真空管ギターアンプを作ろう~②キャビネット設計編
1 前回までのあらすじ…
電動サンダーを活用したい、というやや本末転倒な動機からスタートした「真空管ギターアンプを作ろう」企画である。詳しくは、真空管ギターアンプを作ろう~①構想編をご覧いただきたい。
さて、どこかのメーカーのアンプの丸パクリではないオリジナルな真空管ギターアンプを作る、という壮大な目標達成のため、鋭意、電子回路の勉強を進めているところであるが、今回は並行して進めていたキャビネットの検討・設計についてである。
2 シャシーのサイズについて
キャビネットの設計をするには、まずアンプ部分が収まるシャシーのサイズを確定する必要がある。
アルミ板からシャシーを作るというのも、自作度を高めるうえではかなり魅力的である。
しかし、きっちりとしたシャシーを作り上げるハードルはかなり高そうだ。進む先々に高いハードルを設定し続けてもキリがないし、第一、私は陸上選手じゃない。高いハードルを立てまくったところで、華麗に飛び越えるどころかハードルに絡まって大惨事を起こすのがオチであろう。
というわけで、シャシーはおとなしく市販品から選ぶことにする。
本来ならば、制作するアンプの回路を確定して、部品のレイアウトを考えるべきところなのだが、電子回路のお勉強は少し時間がかかりそうなので、致し方ない(本当に?)。中身より先に外側を決めてしまうというのはなんだか危険な流れであるが、市販されている10inchスピーカーのコンボアンプの寸法や参考書に載っていたアンプの寸法などを参考すれば、あまり外すことはないだろう。
というわけで、ある程度余裕を持たせつつ、アンプ全体が大きくなり過ぎないサイズ、幅350mm、奥行200㎜、高さ55㎜のアルミシャシー(ゼネラルトランス販売株式会社「2MM-170」)を選定した。
3 FUSION360でサクサク設計?!
シャシーのサイズさえ決まってしまえば、あとは楽しいキャビネット本体の設計である。
【設計要件】
・シャシーのサイズが350㎜×200㎜×55㎜。これを後ろからスライドさせてキャビネット上部に納め、ボルト固定。
・使用する板厚は18㎜。市販のアンプ、キャビネットもこれくらいの板厚を使っているようである。
・スピーカーを固定するバッフル板は、完成後にスピーカーサイズの交換やポートの追加などができるように着脱式にしたい。
・バックパネルも着脱可能にして、オープン、セミクローズド、クローズドなどを試せるようにしたい。
【文明の利器の罠?】
近年では、素人があまり勉強せずに感覚的に使える3Dモデリングソフトが存在する。なんと便利な時代なのだろうか、これを使わない理由はない。
というわけで、Fusion360というソフトを使って設計作業開始である。
マウス片手にものの数10分で…

…かっこ悪い…
ソフトを使いこなせていないからなのか(それはその通りであるが)、オブジェクトのどぶネズミ色のせいなのか……
Tweed期のFenderアンプを間延びさせたような…全然ピンとこない。本当にこんなの作るの?と、テンションはもうダダ下がりである。
これまでの私であれば、こういう事態に陥っても
「作ればかっこよくなる! 作りながら修正していけば大丈夫! とりあえず作っちゃおうぜ!」という前向き思考(?)で対処してきた。そうやって、あまたの中途半端な「日曜大工」「手作りの〇〇」を作り上げてきたのである…
それはそれで楽しいのだが、もう良い歳なんだからさ…
4 真空管ギターアンプのスケールモデルを作ってみよう!
自動車や工業製品などの開発過程では、デザインやパッケージの検討に模型が使われている(今では相当の範囲がCGで代替されているのかもしれないが…)。図面だけではなく立体化、具現化することによってはじめて見えてくることもあるのだろうか。
自分だけのアンプ・キャビネットの制作は、いってみれば新車の開発と一緒である。であれば、同じようなアプローチをすべきではないだろうか(また大きく出ましたね…)。
というわけで、模型=スケールモデルの制作である。
【スケールモデルの作成】
板の厚さと全体のバランスをみることが、キャビネットのイメージの具現化においては重要だろう。加工がしやすい6㎜厚のMDF板ならダイソーで手に入る。使用予定の板厚は18㎜なので、縮尺は自動的に3分の1に決定された。
仕事帰りにダイソーに寄ってお目当てのMDFをゲットし、作業の開始である。キャビネットの寸法を決めるには、まずシャシーのサイズが出発点となるのだから、ここでもシャシーから作り始めよう。いつものように子どもから工作用紙を拝借し、紙工作でやってみることにする。

