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比較|センスがある人は、いつも別のケースと比べている

比較


前回は、「なぜ」について書いた。

前回の記事はこちら

伸びる人は、起きた事実で終わらせない

売上が伸びた。
解約が増えた。
会議が長引いた。
採用が進まなかった。
現場が疲弊している。

そこで終わらせずに、なぜそうなったのかを考える。
ただ、ここでもう一つ大事なことがある。

「なぜ」を深く考えるには、比較対象がいる

目の前の会社だけを見ていても、異常は異常に見えないことがある。
自社の中だけで考えていると、ズレが日常になってしまうことがある。
同じ業界だけを見ていると、その業界の常識に飲まれることがある。

センスがある人は、いつも別のケースと比べている。

似た会社。
失敗した会社。
伸びた会社。
逆の選択をした会社。
違う業界なのに、構造が似ている会社。

そういう比較対象があるから、目の前の違和感を見逃さない。


自社だけを見ていると、異常が普通になる


会社の中にいると、異常が普通になる。

会議が多い。
資料が多い。
決まらない。
責任が曖昧。
現場が疲れている。
顧客の反応が薄い。

売上は伸びているのに利益が残らない。

最初は違和感がある。
でも、毎日その中にいると、だんだん慣れてしまう。

この会社はこういうもの。
この業界はこういうもの。
このフェーズなら仕方ない。
ベンチャーだから混乱する。
成長中だから現場が忙しい。
人が足りないから会議が増える。

そうやって、異常に名前をつけて正当化してしまう。
でも、別の会社と比べると見え方が変わる。

同じくらいの規模でも、会議が少ない会社がある。
同じ成長フェーズでも、責任が明確な会社がある。
同じ市場でも、利益率を保ちながら伸びている会社がある。
同じ採用難でも、マネージャーが育っている会社がある。
同じ人手不足でも、現場が壊れていない会社がある。

比較対象があると、「仕方ない」と思っていたものが、ただの設計ミスに見えてくる。

自社だけを見ていると、普通に見える。
外と比べると、ズレていることに気づく。

この差は大きい。

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センスがある人は、目の前の出来事を単体で見ない


センスがある人は、目の前の出来事を単体で見ない。

売上が伸びた。
それだけを見ない。

どの会社の伸び方に似ているのか。
その会社は、その後どうなったのか。
利益は残ったのか。
現場は耐えられたのか。
顧客は継続したのか。
キャッシュは残ったのか。

そこまで見る。

会議が増えた。
それだけを見ない。

似たように会議が増えた会社は、なぜ増えたのか。
その後、意思決定は速くなったのか。
それとも、責任が曖昧になったのか。
会議は何を決めていたのか。
誰が決める構造だったのか。

そこまで見る。

優秀な人を採った。
それだけを見ない。

似たように外から優秀な人を入れた会社は、なぜ崩れたのか。
役割は明確だったのか。
権限は渡されていたのか。
既存メンバーとの期待値は揃っていたのか。評価基準は変わっていたのか。

そこまで見る。

目の前の出来事は、単体では意味を持ちにくい。
それらと比べたときに、初めて意味が見えてくる。


比較対象が少ないと、判断は好みになる

比較対象が少ない人は、判断が好みになりやすい。

この市場は良さそう。
この施策は伸びそう。
この人は優秀そう。
この資料はきれい。
この会議は前向きだった。
この数字は悪くない。

もちろん、最初に感覚を持つことは悪くない。
でも、比較対象がない感覚は危ない。

過去に似た市場の失敗を見ていなければ、大きさだけで判断してしまう。
似た組織崩壊を見ていなければ、沈黙を安定だと勘違いする。
似た売上成長の歪みを見ていなければ、売上が伸びているだけで安心してしまう。
似た採用失敗を見ていなければ、優秀な人を入れれば変わると思ってしまう。
似た会議の空転を見ていなければ、会議が増えることを連携強化だと思ってしまう。

比較対象がないと、判断の基準が自分の中にしかない。

だから、
好みに寄る。
気分に寄る。
声の大きい人に寄る。
直近の成功体験に寄る。
都合のいい数字に寄る。


センスがある人は、感覚だけで判断しない

自分の感覚を、別のケースに当てて確認する。

この見方は、
過去のどのケースに近いのか。
似た会社はどうなったのか。
逆の選択をした会社はどうなったのか。
うまくいった会社と、止まった会社の違いは何だったのか。

