数字|数字を見ないセンスは、ただの好みである
数字
前回は、比較について書いた。
センスがある人は、目の前の会社だけを見ていない。
似た会社。
失敗した会社。
逆の選択をした会社。
違う業界なのに、構造が似ている会社。
過去の自社。
そういう比較対象と並べるから、ズレに気づける。
前回の記事はこちら
ただ、比較するときに欠かせないものがある。
数字だ。
どれだけ違和感を拾っても、どれだけ現場の空気を読んでも、数字を見ないまま判断すると危ない。
この施策は良さそう。
この市場は伸びそう。
この人は優秀そう。
この会議は前向きだった。
この顧客は取るべきだと思う。
この事業は可能性がありそう。
そう感じることは悪くない。
でも、数字を見ないセンスは、ただの好みである。
感覚だけの判断は、強そうに見えて危ない
ビジネスの現場では、感覚の強い人が評価されることがある。
市場を見る目がある。
人を見る目がある。
顧客の空気を読むのがうまい。
施策の良し悪しをすぐ判断できる。
会議で方向性を出すのが早い。
たしかに、感覚は大事だ。
すべての情報が揃ってから判断できることは少ない。
経営も事業も、いつも不確実な中で決めなければいけない。
だから、
違和感を拾う力は必要だ。
現場の空気を読む力も必要だ。
顧客の反応を想像する力も必要だ。
でも、それだけでは足りない。
感覚で拾った違和感を、数字で確かめる必要がある。
売上は本当に伸びているのか。
利益は残っているのか。
粗利は落ちていないか。
受注単価は下がっていないか。
解約率は上がっていないか。
営業工数は増えすぎていないか。
入金までの時間は伸びていないか。
現場の対応負荷は増えていないか。
採用数に対して、組織は強くなっているのか。
ここを見ないまま語るセンスは、危うい。
それは判断ではなく、好みになりやすい。
数字は、現場の違和感を裏取りする
数字は冷たいものだと思われることがある。
でも、本来の数字は、現場の違和感を裏取りするためにある。
現場が疲れている
対応件数は増えていないか。
一人あたりの案件数はどうか。
残業時間はどうか。
クレーム対応は増えていないか。
例外対応は増えていないか。
顧客の反応が薄くなっている
商談化率は落ちていないか。
受注率はどうか。
継続率はどうか。
紹介は減っていないか。
アップセル率は変わっていないか。
営業が苦しそうに見える
リードの質はどうか。
商談数と受注数の関係はどうか。
受注単価は下がっていないか。
値引き率は上がっていないか。
失注理由は変わっていないか。
会議が増えている
決定数は増えているのか。
持ち帰り事項は減っているのか。
同じ論点を何度も話していないか。
会議後の実行率はどうか。
期限遅れは増えていないか。
違和感は入口になる。
でも、数字を見ないと、その違和感がどこから来ているのかが見えない。
数字は、感覚を消すためにあるのではない。
感覚を判断に変えるためにある。
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売上が伸びていても、会社が強くなっているとは限らない
数字を見るとき、多くの人は最初に売上を見る。
売上が伸びている。
受注が増えている。
顧客数が増えている。
前年比で伸びている。
月次で伸びている。
それだけを見ると、会社は前に進んでいるように見える。
でも、売上が伸びていることと、会社が強くなっていることは違う。
売上は伸びている。
でも、粗利率は下がっている。
売上は伸びている。
でも、受注単価は下がっている。
売上は伸びている。
でも、値引きが増えている。
売上は伸びている。
でも、納品工数が重くなっている。
売上は伸びている。
でも、入金までの期間が長くなっている。
売上は伸びている。
でも、現場の対応負荷が増え続けている。
売上は伸びている。
でも、解約予備軍が増えている。
こういう会社は、表面上は成長しているように見える。
でも、中では無理をしている。
売上は、会社の状態を示す一つの数字でしかない。
そこだけ見て安心すると危ない。
会社を見る立場なら、売上の奥を見る必要がある
その売上は、利益を残しているのか。
その売上は、キャッシュになっているのか。
その売上は、現場が耐えられる形で取れているのか。
その売上は、継続する顧客から生まれているのか。
その売上は、会社を強くしているのか。
数字を見るとは、売上を見ることではない。
売上の裏側にある構造を見ることだ。
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利益が出ていても、安心できないことがある
