真空管ギターアンプを作ろう~⑪キャビネット製作 その2編
1 前回までのおさらい
どうにかアンプ本体の製作を終え、ようやくキャビネットの素材を発注して、いよいよ…と思ったら、試奏により顕在化してしまった爆音問題に対処するという脇道に迷い込んでしまったこのプロジェクト。アッテネーターの試作は無事成功したが、本編は一向に進まない…
早いもので、もう11回目の記事である。イギリスの連ドラのような短期決戦は難しくなってきてしまった。が、良く考えたら、そこまで英国紳士に憧れているわけでもない。私が憧れているのはどちらかというとイタリア紳士だった。「イタリア」なのに「紳士」という撞着語法が素晴らしいではないか(イタリアに対する偏見があるように思われるかもしれないが気のせい。イタリアのスーツ、靴、車大好き!)。
こういった製作記事は、作業を先に進めたうえで、厳選した写真たちと推敲に推敲を重ね、無駄を徹底的に省いた研ぎ澄まされた文章で記事をまとめるべきなのだろう。そうすれば、記事の本数を減らすことができるだろうし、読んでいただいている方の貴重なお時間を奪うこともなくなるだろう。しかし、「アンプを作ろう。作業をした。ちょっといろいろあったけど完成した。」ではつまらないではないか(いや、それは推敲しすぎなだけだと思うが…)。別に自分の記事がバズってほしいわけでもないし。
そもそも、隙あらばこんなことを書いているから記事が無駄に長くなるのだ、ということに気がついたので(今頃?)、そろそろ本題である。
2 材料到着!
キャビネットの素材は、無垢のパイン材をAmaz〇nさんに発注済みである。
最近のAmaz〇nさんは、到着予定日を遅めにアナウンスしているようで(遅延苦情対策?!)、到着予定より2日も早く到着した。
ホームセンターで普通に売っている集成材は嫌だ、ということでわざわざ調達した無垢板。やっぱり集成材じゃ駄目だよね、とウキウキしながら綺麗な木目を眺めていると…あれ?これ、4ピースじゃないか…
たしかに、商品説明欄に「貼り合わせなしの単板」とまでは記載されていなかった。まあ、ぱっと見は単板に見えるし…

3 ケガキ
無垢単板ではなかったこと、というよりも、購入時に値段ばかりに気を取られて見極めが不十分であった自分にがっかりしてテンションがちょっと下がったが…気を取り直して作業を開始する。
部材を切り出してからスピーカーユニットが収まらないことが判明する、みたいイベントがあればレポートもさらに盛り上がるだろうが、そのレベルのやらかしはレポート自体の完成に影響を及ぼしかねない。入念な検討を経て作成した設計図を参照し、さらにアンプ本体やスピーカーユニットのサイズに切り出した工作用紙(お前はDais〇の工作用紙とスポンサー契約でもしているのか?)を実際にあてがい、ちゃんと収まるかどうか確認しながらケガキ作業を行う。

「ええ、そうですが何か問題でも?」
4 切断作業
ケガキ作業が終わったら、今度は切断作業である。
電動丸鋸でもあればよいのだが、そんな気の利いた道具はない。よそで買った木材を片手にホームセンターに行ってカットだけお願いするなんて厚かましいこともできない(し、そんなサービスはないんじゃないかな?)。
したがって、手鋸でせっせと切り出していく。
今回使用した手鋸はピラニア鋸Ⅱである。刃渡りが短いため作業時間はかかるが、アサリ幅が小さいのでケガキ線からズレにくいという利点がある。

キャビネットの外側の4枚を切り出すのに要した時間は小1時間くらいである。

部材が切り出せたら、やはり箱の形にしてみたくなるのが人情である。これから板の接合部の4辺にフィンガージョイント加工を施していくので、実際には一回り(板一枚分)小さくなるのであるが、この段階でちゃんと箱として自立する=各部材の寸法が合っていることが確認できたので一安心である。
5 フィンガージョイント加工
⑴ いつもの紙工作
いよいよ、フィンガージョイント加工である。
ジョイント幅が太すぎるとかっこ悪いが、細くすればするほど作業工程が多くなり、製作難易度が上がってしまう。お約束の工作用紙でのペーパークラフトでの試作を重ね、25㎜幅に決定した。
なお、ギターアンプ=アメリカ=ポンド・ヤード法という連想から「どうせなら1インチのほうがいいんじゃない?」という悪魔の囁きが聞こえたような気もするが、1インチはセンチメートル換算で25.4㎜、この「0.4㎜」を正確にケガいてカットする自信がないので気のせいにする。

