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真空管ギターアンプを作ろう~⑧アンプ製作編

1 前回までのあらすじなど

 ひたすら真空管ギターアンプを制作するための準備作業をのんびりと続け、ようやく部品発注までたどり着いたものの、既に8話目を迎える「真空管ギターアンプを作ろう」。
 いやいや、職人の世界では「段取り八分、仕事二分」と言われているように、入念な下準備こそが仕事やその出来=完成品を左右するものなのだ。問題なのは、私がそもそも職人などではないばかりか、なんなら現場猫が人の皮を被って歩いているような人間である、ということなのだが…

 さて、今回は、ついに実作業が開始される(普通の人はこのあたりから記事にするのでは?!)。
 準備段階ですら全7回を数えるほどの牛歩っぷりである(同じ牛でもLamb〇rghiniなら爆速なんだが…)これが実作業のレポートともなれば、これまで以上にチンタラ丁寧な説明が必須となる。その結果、本記事は堂々1万5,000字に及んでいる…どうか気長にお付き合いいただきたい…

2 作業全体の流れ

 最初に行うべき作業は、すべての作業の土台となるべきシャシーの加工である。シャシーが出来上がれば電子部品の組み込みを行うことができるようになる。
 ただ、一気に組み上げてしまってから「音が出ない…」となってしまったら、そのトラブルシューティングが難航を極めるであろうこと(そしてそのままプロジェクトごと放置されてしまうこと…)は容易に想像がつくところである。そのような事態を避けるため、組上げ作業を段階的に行い、途中で動作確認をする作戦を取りたい。
 イメージとしては、電源回路と音響回路に分けて、まず電源回路を組み上げて動作確認を行う。そして、問題がないことを確認したうえで音響回路=残りの作業を行う、という流れである。

3 シャシー加工

⑴ 必要な工具等

 シャシーはアルミの2mm厚である。これはどう考えても電動工具が必要である。
 もちろん、電動ドリルやリューターの一つや二つ持っているのが紳士淑女の嗜みというもの、そのあたりにぬかりはない。問題は、どこに仕舞い込んでしまったのか、すぐには見つからないことである…

あったよ!!

 電動ドリルは、相当前から使っているBlack and Deckerの電動ドライバードリル。あまりパワーがないので重作業向きではないのだが、今回のようなアルミ板相手ならば十分である。これがMakitaの充電式電ドリであったならばポール・ギルバートばりの電ドリ奏法を披露するところなのだが、非常に残念である…
 リューターは、我が家の伝家の宝刀Dremel4000!導入コストはそれなりのものであったが、自動車部品の錆落としからプラモデル製作までと守備範囲の広い便利な逸品である。

 今回のシャシー加工では、合計で3つの約18㎜径の丸穴(真空管ソケット2つ、パイロットランプ1つ)を開けなければならない。
 これが1つくらいならば、外周の内側に沿わせるようにチマチマと小さな穴をドリルで開けてミシン目のようにして、最終的にリューターで断面を整えればいい。しかし3つともなると…最初こそ慎重な作業を行うとしても、2個目や3個目では慣れからくる凡ミスや雑な仕上がりに対する妥協が生じることは目に見えている(そこまでの自己分析ができているなら、そのお粗末な性格を矯正したほうがよいようにも思われるが、それは次の機会に譲りたい)。
 そこで…

てれれ てってれ~! 「丸い大穴空けれる君~」

 どら〇モンの秘密道具のように登場したこちらが、今回投入した新兵器、TRUSCO TSLホールカッター18mmである。
 以上の道具たちとともに、いざシャシー加工のスタートである。

⑵ 作業内容 

① 型紙作成、シャシーへの印付け
  まずは加工箇所の型紙を作成する。見た目のバランスを考えつつ、装着する部品同士の干渉に気を付けながら、加工する箇所を記入していく。
 作成した型紙を直接テープ糊でシャシーに貼り付けることができるように、型紙には方眼紙を使用すると便利である。方眼紙は、DAIS〇のA4ルーズリーフが入手しやすくお勧めである。まあ、この手のものは、まずはDAIS〇などの百均、どうしてもそこで見つからなければ文房具屋さんやホームセンター、という流れでの入手が常態化しているのであるが… 

フェイスパネルの型紙。これをシャシーに直接貼り付ける。

 真空管ソケットとトランスを取り付けるトップパネルは、シャシーの内側にマスキングテープを貼り付けて、テープに直接書き込む方法で行った。
 真空管ソケットとACインレットは、メインの開口部と固定用のねじ穴の相対関係がズレてしまうと取り付けができなくなってしまう。そこで、工作用紙で型紙を作成して、開口部の寸法をしっかり確認し、この型紙をテンプレート代わりとしてシャシーに印を付けるようにした。

