パチンコ・競馬・FX等で一発逆転を狙い、愚直に働くことを放棄することと同義でしかない。
今、目の前でできる遊休地の貸付や売却・自販機の貸付・ネーミングライツ・有料広告・土地の包括売却業務委託・使用料の見直し・税の収納率向上といった小さいけれど確実なキャッシュイン、ESCOによる設備更新・包括施設管理業務委託・営繕業務の包括アウトソーシング・建設工事におけるCM導入等の効率化、更には自主事業を中心に据えた指定管理者制度の運用・都市公園等のインフラ系施設における設置管理許可の積極的活用等の公共サービス向上を軽んじてはいけない。
そして、こうした小さいけれど着実なプロジェクトを蓄積していくことで、自分たちの「身の丈」がどこにあるか、お金の価値が初めて見えてくる。
一般会計の予算が数十億円しかない自治体で、10,000百万円を超える庁舎・図書館やPFI法に基づくPFI(サービス購入型BTO)での駅前一体開発などができるわけがないことも遅まきながら認識するはずだ。
また、行政的な見栄えの良い(≒行政にしかウケない)やってる感満載のなんちゃって事業もいかに空虚で意味のないものかわかってくるだろう。
過去に留まらない
繰り返しになるが、現在のそのまちの状況は過去から今日までの選択の連続・蓄積の結果でしかない。
過去は変えられないので犯人探しをしても全く意味はないし、そんなことをしていても関係者が余計に心を閉ざしてしまい、大切な情報・経験知まで闇に葬ってしまったり、アンタッチャブルな状況を作ってしまうので、「客観的な事実」としてだけ把握しておけば十分である。
大切なことは、今から明日、将来に向かって「今、自分たちができること・やらなければいけないこと」を徹底的に考え、今すぐに試行錯誤していくことだ。
「お城庁舎」に籠っている場合ではない
やらなければ数字は動かない
総務省は地方公共団体に対して「統一的な基準による財務諸表」の作成及び公表を要請しており、建前上は全ての自治体がフルコストベースで財務状況を把握しているはずだが、実際の予算・決算は相変わらず単年度会計・現金主義ベースで行われているだけでなく、財務諸表がこれらの場面で判断材料として利用されている自治体はほとんどないのではないだろうか。
そのような中で上記noteに記したように、意識「だけ」高い系の財政担当者は、一生懸命に公会計のデータを精査しようとするが、「手を動かす」人がいなければ数字は動かないし、短絡的に事務事業を「あれもこれも止めます」、「職員の人件費をカットします」では、結局後年度に先送りしているに過ぎないし、そんな希望のないまちからは「動ける人」から消えていく。
オママゴトからの脱却
自分たちの経営感覚が欠如して整備してしまった華美でヒューマンスケール/エリアスケールから逸脱した庁舎で、足元の商店街すらズタズタに衰退しているのに、そこでオママゴトをしている場合ではない。
時代が猛烈なスピードで動き、物価・人件費の急騰が今後も確実に続く世の中で「どんな公民館が欲しいですか?」などとオママゴトの市民ワークショップをしている余裕はどこにもない。
公共施設マネジメントや財政などのボードゲームで「わかったつもり」になって、内輪だけで盛り上がっていてもまちは何も変わらないどころか、そこに要していた時間を含めたリソースが浪費されている。
空中戦の有識者委員会をやっていてもノーリアリティであるし、諮問・答申を繰り返すだけで執行部の人間すら何を議論しているのかもわからない。
昭和100年の思考回路・行動原理による職員研修をやっていても、今は30年以上の平成を経過した令和の時代であり、「その当時のこと」が世の中とのギャップを生んでいることを忘れてはならない。元号で物事を見ている場合でもない。
民間ベースで見ても、超一等地ですら物価・人件費の高騰や人がいない問題でプロジェクトが凍結・破綻する時代である。
改めて「自分たち」の足元を見つめ、包み隠さず現状を把握・分析・公表して将来に向かって「自分たちらしく」試行錯誤していくことが何より求められている。
お知らせ
2026年度見積受付中
現在、2026年度のまちみらいとしてのアドバイザー業務・個別案件等の見積を受付中です。
受託できる数には物理的な制約がありますので
・既契約のところ
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・モリモリパックで検討いただけるところ
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から順に対応させていただきます。
ぜひお気軽にお問い合わせを。
2025年度PPP入門講座
約10年間にわたって毎年定期的に実施してきたPPP入門講座。
本年度も2025年6月27日まで全6回、会場・オンライン合わせて過去最高の533名(終了時)にご参加いただき大変ご好評をいただきました。
全6回(各回_60分×3コマ)にわたって、弊社の基本理念である「現場重視・実践至上主義」に基づいた生々しいリアルな姿を事例を通じて学んでいくものですが、教科書的な「PFI法に基づくPFIとは」「VFMの算定方法」「事業手法比較表」等の話は一切ありません。
最近、類似の「PPP入門編」のセミナー・勉強会があちこちで開かれているようですが、それらとは一線を画す超オリジナリティ溢れたものになっています。
今回は更に内容をブラッシュアップして、能登地震・八潮市の道路陥没事故・Next PPP/PFIや事業パートナー方式なども交えながらPPP/PFIを解説しています。
来年度の開催時まではアーカイブ配信をご覧いただけますので、今からでもぜひお申し込みください。
※詳細はリンク「まちみらい公式HP」をご覧ください。
noteプレミアムへの移行
2025年1月からまちみらい公式noteは「noteプレミアム」に移行しました。(単純に今まで知らなかっただけ。。。)
noteにコメントも受け付けています。双方向型になっていけるようコメントにはレスを入れていきます。記事の「いいね!」も積極的にお願いします。
また、最下段にあるように「投げ銭」は絶賛募集中ですw
実践!PPP/PFIを成功させる本
2023年11月17日に2冊目の単著「実践!PPP/PFIを成功させる本」が出版されました。「実践に特化した内容・コラム形式・読み切れるボリューム」の書籍となっています。ぜひご購入ください。
PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本
2021年に発売した初の単著。2025年5月現在7刷となっており、多くの方に読んでいただいています。「実践!PPP/PFIを成功させる本」と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。
まちみらい案内
まちみらいでは現場重視・実践至上主義を掲げ自治体の公共施設マネジメント、PPP/PFI、自治体経営、まちづくりのサポートや民間事業者のプロジェクト構築支援などを行っています。
現在、2026年度以降の業務の見積依頼受付中です。
投げ銭募集中
まちみらい公式note、世の中の流れに乗ってサブスク型や単発の有料化も選択肢となりますが、せっかく多くの方にご覧いただき、様々な反応もいただいてますので、無料をできる限り継続していきたいと思います。
https://www.help-note.com/hc/ja/articles/360009035473-記事をサポートする
そんななかで「投げ銭」については大歓迎ですので、「いいね」と感じていただいたら積極的に「投げ銭」をお願いします。