売上だけでなく、利益も同じだ。
利益が出ている。
黒字になっている。
PL上は悪くない。
予算も達成している。
前年差でも改善している。
それだけを見ると、健全に見える。
でも、利益が出ているから安心とは限らない。
必要な投資を止めているだけかもしれない。
採用を抑えているだけかもしれない。
現場に無理をさせているだけかもしれない。保守やサポートの負荷を見ていないだけかもしれない。
将来の解約リスクを織り込んでいないだけかもしれない。
売上計上と入金のズレを見ていないだけかもしれない。
PLは大事だ。
でも、PLだけでは会社の状態は見えない。
利益が出ていても、キャッシュが減っていることがある
利益が出ていても、現場が壊れていることがある。
利益が出ていても、顧客満足が落ちていることがある。
利益が出ていても、将来の売上を先食いしていることがある。
数字を見る人は、単独の数字で安心しない。
売上と利益を見る。
利益とキャッシュを見る。
キャッシュと入金サイトを見る。
売上と現場工数を見る。
利益と顧客満足を見る。
採用数と定着率を見る。
会議数と決定数を見る。
数字同士を並べたときに、初めて会社の歪みが見える。
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綺麗な数字ほど疑った方がいい
会社の資料には、綺麗な数字が並ぶことがある。
売上は右肩上がり。
KPIは達成。
予算差異も小さい。
グラフも整っている。
説明もついている。
会議資料としては見やすい。
でも、綺麗な数字ほど疑った方がいい。
なぜなら、数字は整理の仕方で見え方が変わるからだ。
どの期間で切っているのか。
どの顧客を含めているのか。
どの売上を計上しているのか。
解約予備軍は見えているのか。
値引きや追加工数は反映されているのか。
例外対応は数字に入っているのか。
現場の負荷はどこに出ているのか。
数字は嘘をつかないと言われる。
でも、数字の見せ方は簡単に偏る。
都合のいい期間を切る。
見たい指標だけを見る。
悪い兆候を平均値でならす。
一部の大口顧客に依存していることを隠す。
工数や負荷を別の場所に逃がす。
将来のリスクを今の数字に入れない。
そうすると、資料の上では綺麗に見える。
でも、会社の実態は崩れていることがある。
数字を見る力とは、数字を信じる力ではない。
数字の作られ方を疑う力だ。
平均値は、違和感を隠すことがある
数字を見るとき、平均値には注意した方がいい。
平均単価。
平均粗利。
平均解約率。
平均商談数。
平均稼働率。
平均対応時間。
平均は便利だ。
全体を一つの数字で見られる。
会議でも説明しやすい。
資料にも載せやすい。
でも、平均値は違和感を隠すことがある。
一部の大口顧客が数字を押し上げている。
一部の低採算案件が現場を壊している。
特定の営業だけが売っている。
特定の部署だけが疲弊している。
特定の顧客だけ対応工数が重い。
特定の月だけキャンペーンで伸びている。
平均で見ると、問題は見えにくい。
だから、数字を見るときは分ける必要がある。
顧客別に見る。
商品別に見る。
営業担当別に見る。
チャネル別に見る。
新規と既存で見る。
継続顧客と解約顧客で見る。
高単価顧客と低単価顧客で見る。
分けて見ると、違和感が出てくる。
全体では悪くない。
でも、この顧客群は赤字になっている。
売上は伸びている。
でも、このチャネルは受注単価が落ちている。
解約率は低い。
でも、特定の業種だけ解約が増えている。
平均は、会社を安心させることがある。
センスがある人は、平均の裏にある偏りを見る。
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数字は、現場から切り離すと危ない
数字だけを見る人も危ない。
現場の話を聞かずに、数字だけで判断する。
売上が伸びているから問題ない。
KPIを達成しているから順調。
解約率が低いから顧客満足は高い。
採用数が増えているから組織は強くなっている。
会議数が増えているから連携できている。
こういう見方は危ない。
数字は、現場と並べて見なければ意味が変わる。
売上は伸びている。
でも、現場は無理な条件で納品している。
KPIは達成している。
でも、数字合わせの行動が増えている。
解約率は低い。
でも、顧客は不満を溜めているだけかもしれない。
採用数は増えている。
でも、定着していないかもしれない。
会議数は増えている。
でも、決まることは減っているかもしれない。
数字は、現場の実態とつながって初めて意味を持つ。
数字だけでも足りない。
感覚だけでも足りない。
数字と現場を並べて、ズレを見る。