ACインレットと真空管ソケットの型紙
シャシー裏側からの図
これは綺麗に開口するのが大変そうだ…

② MR.BIGの物真似ドリリング!!
シャシーへの型紙の貼り付けや印付けが終わったら、いよいよ電動ドリルの出番である。もちろん、先端にピックを装着したりしている暇はない。
 細目(2.5㎜程度)ドリルでまず下穴を開けてから、ステップドリルなどを活用してそれぞれ必要な径まで拡大作業を行う。
 ACインレットの四角い穴と真空管ソケットの丸穴の開口は、シャシー加工の山場ともいえるので、少し詳しく紹介しよう。
【ACインレット】
 ACインレットを取り付けるためにはシャシーを長方形に開口する必要がある。4隅は直角でなくても問題がないため、まず4つの角ギリギリに3mmのドリルで穴を開ける。リューターにDais〇で購入した回転砥石を装着し、ドリルで開けた穴と穴とを結ぶように直線部分をカットする。

ぎゅいーん!!

 Dais〇の回転砥石は適度な切れ味でコントロールがしやすく(逆に言うと思ったより切れないというか削れないというか…)、思ったよりは簡単にカット作業が完了した。ACインレットがちゃんと装着できるか現物合わせを行い、リュータービットで少し開口部を整えれば、無事完成である。開口部をわざわざお見せするほどの仕上がりではないが、少なくともACインレットが美しく装着できたので良しとしよう。

右下にちょっとだけ削り傷が…

【真空管ソケットなど】
 これさえあれば、どんなド素人でも18mm系の丸穴が超簡単に開き、その仕上がりもプロ並みだと言う(いや、誰もそこまで言っていないと思うよ…)ホールカッター、その実力やいかに?
 ホールカッターそれ自体にも中心にドリル刃が付いている。だが、ズレが生じるリスクは少しでも低減しておきたいので、中心の下穴は普通のドリルで開口しておく。そして、いよいよホールカッターの出番である。
 ホールカッターの外周部の刃はかなり厚く、「切る」というよりは、かなり太い幅で「抉り取る」といった風情で、どんどん削りカスが発生する。刃と対象物の摩擦が大きいようなので、時々切削油(今回はWAKO'Sのラスペネを使用)をスプレーしてあげたほうがよさそうである。
 また、真上から垂直に力をかけるという通常のドリルの使い方ではなく、軸を中心に外周方向にドリルを回すように動かしたほうが切削効率が上がる気がした。

ゴリゴリ削られていくシャシー…

 大きなバリなどが発生することもなく、きれいな丸穴が開口できた。開口部の実測は18.5mmで、パイロットランプはそのまま装着できた。
 真空管ソケットを現物合わせしたところ、ちょっと狭かったため、リューターで約19.5㎜くらいまで拡大した。

左側はリューターによる修正後

 ホールカッターは、一つの丸穴しか開けられない単機能工具であり、その金額も安くはない(近所のホームセンターで1,748円…)。たしかに今のところ丸穴一つに600円近くかけてしまったことになる。しかし、その仕上がりの良さや作業効率の高さからを考えると悪くない買い物であり、お勧めできる逸品である。まあ、さすがに、このホールカッターがあるからMT管を使用した真空管アンプをもう一個作ろう、とまでは思えないが…

⑶ シャシー加工のまとめ

 休日に子どもたちの相手をしながらの作業となったため(子どもたちはこんな父親のことをどう思っているんだろう…)、純粋に作業に要した時間とはいえないものの、およそ1時間半~2時間程度でシャシー作業は完了した。
 部品たちを仮装着してみると…

フェイスパネル
バックパネル
真空管ソケット部

 ソリッドなアルミシャシーに控えめなコントロールパネル、まさに「自作アンプ」なビジュアルである。作業ミスによる傷などもなく、個人的にはかなり満足できる仕上がりとなった。
 これで土台となるシャシーが完成したので、次は電源回路関係の作業である。

3 タレットボード上の作業その1(電源回路)

⑴ タレットボードの加工


 用意したタレットボードは、あらかじめ1センチ間隔で端子が固定されているものである。

300mm×60㎜×2mm 端子同士の縦の距離は50㎜

 電源周りでは、端子と端子との間に抵抗を設置する場所があるので、邪魔になる端子は除去しなければならない。
 端子はハトメ式で固定されているので、座金部分をリューターで削り飛ばせば、端子を取り外すことができる。端子のハトメの座金部分をリューターで削り取っていき、少しだけ座金が残った状態でラジオペンチを使って取り外す。
 1カ所当たりの作業に必要な所要時間はせいぜい1,2分だが、切削作業前の確認(必要な端子を取ってしまったら大惨事である…)や、切削粉が付着しないためのマスキング作業の方に結構時間がかかってしまった。

ぎゅい~ん!!

