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顧客|センスは顧客の財布と不満を想像する力で磨かれる

顧客


前回は、数字について書いた。
数字を見ないセンスは、ただの好みである。

前回の記事はこちら

売上、粗利、キャッシュ、解約率、受注単価、営業工数、入金サイト。

そこを見ずに「良さそう」「伸びそう」と言っても、判断にはならない。

ただし、数字だけを見ても足りない。
数字の奥には、必ず顧客がいる。

売上が伸びた。
それは、誰がなぜ払ったお金なのか。


解約が増えた。
それは、誰がどこで価値を感じなくなったのか。


受注単価が下がった。
それは、顧客が価値を感じていないのか。
それとも、営業が安く売っているのか。


問い合わせが増えた。
それは、関心が高まっているのか。
それとも、説明が足りていないだけなのか。

数字は大事だ。
でも、数字の奥にいる顧客を見なければ、事業の実態は見えない。

ビジネスセンスは、顧客の財布と不満を想像する力で磨かれる。


顧客を見ているつもりで、社内を見ていることがある


多くの会社は、「顧客を見ている」と言う。

顧客の声を聞いている。
アンケートを取っている。
商談記録を残している。
問い合わせを管理している。
解約理由を分類している。

もちろん、それは必要だ。
でも、それだけで顧客を見ているとは限らない。

本当に見なければいけないのは、顧客が何に困り、何に不満を持ち、何にお金を払っているのかだ。

会社が伝えたい価値と、顧客が感じている価値は違う。
営業が説明している価値と、顧客が買った理由は違う。
プロダクト側が作りたい機能と、顧客が継続する理由は違う。
経営が伸ばしたい売上と、顧客が払える予算は違う。

ここを外すと、社内では顧客を見ているつもりでも、実際には社内の都合を見ているだけになる。

会議では顧客の話をしている。
でも、顧客の不満ではなく、自社の売りたい機能の話になっている。

資料では顧客課題を整理している。
でも、本当に顧客が困っている順番ではなく、自社が説明しやすい順番になっている。

営業では顧客ニーズを聞いている。
でも、実際には受注するために都合のいい言葉だけを拾っている。

顧客を見るとは、顧客の名前を出すことではない。
顧客の財布と不満を見ることだ。

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顧客は、良いものだから買うわけではない


作り手は、自分たちのプロダクトやサービスを良いものにしようとする。

機能を増やす。
品質を上げる。
デザインを整える。
資料を磨く。
説明を丁寧にする。
導入事例を増やす。

それ自体は悪くない。
でも、良いものを作れば売れるわけではない。

顧客は、良いものだから買うのではない。
自分の痛み、面倒、不安、損失、欲求に対して、払う理由があるから買う。

時間が減る。
手間が減る。
失敗が減る。
売上が増える。
コストが下がる。
責任を説明しやすくなる。
社内を動かしやすくなる。
不安が減る。
面倒な作業から解放される。

こういう理由があるから、お金を払う。

逆に言えば、どれだけ機能が良くても、顧客の財布につながらなければ買われない。

「便利そう」では弱い。
「良さそう」でも弱い。
「使えたらいい」でも弱い。

顧客が、本当に今お金を払う理由があるか。
そこを見ないと、事業判断はズレる。

ビジネスセンスがある人は、プロダクトの完成度だけを見ない。
顧客がなぜ財布を開くのかを見る。


顧客の不満は、表の言葉だけでは見えない

顧客は、いつも本当の不満をそのまま言ってくれるわけではない。

「価格が高い」
「機能が足りない」
「検討します」
「社内で相談します」
「タイミングが合えば」
「今は優先度が低い」

こういう言葉が出る。
もちろん、その言葉は大事だ。

でも、それだけをそのまま受け取ると危ない。

「価格が高い」は、本当に価格の問題なのか。
それとも、価値が伝わっていないだけなのか。

意思決定者に刺さっていないのか。
予算の取り方が違うのか。
導入後の効果が見えていないのか。

「機能が足りない」は、本当に機能の問題なのか。
それとも、現場の運用に乗るイメージがないのか。

社内調整が面倒なのか。
既存ツールとの接続が不安なのか。
使いこなせる人がいないのか。

「検討します」は、本当に検討しているのか。
それとも、断る理由を整理できていないだけなのか。

優先順位が低いのか。
決裁者が別にいるのか。
そもそも困りごとが弱いのか。

顧客の言葉は入口であって、答えではない。
その奥にある不満を想像する必要がある。

顧客は何に困っているのか。
何を面倒だと思っているのか。
何を怖がっているのか。
何を避けたいのか。
何にお金を払う理由があるのか。
何が解消されれば、社内で説明できるのか。