⑵ 1か所目!
失敗して出来が悪くなったとしても目立たないように、キャビネットの下側(底板と側面①)から取り掛かる。
ネットで色々検索してみたが、どのような作業工程が最適なのかまではわからない。ひとまず手を動かし始めることにしよう(世間ではこれを見切り発車というのではないだろうか…)。
フィンガージョイントで組み合わされる2枚の板を正確に重ね合わせてC型クランプ(Dais〇で1個110円)でしっかり固定し、2枚一緒にカットラインをケガく。これで、ケガキ線レベルでは2枚の板には全くズレがないということになる。
いきなりノコギリを当てるとズレる危険性があるので、ケガキ線を何度かカッターで掘るようにしてノコギリのガイドラインを作る。切り取る箇所を絶対に間違えないよう、凸には〇、凹には✖の印をしっかりつけておく。

ここからは、一枚ずつ加工をしていく。
ジョイント部分を切り込み過ぎないよう、カットする箇所に黄色いマスキングテープを張ってみる。パイン材の板厚18㎜に対して、このマスキングテープの幅も18㎜なので、ちょうどピッタリである。

縦に切り込みを入れ終わったら、今度は凸凹の凹にあたる部分の切り取りである。そして、もう一枚の板も縦の切込みを入れておく。一番端っこの部分は、普通にノコギリでカットすればよい。

問題は、ノコギリが入らない凹の部分である。カットすべきラインの内側にドリルでミシン目のように穴を開け、ミシン目を糸鋸で繋いでいく方法をとった。凹の底面は、ドリルの跡が残ってガタガタである。

ガタガタになっている凹の底面は、ノミや金属やすり、サンドペーパーを駆使して平滑に仕上げていく。
黄色いマスキングテープの断面に沿わせて黒いマスキングテープを貼り付け、どこまで削るかのガイドラインとした。ここは、縦に切り込みを入れる最初の段階からこの黒いマスキングテープを張っておいた方が良さそうである。また、切り込み過ぎ、削り過ぎの防止の実効性を上げるなら、アルミテープなど、より強度が高いものを使った方がよいかもしれない。
凸凹をすべて切り出し、サンドペーパー(#180)レベルの仕上げまで終わらせるのにトータルで1時間程度であった。
続いてもう一枚の作業に入ろうとしたところ、失敗に気が付いた。
既に切っていた縦の切込みが、加工済みの板とズレているのである。丁寧に作業をしていたつもりであったが、少なくとも3箇所は1mm程度のズレである。ジョイントの成形が終わった板をガイドに2枚目をケガいてカットした方がよかったのだろう。
金融機関からの与信にせよ、その軽薄な人格にせよ、いかなる意味においても信用の置けない自分の書いたケガキ線をどうして信用してしまったのか…
また、凹部分の切り出しについても、1枚目でやったようなドリルでミシン目を作る方法よりも、凹の隅っこに1カ所だけ糸鋸の端が通るだけの穴を開けて、糸鋸で慎重にギリギリのラインをカットしていった方がきれいに仕上がることがわかった。
以上のように、作業の進め方にいくつかの改善点が見つかった(切断・切削作業のガイドラインとしてのマスキングテープの活用の仕方、ケガキ・切断作業の順序など)ので、次の作業はこれらの考察を生かしていきたい。というか、いきなり本番の部材に取り掛かる前に端材で試してみるべきだったのではないだろうか…厚紙をハサミで切るのとは違うのだよ…
ひとまず、凸凹と凹凸の切り出しが終わったので組み合わせてみると…
途中まではよいのだが、どこかが引っかかっているようで、それ以上奥まで入っていかない。やはり信用の置けない相手としっかり握手することは難しいということなのだろう。干渉している箇所がどこなのか、どこを削っていけばよいのかを慎重に見定めながら、少しずつ削っては組み合わせる作業を何回か繰り返し、ついに2枚の板がガッチリと握手した!

合意の握手に至るには細かい擦り合わせが必要だ、というのはフィンガージョイントも国際政治も一緒である。本記事の作成時においては、諸国に喧嘩を売ってはうまくいかなければ放り出すという所業を繰り返しているどこかの国の大統領にも、一度フィンガージョイント加工に取り組んでみることをお勧めしたいところである。などとふざけたことを考えながらジョイント部分を見てみると、いくつか隙間が目立つ箇所がある。いくらキャビネットの下側になる箇所であるからといって、このまま放置しておくのは「大人の鑑賞に堪える」レベルにはならない。他の箇所の加工を終えて組み立てるまでにこの箇所のフォロー方法を考えることにしよう。
⑶ 2カ所目~4カ所目!
2か所目はやはりキャビネットの下側、底板の反対側と側面②のコンビである。1カ所目の経験を活かし、まずは底板を先に加工する。
アンプの横幅とキャビネット内幅のクリアランスは極小に設定しているので、凸凹を深くし過ぎて内幅が狭くなるとアンプが収まらないという面白い事態が発生する。そのため、アンプが間違いなく収まる内幅が確保されていることを確認しながら底板をケガき、ガイドラインとなるマスキングテープをしっかり張り付けてから凹部分を切断していく。
凹の底面のカットは糸鋸を慎重に使うことで、カット後の切削・研磨を最小限に済ませることができた。だんだん作業に慣れてきたからだろうか、ケガキも含めた作業時間は1時間弱である。人の皮を被った現場猫として数々のうっかりミスを犯してきた経験上、作業にも慣れてきて比較的スピーディに作業ができるようになり、作業の終わりが見え始めたころに大きなミスを犯すことが多い(あと数本のボルトを締めれば終わるところでトルクレンチの設定確認を怠ってボルトを捻じきったり、もう乾いただろうと思ってクリア塗装に指紋がべったりとか…)。
行うべき作業の半分を超えたこのあたりからが、むしろ山場というべきである。