 わざわざ座金を少し残したのは、取り外した端子を整流ダイオードのあたりに再利用したかったからである。同じような新品の端子を調達すれば済む話なのだが、取り外した端子を利用する方がエコである(おそらく、ほかに使い道もなさそうだし、新品の端子は意外と高価なのである…)。
 座金が多めに残った選りすぐりの端子を挿入してみたが、さすがにこれだけではしっかり固定されなかったので、エポキシ系接着剤で接着補強を行った。一応耐熱性の高い接着剤を使ったが、ここが高温になるようではそもそもどこかおかしいのでは…

取り外した端子の再利用 SDGs!!

 タレットボード自体は普通の電子基板と同様の素材であるため、不要部分のカットにはPカッターを使用した。両面から溝を掘るようにカリカリし、ある程度両面の溝が深くなったあたりで、意を決して力を込めればきれいに切り離すことができる。
 以上で、タレットボードに関する作業は完了である。ここまでの実作業時間は1時間程度であった。

タレットボード完成!

⑵ ドライマウント

 土台が整ったので、早速部品をタレットボードに乗せてみる。タレットボードに装着される部品のうち、電源回路関係は電解コンデンサが3本、ダイオードが4本、抵抗が2本である。

 ハンダ付けする前に部品を仮置きして配置や相互干渉の確認を行うことを「ドライマウント」と呼ぶらしい。それにしてもpoint to pointとかdry mountとか、ギターアンプの世界は言い回しがカッコイイなぁ…

黒い電解コンデンサがカッコイイ!

 整流用のダイオードの配列が波打っているのはご愛敬、ということにしてほしい(写真に撮ると実物よりかっこ悪くみえることがあるのはどういう現象なんだろう…)。
 この黒光りする大きな電解コンデンサ達はドイツのF&Tというブランドのオーディオグレードのものである。オーディオグレードというと高価なものを想像するが、これは通常品とあまり値段が変わらない。自作オーディオ界での使用実績も高いようだが、そんなことより、黒いボディに金色のロゴが、AE86 Black LImitedみたいでカッコイイじゃないか!

⑶ ハンダ付け

 ドライマウントした部品の向きや結線などを何度もチェックしたら、もう二度と部品は外さないくらいの勢いでしっかりハンダ付けしていく。使用したハンダごては40Wである。
 ところで、オーディオやエフェクター自作世界では、ハンダに対してもこだわりの姿勢を見せるのが作法のようである。ヴィンテージならKester44だろうとか、同じKester44でも時代によって特性が違うとか、音響用銀入りが至高だとか、NASAで使われている宇宙用ハンダの方がとか…
 もちろん、こんな私ですら、ハンダに関してはこだわりがある。それは、「無鉛はんだの方が身体に悪くなくて良いんじゃないかな~」である。
 正直なところ、ハンダの違いで生じる音の違いが判る自信がないどころか、その差異を比較できるほど安定したハンダ付けを行う自信すらない。それに、人体に有害な鉛入りハンダの煙を吸い込まないような万全な換気(ファンを回して窓全開で強制排気っ!)をこの季節の北海道で行うことなど事実上不可能なのである。
 そんなわけで、使っているハンダは、ホームセンターで普通に売っている鉛フリーハンダを使用している。 

⑷ チェック

 現時点では、チェックするといっても、テスターを用いた導通チェックくらいしかやりようがない。
 一応この段階での画像も撮影したのだが、あまりにも地味な絵柄であるため割愛する。