ここまで見て初めて、顧客を見ていると言える。

顧客は、買う理由だけでなく、買わない理由を持っている
顧客を見るとき、多くの会社は買う理由を探す。

もちろん、買う理由は必要だ。
でも、同じくらい大事なのは、買わない理由を見ることだ。

顧客は、価値を感じても買わないことがある。

良いと思っている。
でも、今は買わない。

便利そうだと思っている。
でも、社内を動かすほどではない。

必要性は理解している。
でも、予算を取る理由が弱い。

この「買わない理由」を見ないと、営業もプロダクトもズレる。

本当の障害が社内決裁や導入負荷にあるなら、そこを解かない限り売れない。

ビジネスセンスがある人は、顧客の買う理由だけを見ない。
買わない理由を見る。

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顧客の財布を見るとは、予算の出どころを見ること


顧客の財布を見るというのは、単に価格感を見ることではない。

もっと具体的には、そのお金がどこから出るのかを見ることだ。

誰の予算なのか。
どの部門の予算なのか。
新規予算なのか。
既存予算の置き換えなのか。
コスト削減で説明するのか。
売上増加で説明するのか。
リスク回避で説明するのか。
人件費削減で説明するのか。
経営課題として説明できるのか。

ここを見ないと、価格設定も営業もズレる。

たとえば、現場は欲しいと言っている。
でも、予算を持っていない。

担当者は便利だと言う。
でも、決裁者は投資対効果を見ている。

部門内では必要だと思われている。
でも、会社全体では優先順位が低い。

この状態で商談を進めても、最後に止まる。

「良いとは思います」
「ただ、今期は難しいです」
「社内で検討します」
「優先度を見て判断します」

こうなる。

顧客の財布を見るとは、誰が価値を感じるかだけではない。

誰が払うのか。
何の予算で払うのか。
何と比較して払うのか。
社内でどう説明して払うのか。

そこまで見ることだ。


顧客理解が浅いと、プロダクトが社内都合になる

顧客を見誤ると、プロダクトは社内都合になる。

作りたい機能を作る。
説明しやすい価値を前面に出す。
社内で盛り上がるロードマップを作る。
営業が売りやすそうな資料を作る。
競合にあるから自社にも入れる。
顧客が言ったから機能追加する。

一見、顧客に向き合っているように見える。

でも、実際には顧客の不満ではなく、自社の都合で動いていることがある。

顧客が本当に困っている順番ではない。
顧客が払う理由につながっていない。
導入後の運用負荷を見ていない。
決裁者の不安を解消していない。
現場が使う場面を想像していない。
継続する理由を作れていない。

プロダクトは、作りたいものではない。

顧客がどの不満を解消するためにお金を払うのか。
どの面倒を減らすのか。
どの不安を消すのか。
どの成果に接続するのか。

そこから逆算するものだ。

顧客理解が浅い会社ほど、プロダクトの説明が社内目線になる。

でも、顧客から見ると、なぜ今それにお金を払うべきなのかがわからない。

ここを外すと、事業は伸びにくい。

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顧客の不満は、解約理由より前に出ている


顧客が離れるとき、解約理由として出てくる言葉がある。

使いこなせなかった。
効果が見えなかった。
費用対効果が合わなかった。
社内で定着しなかった。
他社サービスに切り替えた。
優先度が下がった。

もちろん、これらは重要だ。

でも、解約理由として聞いたときには、すでに遅いことが多い。
その前に必ず兆候がある。

ログイン頻度が落ちる。
問い合わせが減る。
定例会で質問が出なくなる。
担当者の反応が薄くなる。
社内展開の話が進まない。
追加提案への反応が鈍くなる。
決裁者が会議に出てこなくなる。
契約更新の話題を避ける。

こういう小さな変化を見ているか。

顧客は、急に離れるわけではない。
兆候を拾えるかどうか。

ここにも、ビジネスセンスが出る。

解約率だけを見るのでは遅い。
顧客の温度が下がっているサインを見る必要がある。

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顧客を見ない会社は、売上を取りに行って会社を壊す


顧客を見る力は、売るためだけに必要なのではない。
取らない顧客を決めるためにも必要だ。

すべての顧客を取ればいいわけではない。

売上は大きい。
でも、対応工数が重い。

契約は取れる。
でも、カスタマイズが増える。

単価は高い。
でも、要求が強く、現場が疲弊する。

有名企業で実績になる。
でも、利益が残らない。

短期売上にはなる。
でも、既存顧客への対応が遅れる。

こういう顧客を取り続けると、会社は壊れる。

売上は伸びる。
でも、粗利が残らない。

現場が疲弊する。
プロダクトがぶれる。
優先順位が崩れる。
サポートが重くなる。
既存顧客の満足度が落ちる。

顧客を見るとは、顧客を全部大事にすることではない。

どの顧客に価値を出せるのか。
どの顧客なら利益が残るのか。
どの顧客なら継続するのか。
どの顧客を追うと会社が壊れるのか。

そこを見ることだ。

ビジネスセンスがある人は、売れる顧客と、取るべき顧客を分けている。


顧客を見ると、数JIS字かの意味が変わる

同じ数字でも、顧客を見ると意味が変わる。


売上が伸びている

それが、理想顧客からの売上なのか。
値引きで取った売上なのか。
無理な要望を受けた売上なのか。
一時的なキャンペーンで取った売上なのか。
継続しない顧客からの売上なのか。