そうやって、感覚を判断基準に変えていく。

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比較は、成功事例を見ることではない


比較というと、成功事例を見ることだと思われやすい。

伸びている会社を見る。
有名企業の施策を見る。
成功した経営者の話を読む。
ベストプラクティスを集める。

もちろん、それも必要だ。
でも、成功事例だけを見ていると危ない。

成功事例は、表面がきれいに見えやすい。

ターゲットを絞ったから伸びた。
営業組織を分業したから伸びた。
CSを強化したから継続率が上がった。
採用を増やしたから成長した。
値上げしたから利益率が改善した。

そう見える。
でも、本当に見るべきなのは、施策そのものではない。

なぜ、その会社では成立したのか。
その前に何を捨てていたのか。
どんな顧客基盤があったのか。
どんな組織体制があったのか。
資金にどれくらい余裕があったのか。
誰が実行していたのか。
どの順番で進めたのか。

ここを見ないと、成功事例はただの真似になる。


比較で本当に価値があるのは、成功例だけではない。

失敗例も見る。
途中で止まった例も見る。
似た条件なのに結果が分かれた例を見る。
同じ打ち手を入れて、うまくいった会社と壊れた会社を比べる。

その差分に、判断基準がある。

似た会社だけを見ると、視野が狭くなる

比較対象は、同業だけでなくていい。

むしろ、同業だけを見ていると視野が狭くなることがある。

同じ業界の常識。
同じ市場の慣習。
同じビジネスモデルの成功パターン。
同じフェーズの悩み。

それらを見ることは大事だ。
ただ、同業だけを見ていると、「その業界では普通」と思ってしまう。

営業が属人的なのは普通。
会議が多いのは普通。
解約理由が曖昧なのは普通。
プロダクト開発が遅いのは普通。
管理部門が後回しなのは普通。
売上を優先して利益が残らないのは普通。

そうやって、業界の常識に飲まれる。
でも、構造が似ている別業界を見ると、違う見方ができる。

顧客獲得の構造が似ている会社。
継続課金の構造が似ている会社。
労働集約になりやすい会社。
営業と現場の接続が重い会社。
カスタマーサポート負荷が高い会社。
専門人材に依存している会社。
オペレーションが収益性を決める会社。

業界は違っても、構造が似ていれば学べる。
センスがある人は、業界名だけで見ない。

構造で比べている。

だから、違う業界の話からでも、自社の違和感を拾える。

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比較は、時間軸を広げることでもある


比較は、会社同士だけではない。
時間軸でも比べる。

今の数字と、過去の数字。
今の会議と、半年前の会議。
今の顧客反応と、導入初期の顧客反応。
今の現場の空気と、採用が進む前の空気。
今の利益率と、売上が伸び始めた頃の利益率。

同じ会社でも、時間で比べるとズレが見える。

売上は伸びている。
でも、半年前より受注単価が下がっている。

顧客数は増えている。
でも、紹介は減っている。

会議は増えている。
でも、決定数は増えていない。

採用は進んでいる。
でも、責任者は増えていない。

KPIは整っている。
でも、打ち手の修正は遅くなっている。

今だけを見ると、順調に見える。
過去と比べると、歪みが見える。


会社を見る立場になると、現在地だけを見てはいけない

この会社は、
どこから来て、どこに向かっているのか。
何が良くなり、何が悪くなっているのか。
どの数字が伸び、どの負荷が増えているのか。
どの会議が増え、どの意思決定が遅くなっているのか。

時間軸で比べると、成長と歪みを分けて見られる。

ビジネスセンスは、今を切り取る力ではない。
変化の向きを見る力でもある。

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キャッシュを見ると、会社の見え方が変わる


比較の中でも、特に大事なのが数字の見方だ。

売上だけを見る会社と、キャッシュまで見る会社では、見えている景色が違う。

売上は伸びている。
PL上は悪くない。
受注も増えている。
採用も進めている。
投資もしている。

表面だけを見ると、前に進んでいる会社に見える。
でも、キャッシュを見ると違うことがある。

入金までの時間が長い。
前受けではなく後払いが多い。
売上に対して工数が重い。
粗利が残らない。
解約が遅れて出る。
採用費が先に出る。
開発投資が重い。
運転資金が膨らんでいる。