4 電源周りの作業

⑴ 部品の確認・配線材など

 ここで投入される部品は、ACインレット、電源スイッチ、パイロットランプ、電源トランスとヒーター回路の抵抗2本、配線材である。
【配線材について】
 電源周りやヒーター配線は高電圧、高電流である。そのため、安全の観点から、このあたりの配線材はしっかりしたもの(太さ・耐圧)を使いたい。もっとも、これらの配線はノイズ防止で撚り合わせることになるので、あまりに太過ぎるものだと作業性が悪くなりそうである。そこで、安全と作業性のバランスを取るべく、協和ハーモネットの耐熱ビニル絶縁配線AWG18(0.75sq相当)を使用した。
 使途によって配線材の色分けも行っている。電源周りについては、100V配線は白・黒、ヒーター配線は赤・黒、昇圧後の電源配線は赤、アースは緑にしている。配線材の色分けは、後のトラブルシューティングやメンテナンスの際に役立つはずである。第一、統一的なルールに基づいて色分けされた配線処理のなされたシャシー内部は見た目がかっこいいじゃないか。とにかく見た目に(も)こだわるのがロックの精神なのである。
 配線の色分け、というと思い出すのが、昔乗っていた中古車のことである。2オーナーくらいの国産中古車であったが、購入時から社外品に交換されていたオーディオの調子が悪かった。意を決してオーディオ回りを分解して社外ヘッドユニットを引っ張り出してみたところ、その背後には、ACC電源どころか、常時電源、左右のスピーカーやアースに至るまで、後付配線の「すべて」が真っ赤なホームセンター謹製コードで統一されていた…いったいどれだけ集中して作業を行えばこんな配線作業を全うできるのかと、呆れ果てたものである。もちろん、真っ赤な配線は全て捨て去ることになったのは言うまでもない…

⑵ 作業内容

① 100Vに関する配線
 ACインレットからの2本の配線は、一方は電源スイッチを経由して電源トランスに、もう一方は直接に電源トランスに繋がる。アースは電源トランス取付ボルトを活用して、ここに集中させる予定である。ボルトを中心にアース(グラウンド)線が星状になることから、star groundと呼ぶらしい。これまたカッコいい呼び方だなぁ。

シャシーのエッジが配線を傷つけそうなので、この後ブッシュを入れています

 配線が終わったら、通電する前に、スイッチを切った状態でACインレットの端子間が導通していないことをテスターで確認する。さらに、スイッチを入れて若干の抵抗値(3Ωくらい)が発生することも確認する。
 AC100Vを供給してのチェックを行う際には、ゴム手袋を履いて万一の漏電・感電に備えた。
 準備を整え、いざ緊張の電源スイッチオン!である。当然ながら、目に見えるようなことは何も起こらない。
 電源トランスの0V端子と100V端子に厳かにテスタープローブを当て…あれ??テスターが反応しない…
 作業一歩目にしてもうやらかしているのか…

 いったん電源スイッチを切って落ち着こう。こういうときに慌ててはいけない。もう一度導通チェックを行ってみるが、問題は見つけられない。電源トランスが壊れているかどうかはわからないけど、仮に電源トランスが壊れていたとしても電源トランスの端子まで電流は流れるはずだし…導通しているからヒューズも切れていないし…テスターだってちゃんとDC200Vモードになっているし…
ちゃんとDC200V…あっ!!

 そう、チェックに使っているテスターは、電圧計測の際、直流(DC)と交流(AC)でモードを切り替える必要がある。交流なんかほとんど扱ったことがないので、計測対象が交流であることをすっかり忘れ、直流モードで電圧を計測しようとしていたのである。そりゃあ計測できるわけがない…
 あらためて交流モードに切り替えたところ、電源トランスまでAC100Vが届いていることを無事確認することができた。

 いやはや、実作業の第一歩から前途多難である。

② ヒーター配線
 ヒーター配線は、ハムバランサーとなる抵抗を起点として、真空管ソケットに行く配線、パイロットランプに行く配線、電源トランスに繋がる配線を伸ばしていくイメージである。各配線はいずれも撚り合わせた。
 作業が終わったら、まずAC100Vを供給する前に各部の導通チェック。今回も問題はない。
 ビニール手袋をしっかり装着し、ACインレットに電源ケーブルを挿入して、いざ電源スイッチオン!
 パイロットランプが点灯した。

光ったよ!!

 各部の電圧をチェックしてみる。ヒーター回路、真空管ソケット部分の電圧はAC6.5Vくらい。ここはAC6.3Vとなるところであるが、負荷がかかっていないのでこんなものだろう。
 せっかくヒーター回路まで出来上がっているのだから、真空管を装着してみようか。新品の12AX7(EEC83S)とEL84(6BQ5)を箱から取り出し、ソケットに装着してみる。
 改めて電源スイッチを入れてみると、EL84のヒーターはすぐに点灯した。12AX7の方は、しばらくたってもヒーターの点灯が確認できない。また少し焦ったが、作業スペースが明るすぎるのと最近急速に進んでいる老眼の影響で、ヒーターの明かりが良く見えていないだけであった。
 ヒーター回路が繋がったというだけの話であるが、カーテンを引いて薄暗くした室内でヒーターがほんのりと灯っている様子は、実に良い。
 たとえこの先、音が出なかったとしても、照度が極めて低いもののヴィンテージ感溢れる照明器具として役立ってもらえることが確認できたので、一安心である。