そこによって、意味は違う。


解約率が低い

それが、本当に価値を感じて継続しているのか。
切り替えが面倒で残っているだけなのか。
契約期間が残っているだけなのか。
担当者が変わって見直されていないだけなのか。
不満はあるが、まだ表に出ていないだけなのか。

そこによって、意味は違う。


問い合わせが増えている

それが、関心の高まりなのか。
説明不足なのか。
プロダクトの使いにくさなのか。
導入時の不安なのか。
サポート依存なのか。

そこによって、意味は違う。
数字だけを見ると、良くも悪くも見える。

顧客を見ると、その数字が何を意味しているのかが見えてくる。

数字と顧客を切り離さない。
それが、事業を見るうえでかなり重要になる。

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顧客を想像できる人は、打ち手が具体になる


顧客を想像できる人は、打ち手が具体になる。

「売上を伸ばす」では終わらない

どの顧客の売上を伸ばすのか。
どの不満を解消するのか。
どの予算から取るのか。
どの決裁者を動かすのか。
どの導入不安を消すのか。
どの利用場面で価値を感じてもらうのか。
どの顧客は追わないのか。

ここまで落ちる。


「解約を減らす」でも終わらない

どの顧客が解約しそうなのか。
どのサインが出ているのか。
何に価値を感じなくなったのか。
担当者なのか、決裁者なのか。
運用に乗っていないのか。
期待値がズレていたのか。
そもそも取るべき顧客ではなかったのか。

ここまで見る。

顧客が見えていない打ち手は、抽象的になる。

マーケを強化する。
営業を増やす。
CSを強化する。
プロダクトを改善する。
価格を見直す。
資料を作り直す。

言葉としては正しい。
でも、誰に対して、何を変えるのかが見えない。

顧客を想像できる人は、打ち手が顧客単位まで落ちる。
だから、事業が動く。

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明日使える基準


顧客を見るときは、「顧客の声を聞いているか」だけで終わらせない方がいい。

見るべきは、次の5つ。

1つ目は、顧客の不満

何に困っているのか。
何を面倒だと思っているのか。
何に不安を感じているのか。
何を避けたいのか。
何が解消されれば価値を感じるのか。

表の言葉ではなく、奥にある不満を見る。


2つ目は、顧客の財布

誰が払うのか。
どの予算から出るのか。
何と比較されているのか。
社内でどう説明されるのか。
費用対効果はどう見られるのか。

価値を感じる人と、払う人が同じとは限らない。


3つ目は、買わない理由

なぜ買わないのか。
なぜ決裁されないのか。
なぜ導入が進まないのか。
なぜ優先順位が上がらないのか。
なぜ他社に負けるのか。

買う理由だけではなく、買わない理由を見る。


4つ目は、継続する理由

なぜ使い続けているのか。
どこで価値を感じているのか。
誰が社内で支えているのか。
どの業務に組み込まれているのか。
何がなくなると解約されるのか。

継続理由を見ないと、顧客の本当の価値はわからない。


5つ目は、取るべき顧客かどうか

売上は大きいか。
利益は残るか。
現場は耐えられるか。
継続するか。
プロダクトの方向性と合うか。
取ることで会社が強くなるか。
それとも、売上だけ増えて会社を壊すか。

すべての顧客を取ればいいわけではない。

顧客を見るとは、優しくすることではない

顧客の不満、財布、買わない理由、継続理由、取るべきかどうかを見ることだ。

そこまで見て初めて、事業判断に使える。

プロダクトは、作りたいものではありません。
顧客が何にお金を払い、何で選ぶのかを見ないと、事業はズレます。


その話は、過去にこちらの記事でも書きました。

「〖市場〗④プロダクトは『作りたいもの』ではない」

ビジネスセンスは、社内の都合だけを見ていても磨かれません。

顧客の不満を見て、財布を見て、買わない理由まで想像したときに、判断に使える力になります。

次回は、「失敗」について書きます。

センスは外した判断を見直したときに磨かれる。

このテーマに少しでも引っかかった方は、スキやフォローをしてもらえると嬉しいです。

次回以降も、ビジネスセンスを才能ではなく、実務で磨ける判断基準として分解していきます。

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