丁寧に作り上げた紙工作シャシーを基準に、キャビネットを構築していく。
まずは、工作用紙であたりを付けて、それから6mm厚のMDFを切り出すつもりだったのだが、スポンジの両面に黒い厚紙が貼られた5㎜厚の謎の板(いったい何に使うつもりだったのか…)が机の引き出しから出てきた!
想定スケールとは1㎜違うけど、これを使っちゃえばいいじゃないか。漢字のお勉強をしている子どもたちの傍らで、父親の紙工作はどんどん進み…


これは悪くない。FUSION360で作ったやつはあんなにダサかったのに…
これでキャビネットの設計は終わったも同然である。これを採寸して、3倍すれば各部の寸法は確定である。と思いきや…
家族が寝静まった平和な週末の深夜にかすかに聞こえるノコギリとやすりの擦過音…舞い散るMDFの粉(←こいつは本当に細かくて厄介である。深夜だから掃除機も使えないし…)…
そして…


1/3scale Tube Amp Cabinetの堂々の完成である!!
さっきの紙工作で十分寸法は出せるんじゃないの?そんなことやってるより回路の勉強でもしたら?という声が聞こえてくるようである。
いや、そうではない。板厚が本来6㎜じゃなきゃダメなのに、紙工作の方は板厚5㎜だからここはやはりMDFで作るべきなのである(建前)。
まあ、これにBluetoothのレシーバと小型アンプでも組み込めば、かわいいんじゃないかな、と…(本音)
本物のギターアンプの回路すら決まってもいないうちから、「ギターアンプの販促で、そこのブランドのミニアンプがオマケに付いてくる」を自前でやりはじめたようなものである…余計な(未完成)作品が一つ生まれてしまったが、こうしてキャビネットの寸法はようやく確定した。なお、設計図は、もうFUSION360とか文明の利器を使うのは諦めて、手書きで済ませることにしたのは言うまでもない。手作業万歳!である。
5 キャビネットの仕上げについて
【素肌で勝負!】
昔のフェンダーアンプがその外装の処理から「Tweed期」などと呼ばれるように、ギターアンプ・キャビネットの外装は、布(クロス)や合成レザーを貼って仕上げられるのが一般的ではある。
しかし、日曜木工丸出しであった自作ハイブリッド真空管アンプの雪辱を果たしたいところである(誰に?!)。
そこで、今回も、自作ハイブリッド真空管アンプ同様、クロスは貼らず木目が見える状態で仕上げることにする。イメージとしては、Paul Read Smithは無理だとしても(あんなエキゾチックな木材、どこで手に入るんだ…)、Mesa/BoogieのLimited editionあたりの質感を目指したいところである。
【Finger Jointの誘惑…】
Finger Jointという技法がある。これは、2枚の板の接合部分をジグザグにして互い違いに組み合わせるものである。接合の強度があがり、耐久性が高まるという実用面も然ることながら、とにかく見た目がカッコいい!!
木の板で箱を作るだけ(いや、そんなに甘いもんじゃないんだが…)というキャビネットにおいて、通常と異なる処理で「日曜大工」感を払拭するには最適な技法ではないか!!
こうして、力量も顧みずに自分に対するハードルを上げる(そして、その難しさに途中で妥協して雑な仕上がりに…)という、いつものパターンがここでもまた発動…冒頭、ハードルは上げないって言ったばかりなのに…
6 まとめ
ようやくキャビネットの設計が無事終了したので、キャビネットに関しては、今後、木材を発注して切り出し、Finger Joint加工、組み立て、そして塗装というプロセスで進むことになる。
もっとも、まだアンプの回路が決まっていない。かなり苦戦しており、もう少し時間がかかりそうであるが…
次回、
真空管ギターアンプを作ろう~③回路検討その1編をお楽しみに!