「真空管ギターアンプ型とっても暗い照明器具」の完成である。

③250V配線など
 タレットボード上の電源回路に向かう配線も赤のAWG18としている。
 電源トランスの端子部分が裸の状態なのは危険なので、ここの絶縁対策が必要である。
 通常の絶縁対策では、いわゆる熱収縮チューブを用いることが多いと思われる。今回も熱収縮チューブを使おうと思っていたのだが、端子との結線の仕方が悪かったのか、熱収縮チューブがうまいこと端子全体をカバーしてくれない/カバーできていてもなんだか美しくないという事態に。さてどうしたものか…
 そこで引っ張り出してきたのが、「ビニール配線補修用塗料」である。これは、配線の外皮ビニールが傷ついて銅線が露出したような箇所に塗ってビニール外皮を再構築するという実にニッチな商品である。非常に粘度が高いラッカー系塗料で、乾燥するとビニールのような質感となる。
 今回は、端子部分にこれを盛り付けることで絶縁処理を行ってみる。電源トランスの端子の白くなっている部分が盛り付けた塗料である。

真ん中や下の空き端子にも絶縁塗料を塗っておくべきである。

 電源トランスからの250Vの配線をタレットボードの電源部分と結線すれば、250Vからの昇圧ぶりなども確認できるのだが、一旦結線してしまうと、タレットボードをシャシーから取り外すことが難しくなり、この先のタレットボードへの部品の組付け作業がやりにくくなってしまう。
 そのため、昇圧関係の確認作業は行わず、このまま音響回路の作業になだれ込んでいくことにしよう。
 電源トランスとからの配線をタレットボード上の端子にチョン付けしてテストする、っていう方法もあったのではないか、と今気付いてしまったが、時すでに遅し…果たして、この決断は、吉と出るのか凶と出るのか…

5 タレットボード上の作業その2

⑴ 作業方針

 手書きの実体配線図を片手に、ひたすら部品をタレットボードに並べ(dry mount)、配置ミスなどのチェックを経てハンダ付けを行っていくだけである。また、若干の手間にはなるが、部品を並べる際にはテスターで数値の確認を行って配置ミスを防止するようにした。

⑵ 作業内容など

 非常に地味な作業であり、途中経過などは全く写真映えしない。が、一応載せておこう。

途中経過

 部品の配置にあたっては、なるべく部品の足同士が直接絡み合うように配慮した。また、EL84のカーソードバイアス抵抗は耐圧5Wの抵抗であり(緑色の大きいやつ)、発熱が予想されることからタレットボードから浮いた状態になるようにしてみた。
 抵抗やフィルムコンデンサにも実は向きがあって、電子が移動する方向と合わせるといった観点もあるのだが、よくわからないので、正しい向きに配置した結果、コンデンサの方向がバラバラだったりするよりも、見た目に整って見えることの方を重視することにした。

【カーボンコンポジット抵抗の秘密?】
 部品選定の回に紹介したカーボンコンポジット抵抗(12AX7のプレート抵抗)は、かの有名なAllen Bradley製。表記は100kΩである。これを実測してみたところ…

見にくい写真でごめんなさい…

 一つは109.7kΩ、もう一つは109.8kΩであった。いずれも表記の100kΩに対してはほぼ10%のズレ、さすがは定評あるAllen Bradley、個体差の少なさは驚異的である(え?そっちを褒めるの?)。
 この一例のみに依拠した判断は、木を見て森を見ずとの誹りを免れないかもしれないが…「カーボンコンポジット抵抗は炭素被膜や金属皮膜抵抗とは音が違う」といったカーボンコンポジット抵抗にまつわる伝説は、この表記と実測値の違いに起因しているのではないのだろうか?
 抵抗の種類による出音の違いを検証するため、同じ歪み系エフェクターを抵抗の種類ごとに作成・比較する企画などがある。しかし、カーボンコンポジット抵抗の表記と実測がこれだけ違うとなると、増幅率も変わるしフィルターのカットオフ周波数だって変わってしまう。すべての抵抗を実測して数値を合わせ込んでいかなければ、完成したカーボンコンポジット抵抗からなる回路はそもそも設計通りのものではありえない。その結果、出てくる音が他の抵抗で作成した回路と違っていたとしても当然である。そうすると、抵抗値の差異の積み重ねにより生じた音の違いを、抵抗の種類の違いと混同している可能性の方が高いのではないだろうか…