売上は伸びているのに、会社に残る時間は短くなっている。

ここを見ないと、成長している会社に見える。
でも、キャッシュまで見ると、危ない会社に見える。

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数字の比較は、単に増減を見ることではない。


PLとキャッシュを比べる。
売上と粗利を比べる。
受注と入金を比べる。
顧客数と対応工数を比べる。
採用数とマネジメント体制を比べる。

数字を並べて見ると、会社の無理が見えてくる。

センスがある人は、一つの数字で安心しない。

数字同士を比べる。
時間軸で比べる。
現場の空気と比べる。
過去の失敗と比べる。

その比較の中で、違和感を拾っている。


比較対象は、意識して集めないと増えない

比較対象は、勝手には増えない。
ただ仕事をしているだけでも、経験は増える。

でも、それが判断基準になるとは限らない。

経験を経験のまま流すと、ただ忙しかった記憶で終わる。
大事なのは、経験を比較対象として残すことだ。

この会社は、なぜ伸びたのか。
この事業は、なぜ止まったのか。
この組織は、なぜ崩れたのか。
この会議は、なぜ機能しなかったのか。
この採用は、なぜ失敗したのか。
この顧客は、なぜ離れたのか。
この数字は、なぜ危なかったのか。

そうやって、自分の中にケースとして残す。

ただ、「うまくいった」「失敗した」で終わらせない。
どこに特徴があったのかを残す。

すると、次に似た状況を見たときに使える。
こうやって、経験がセンスに変わる。


比較できる人は、早く違和感を拾える

比較対象が増えると、違和感を拾う速度が上がる。
なぜなら、目の前の現象をゼロから考えなくてよくなるからだ。

この会議の増え方は、前に見た空転のパターンに近い。
この売上の伸び方は、利益が残らなかった会社に似ている。
この採用の進め方は、責任設計で崩れた組織に似ている。
この市場の見方は、TAMだけを見て負けた会社に似ている。
この顧客対応の増え方は、労働集約に寄っていった会社に似ている。

そうやって、早い段階で違和感を持てる。
もちろん、過去とまったく同じ会社はない。

だから、比較は答えを出すために使うものではない。
問いを持つために使う。

これは本当に同じ構造なのか。
どこが似ていて、どこが違うのか。
前回と同じ失敗が起きる可能性はあるのか。
今回は何を先に見ればいいのか。
どの数字を確認すればいいのか。
誰に聞けば現場の実態がわかるのか。

比較対象があるから、問いが生まれる。
問いがあるから、違和感を拾える。
違和感を拾えるから、早く手を打てる。

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明日使える基準


比較するときは、ただ似ている会社を探さない方がいい。

見るべきは、次の5つ。

1つ目は、似た会社

同じ規模。
同じ市場。
同じ成長フェーズ。
同じ組織課題。
同じ収益モデル。

似た会社を見ると、自社の状態を客観視しやすくなる。


2つ目は、失敗した会社

なぜ止まったのか。
どこで判断を間違えたのか。
どの前兆を見落としたのか。
どの数字を都合よく見ていたのか。
どの組織課題を放置したのか。

失敗例は、違和感を拾う教材になる。


3つ目は、逆の選択をした会社

ターゲットを広げた会社と、絞った会社。
採用を増やした会社と、先に責任設計をした会社。
売上を追った会社と、利益率を守った会社。
会議を増やした会社と、決める人を明確にした会社。

逆の選択を見ると、自分たちの判断の前提が見える。


4つ目は、違う業界で構造が似ている会社

顧客獲得の構造。
継続率の構造。
提供工数の構造。
営業と現場の接続。
キャッシュの残り時間。
人材依存の強さ。

業界が違っても、構造が似ていれば学べる。


5つ目は、過去の自社

半年前と比べて、何が変わったのか。
売上、粗利、キャッシュ、会議、顧客反応、現場の空気。

何が良くなり、何が悪くなったのか。
伸びたものの裏で、何が重くなったのか。

過去の自社と比べると、成長と歪みを分けて見られる。

比較は、答えを当てるためにするものではない。

違和感を拾うためにする。
問いを持つためにする。
判断の前提を疑うためにする。
次の打ち手を間違えないためにする。

センスがある人は、目の前の会社だけを見ていない。
いつも別のケースと比べている。

会社を見る順番が変わると、見えるものも変わります。

PLより先にキャッシュを見るようになった理由は、過去にこちらの記事でも書きました。

「PLより先にキャッシュを見る。20年投資をしてきて変わった会社の見方」

ビジネスセンスは、目の前の出来事だけを見ていても磨かれません。

別のケースと比べ、過去と比べ、数字と現場を比べたときに、ズレが見えてきます。

次回は、「数字」について書きます。

数字を見ないセンスは、ただの好みである。

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次回以降も、ビジネスセンスを才能ではなく、実務で磨ける判断基準として分解していきます。

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