続いて側板②の登場である。ここは、底板とのフィンガージョイントをきれいに組み合わせるとともに、既に加工済みの側板①と高さをしっかり合わせる必要がある(ここがズレると、キャビネットのトップが傾き、アンプも収まらない)。側板①とも照合しながら、凸凹カットが完了した底板を基準にガイドラインを書き込み、ジョイント部分の隙間を詰めるためにケガキ線のどちら寄りに切ればいいのか、と頭を混乱させながら、切断作業を行う。

とにかくジョイント部分の隙間を狭くしようという考えで切断作業を行ったため、2枚の板の凸凹は簡単には嚙み合わず、#150,#180のサンドペーパーで削っては組み合わせ、引っ掛かりのある部分にペンで印をつけては印が消えるまで削ってはまた組み合わせ、といういつ終わるとも知れない擦り合わせ作業を短めの映画一本分くらい続けた結果…

一つ目と見比べるとなかなか良い出来である。まだジョイント部分が面一になっておらず、あと0.5㎜~1㎜くらいそれぞれの凹の底面を切削する必要がありそうだが…
一発でカチッとジョイントできるような正確なカットができるならば良いが、そんなことができるわけがない。そうであれば、凸凹は「切り出す」のではなく、「十分な削り代を残して切断+やすりやサンドペーパーでの切削・研磨で形作る」という意識で臨んだ方がよいということだろう。手作業での研磨はどうしても時間がかかってしまうが、正確なカットができる技量がないのだから仕方がない。残りの作業は、このような意識で、Amaz〇n Prime Videoを見ていたらフィンガージョイントが仕上がってきたぞ、くらいの感覚でやっていくことにする。ここで英会話とかビジネス系のオーディオブックといった発想にならないのがまったくもって…
3カ所目ともなれば、かなり作業に余裕が出てくる。どんどん切り込みを入れて、ドリルで下穴を開けて…あ!!

おわかりいただけるだろうか?調子に乗って作業をしていたら、凸部分にまで下穴を開けてしまった…予定調和のごときミスの発生である。
さて、どうしたものか…完璧主義者たるもの、この小さなミスは画竜点睛を欠くものとして、すでに一辺の凸凹加工を終えたこの一枚を潔く諦め、新たにもう一枚切り出すところから始めるのであろう、などと想像しつつ、姑息な弥縫策を思いめぐらせ…

幸いにも、最近コンビニでもらえる使い捨ての箸は「割り」箸ではなく丸く加工されている。これをヤスリで少しばかり整えて、木工用ボンドを塗って叩き込んでカットすれば…

正面から見ればはっきりわかってしまうのであるが、写真の角度次第では、もはやどこを埋めたのかわからないくらいのスーパーフォローである。
これ以上ミスを重ねたくはない、のと意外と鋸やヤスリの音がうるさいようなので、夜間の作業は諦め、日を改めて4カ所目の作業を行う。
最後なのでとにかく丁寧な作業を心がける。1枚目の凸凹を切り出し、これを2枚目のガイドにするというやり方自体はこれまでと同様であるが、一度に全てケガくのではなく、端っこから1つずつカットしてはズレの有無を確認したうえで次の切断ラインをケガいてカットするという方法でやってみたところ、一番出来が良くなった。少し力を込めて叩くと綺麗に嵌り込むという理想的な状態である。ほかの3ヵ所も同程度の仕上がりであるべきなのだが…

⑷ ひとまず加工完了
休日に、家族がお買い物に行っている間や子どもたちが宿題をやるのを見張りながらの作業であったが、作業時間のトータルは8時間程度だった。
アンプを支えるステーを接着し、フィンガージョイント加工を終えたパネルを仮組みしてみると…


ジョイント部分のフィッテイングをもう少し詰めたいが、全体的には悪くないんじゃないだろうか。
この先の作業予定は…
①嵌り具合が浅いジョイント部分のフィッテイングを詰める
②パネルを接着し、補強部材を装着
③キャビネットの塗装
④フロントパネル等美観に関わる部分の作成
⑤バッフル板の加工、スピーカーユニットの装着
⑥バッフル板の装着
⑦組み上げ
といった流れである。
本プロジェクトの犯行動機きっかけである電動サンダーの出番は、上記の③あたり。戦隊モノや犯罪組織モノならば、電動サンダーは完全に悪役の大ボスの役回り…いいのか、そんな扱いで…
次回はキャビネット本体の完成までたどり着きたいところである。
次回、真空管ギターアンプを作ろう~⑫電動サンダー登場!!編
をお楽しみに~