 なお、本機においては12AX7のプレート抵抗のみにカーボンコンポジット抵抗を使用している。標記よりも抵抗値が高くなればゲインが上がる方向に作用することになるが、この程度は許容範囲であろう。

 さて、ドライマウントの状態であらためて実体配線図と見比べて部品相互の結線の間違いなどがないかの確認ができたらハンダ付けである。いくつか部品のハンダ付けを行ったらテスターで導通チェックを行うという作業を繰り返し、ハンダ不良を放置しないように留意した。

 そうそう、電子工作やプラモデル作りをしていると、部屋の中に四次元ポケットが現れることがある(四次元ポケットではなくワームホールである、との学説もある)。ふと気が付いたら、ついさっきまでそこに置いてあった部品がない、そして、どこを探しても見つからない、という例のやつである。この四次元ポケットは、ピンセットで挟んだ部品を間違えて飛ばしてしまった瞬間にも現れがちである。
 今回は部品点数も少ないし、さほど小さい部品もないので大丈夫だろう、と思っていたら、なぜかカップリングコンデンサの一つが四次元ポケットに吸い込まれてしまった。気分転換がてら一旦作業スペースを片付け、床を掃除するなどしても見つからない…仕方ないので部品収納ケースを漁り、発掘された0.02μFのオレンジドロップを初段とトーンとの間に使うことにした。 

 部品紛失という痛恨のミスはあったものの、1時間程度でタレットボードが完成した。

タレットボードはこれにて完成!

6 トーン、ボリューム周り

⑴ 作業のポイント

 抵抗2つ、コンデンサ2つからなるトーンコントロール回路は、トーンポット上に構築する。
 電源・パワー管のアースと入力・プリ管のアースを分けた方がノイズ対策の点で望ましいようなので、プリ管回りのグラウンド(アース)は、このポットに繋いで、ポットからシャシーに落とすことにした。

イラストならきれいに書けるのだが…さて… 

⑵ 作業

 シャシーの外側から内側に向けて2つのポットを仮固定し、2つのポットの相対的な位置関係をキープしながら作業を行った。
 ポット本体は、そのままではハンダが乗りにくい。そこで、ポット本体の表面を金属やすりや粗目の耐水ペーパーなどで荒らして足付けをしておく必要がある。今回は♯320の耐水ペーパーで表面を荒らしてから錫メッキ線のハンダ付けを行ったが、少し熱が回るのに時間を要するものの、40Wのハンダごてでしっかりとハンダ付けできた。

 トーンポットには大きなフィルムコンデンサ、さらに抵抗2つとシルバーマイカコンデンサを空中配線し、そこに2本の配線をつなぐことになるので、洗濯バサミ様のクリップや事務用クリップ、マスキングテープなど、使えるものを最大限に活用して仮固定しながら作業を行う。
 最終的な見た目はあまり褒められた感じではないが…
 「一番大事なことはキレイさか? ハンダはバチッとくっつけるコトだろうが」(©湾岸ミッドナイトより改変)というわけで、バチっとくっついているようなので、これで良しとしよう。

拡大するとあまり美しくない…やり直したい…

⑶ 動作チェック

 トーンコントロール部分がかなり複雑な構造になってしまっているので、ここはあらかじめ動作チェックをしておきたい。
 そこで、やや面倒ではあったのだが、ギターの信号と別なギターアンプ(電池駆動のミニアンプを使用)の間にこのトーンコントロールとボリュームを割り込ませるような簡易配線を作って、トーンとボリュームがちゃんと機能することを確認した。

7 配線

⑴ 配線材について

 タレットボードとトーン・ボリュームポットが完成したので、あとはこれらと真空管ソケットや出力トランス、スピーカーアウトなどを結線する配線作業を残すばかりである。
 12AX7のグリッドに向かう配線は、初段はインプット信号、2段目もトーン・ボリュームを経ており、インピーダンスが高い。そこで、外来ノイズの侵入を可能な限り避けるべく、シールド線を使うことにした(また出費である…)。
 ここでも配線の色分けを検討し、プレートへの配線は茶色、信号線は黄色、カソードバイアスへの配線は青で統一した。当初、これらの配線にはAWG22程度を使用するつもりでAWG18同様に協和ハーモネットのものを準備していたのだが、それほど配線が入り組んでおらず太い配線でもいけそうであることから、こちらもAWG18を使用することにした。準備していたAWG22はそのまま不良在庫である…

⑵ 作業内容

【インプットジャック】
 インプットジャックのホット端子とコールド(グラウンド)端子との間には1MΩの抵抗を直接接続している。プラグを挿入した時に、この抵抗がプラグと干渉しないような位置決めをする必要がある。インプットジャックから12AX7のグリッドに向かう配線はシールド線を使用し、シールドはインプットジャック側だけコールド端子に接続し、12AX7側は無接続である。12AX7側も接続してしまうとアースがループしてしまう、らしい。

ここはキレイにできた!