そこに、ビジネスセンスが出る。
数字を見ると、捨てる判断ができる
数字を見る理由は、きれいに管理するためだけではない。
捨てる判断をするためでもある。
この顧客は売上が大きい。
でも、対応工数が重く、利益が残らない。
この施策はリード数が増える。
でも、商談化率が低く、営業を疲弊させている。
この商品は売れている。
でも、サポート負荷が高く、継続率が低い。
この会議は関係者が多い。
でも、決定数が少なく、実行につながっていない。
この採用は人数が増える。
でも、マネジメント体制が追いつかず、組織を壊している。
数字を見ると、やめるべきものが見える。
感覚だけだと、やめる判断は難しい。
売上があるからやめにくい。
関係者がいるからやめにくい。
昔からやっているからやめにくい。
一部の人が評価しているからやめにくい。
止めると責任を問われそうだからやめにくい。
でも、数字を見ると判断できる。
売上はあるが、利益が残らない。
リードは増えるが、受注につながらない。
会議はあるが、決定が生まれない。
採用は進むが、定着しない。
顧客は増えるが、現場が壊れる。
数字は、何を続けるかだけでなく、何を捨てるかを教えてくれる。
経営や事業の判断では、ここが重要になる。
数字は、未来を当てるためではなく、前提を疑うためにある
数字を見ると、未来を正確に予測できると思われることがある。
でも、経営において数字は、未来を当てるためだけにあるわけではない。
前提を疑うためにある。
この売上計画は、本当に今の受注率で届くのか。
この採用計画は、今の定着率で成立するのか。
この利益計画は、今の粗利率で残るのか。
この成長率は、現場工数を見ても耐えられるのか。
この市場規模は、自社が実際に取れる範囲なのか。
このKPIは、顧客価値ではなく数字合わせを生んでいないか。
数字は、計画を正当化するために使うものではない。
計画の前提を疑うために使う。
事業がうまくいかない会社ほど、数字を飾るために使う。
事業を動かせる会社ほど、数字を疑うために使う。
この差は大きい。
数字を見て安心するのではない。
数字を見て、どの前提がズレているのかを探す。
その姿勢がなければ、数字を見ていてもセンスは磨かれない。
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明日使える基準
数字を見るときは、増えたか減ったかだけで判断しない方がいい。
見るべきは、次の5つ。
1つ目は、売上の質
売上は伸びているのか。
その売上は、利益を残しているのか。
値引きで取っていないか。
無理な条件で受注していないか。
継続する顧客から生まれているのか。
現場が耐えられる売上なのか。
売上は、伸び方を見る。
2つ目は、利益とキャッシュのズレ
利益は出ているのか。
キャッシュは残っているのか。
入金までの時間は長くなっていないか。
運転資金は膨らんでいないか。
将来の負担を今見落としていないか。
PLだけで安心しない。
3つ目は、平均の裏側
顧客別に見る。
商品別に見る。
チャネル別に見る。
担当者別に見る。
新規と既存で分ける。
高単価と低単価で分ける。
全体では見えない歪みを見る。
4つ目は、数字と現場のズレ
数字は達成しているのに、現場が疲れていないか。
KPIは良いのに、顧客の反応が薄くなっていないか。
採用数は増えているのに、組織が強くなっていないか。
会議数は増えているのに、決定数は増えているか。
数字と空気を並べて見る。
5つ目は、やめる判断
この顧客は、本当に追うべきか。
この施策は、本当に続けるべきか。
この会議は、本当に必要か。
この商品は、本当に残すべきか。
この売上は、本当に取りに行くべきか。
数字は、続ける理由だけでなく、やめる理由も教えてくれる。
数字を見る力とは、数字を眺める力ではない。
数字の裏にある歪みを見る力だ。
感覚を検証する力だ。
前提を疑う力だ。
捨てる判断を支える力だ。
数字を見ないセンスは、ただの好みである。
決算書が綺麗でも、会社が健全とは限りません。
数字の表面ではなく、裏側にある歪みを見る話は、過去にこちらの記事でも書きました。
「決算書が綺麗な会社ほど危ない理由」
ビジネスセンスは、感覚だけでは磨かれません。
数字を見て、現場と照らし、前提を疑ったときに、判断に使える力になります。
次回は、「顧客」について書きます。
センスは顧客の財布と不満を想像する力で磨かれる。
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次回以降も、ビジネスセンスを才能ではなく、実務で磨ける判断基準として分解していきます。