【真空管ソケット周り】
 12AX7の初段グリッドに繋がる抵抗とEL84のグリッドに繋がる抵抗は、いずれもソケットに直接接続している。下の画像では抵抗が横に寝ていてシャシーとの接触のリスクがありそうに見えるが、最終的には立てて設置しているので大丈夫である。

12AX7(右側)のヒーター線(赤)の被膜が怪しい…補修せねば…

【その他】
 この先は、自作の実体配線図が完璧であるということを盲信して、ひたすら配線を行っていくのみである。
 配線が無駄に長くならず、かつ、短すぎてストレスにならないように、と考えながら一本ずつ配線作業を行っていく。出力トランスには今回の回路では不要な配線もあり、はっきり言って邪魔である。不要なのだから短くカットしてしまえばいいだけなのだが、もしかしたらこの先使うことがあるかもしれない、という貧乏性が発動、ひとまずくるくる丸めて仮固定しておくことにした(下の画像の青・白、赤の配線)。

作業途中。まだ整然と美しい状態である。

 配線の本数はさほど多くない。結線するたびにテスターで導通チェックを行い、隣接する配線や端子とのショートがないかなども確認しながら配線を行って行ったが、小一時間ほどで、すべての作業が終わってしまった。
 配線作業が終わるころには先ほどビニールテープでまとめておいた出力トランスの配線がばらけ始めている…こいつらの処置を考えなくては…
 というか、アンプの作業工程はこれで終了じゃないか?!

あっという間に自作感丸出し…

⑶ チェック作業

 結局、ヒーター回路の確認以降、通電させての確認をすることなく作業工程がすべて終了してしまったようである。
 通電前に可能な限りテスターでの導通チェックを行うが、とくに問題はなさそうである。
 本当にこれでいいのだろうか?!

8 テストドライブ(試奏)

⑴ 試奏環境

 チェックできそうな箇所にひたすらプローブを当てて確認作業をしていくが、不具合箇所は見つからず、だんだん飽きてきた。既に時刻は午後8時を回っているが、試奏を明日まで待つべき合理的理由など何もない。
 万が一の事故(スピーカーが飛んじゃうとか燃えるとか)を想定して、どうなってもいい試奏用のスピーカーユニットを用意すべきなのだが、そのためだけに新たにユニットを調達するというのは、SDGsや経済合理性の観点からすると問題ではないだろうか、というか、もう今すぐ試奏したい!
 そこで、友人から借りているアンプのスピーカーを拝借してしまうことに。我が身を犠牲にして自作アンプの実験台となってくれることになったのは、Fender Sidekick Tube 30Rというプリに真空管を使ったポール・リベラ期の渋いコンボアンプである。12inchのスピーカーユニットは8Ωで、あつらえたようにぴったりである。万一スピーカーユニットを飛ばしてしまったら、新品のスピーカーユニットを買って返せばいいじゃないか…

⑵ テストドライブ=試奏

 実験台お借りしているコンボアンプの上に自作アンプを置いて、スピーカーケーブルとACケーブルを接続する。なんちゃってMalcolmと自作アンプの間はシールド一本で直結である。
 アンプのボリュームポット、ギターのボリュームは絞り切って、念のためゴム手袋を装着して、いざ、電源スイッチオン!
 スイッチが入ると、真空管のヒーターがほんのりとオレンジに光り始めた。最初は電源トランスが唸るというような話もどこかで見たが、全くの無音である。何かが焦げている匂いなども感じられないのは良い兆候だろう。
 それにしても、ボリュームポットを絞り切っているとはいえ、こんなに音がしなくて大丈夫なんだろうか?
 じりじりする気持ちを抑えながら、電源投入から1~2分が経過するのを待ち、アンプのボリュームポットを10段階の2くらいまで上げてみるが、スピーカーに耳を近づけても「サー」っという音が聞こえるような聞こえないような…ギターのボリュームを開いていっても、やはりノイズが聞こえてこない。あれ?これ失敗したんじゃないか??と思いながら、Aを押さえてストロークすると…

 鳴った!鳴ったよ!!

 普通にスピーカーからアンプを通した音が出てきた!!逸る気持ちを抑え、そのまま小音量で弾いてみる。
 単音を弾くと真空管らしい揺らぎを伴いながら、非常に良く音が伸びる。
 アンプのトーンノブを回すとトーンがしっかり変化する。
 このアンプの数少ない機能の一つであるボイススイッチ(12AX7の初段のカソードバイパスコンデンサを切り替え式にして、①25μF=Tweed期のFender的な定数、②コンデンサを接続しない=Blackface期のFender的な定数、③0.68μF=Marshall的な定数の3つを選択できる)の効果は非常に明瞭である。
 ①の25μFでは、ローまでしっかり出たFATな感じで全体的に音の厚みがある。②のバイパスコンデンサなしの状態では、ゲインが下がるため音量が少しだけ下がるものの、癖がないパリッとしたトーンになり、かなりFenderっぽいサウンドである。そして、そこから③の0.68μFに切り替えると、ローが引き締まったまま高域に煌びやかさが付加される。雰囲気的には、たしかにMarshallっぽい感じ、かもしれない。
 これらの切替は単純なスイッチでどれをグラウンドに落とすか選択するだけなので、電解コンデンサを使用している①25μFとの切替えの際に、かなり大きなポップノイズが発生している。ボリュームを下げた状態で切り替えれば問題がないとはいえ、ちょっと気になるので、25μFとグラウンドを高い抵抗で繋いでみるなどの対応をしてみる予定である。

 ボリュームを少しずつ上げていくと、音量に伴って音圧が上がってくる。真空管アンプならではの音圧感である。ボリュームを10段階の5にしたあたりで、やや歪んでいるかどうか、というくらいの軽いクランチサウンドに。
 音の伸びが良いからなのか何なのか、理屈がよくわからないが、とにかく「弾きやすい」という印象である。元々がド下手なので伸びしろしかないのではあるが、なんだか少しギターが上手くなったような気さえする。

 このままボリュームを最大にして、最終的なドライブサウンドを確認したいところである。しかし、すでに夜も更けており、爆音を出すことは憚られる。いきなり真空管アンプの完全自作にチャレンジするくらいに非常識ではあるが、家族と近隣住民の安寧を破壊してはならないという程度の常識は持ち合わせているのである。それに、まだ各部の電圧や電流のチェックを行っていない状態で全開、というのも正直怖い。
 今日のところは、ちゃんと音が出る、そしてノイズが思ったより少ないということを確認できたことで良しとしようではないか。

音が出た!!というかいい音!!

9 まとめ

 こうして、無事、アンプ部分が完成した、というかちゃんと音が出た。あれほど準備に時間を要したのに、作業開始から完成まではあっという間であった。実作業時間はトータルで5~6時間といったところである。

 このアンプは、キット物ではないし、誰かの作例のコピーでもない。浅はかな知識でこねくり回した回路を具現化するべく、実体配線図を自分で準備し、シャシーも自分で加工し、組み上げて、ちゃんと音が出たときの気持ちは何とも言えないものである。しかも、その音が良い、ノイズもほとんど無い!となればなおさらである。もちろん、これで音が出なかったならば、ここまで続けてきたこの企画自体を放り投げることになりかねかないので、ホッとしたというのも正直なところではあるが…

 アンプ本体に関しては、キャビネットへの組み込みの前に、
 ①アンプ回路の電圧、電流等の計測を行い、設計通りの動作となっているかどうかの確認
 ②ボイススイッチのポップノイズ対策
 ③フェイスパネルの製作
を行う予定である。

 試奏用にとりあえずつないだスピーカーであるにもかかわらず、かなり満足できる状態に組みあがったこのアンプ、なんならこのままの状態で使えばいいんじゃないかこれから専用キャビネットに組み込んで、厳選したスピーカーをドライブさせたら、いったいどんな素晴らしいサウンドが手に入るのか、否応にも期待は高まるばかりである。もちろん、本機と試奏用スピーカーとが奇跡の組み合わせだった、ということも十分ありうる話ではあるのだが…
 
 アンプ製作がひと段落ついたので、いよいよ本企画のメインテーマ、電動サンダーを活用するためのキャビネット制作編のスタートである。

 というわけで、次回、
 「真空管ギターアンプを作ろう」~⑨キャビネット製作 その1編
 をお楽しみに!!


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