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Nutubeでオーディオアンプを作ろう~④Nutubeの振動対策編

1 前回までのあらすじ

 必要な電子部品のリストアップ作業を行ったものの、Nutube特有の課題である振動対策の検討が残されていることが判明したところまでをご報告した。

 今回は、Nutubeの振動対策を進めていくことにする。

2 Nutubeの振動対策

【市販のケースは入手困難…】

 KORGの使用ガイドには、「Nutubeは直熱管構造であるため、フィラメントの振動に由来するマイクロフォニック・ノイズが原理的に起こりやすくなっています。Nutubeへの振動は、主にマウント基板とNutubeの周りの空気からの2経路で伝わります。」との記載がある。
 マイクロフォニック・ノイズは、Nutubeに加わった振動が信号として外部に表出する現象である。たとえば、動作中のNutubeを指で弾くと、鈴の音のような「キ~ン」という音がスピーカーから聞こえてくる。

 使用ガイドでは、その解決策として、Nutubeを基板にマウントする際にクッションを加える、Nutubeをケースに入れるといった対策法が紹介されている。
 Nutubeの登場当初には、プラスチックやアクリルで出来たケースがいくつか市販されていたような記憶であったが、調べてみると共立プロダクツ製くらいしか見当たらない。
 しかも、ケースそのものはまだ在庫があるようだが、ケースを使用するために必要となる変換基板は欠品になっている…

 市販品をどうにか入手するために時間と労力をかけるくらいならば、ケースごと自作してしまったほうが早いはずである。
 結局のところ、空気振動の伝達を防ぐようなケースを作り、これをうまくシャーシにマウントすればよいだけなのだし←「だけ」なのか??

 というわけで、ケースの設計・製作を開始しよう。

【マウント基板~Nutubeのピッチ問題!】

 せっかくNutubeを使うのだから、クールに輝いているところを見せびらかしたい。
 パネル前面にNutubeを設置するとなれば、Nutubeとプリアンプ基板は線材で接続することになる。しかし、Nutubeのピンに直接線材をハンダ付けするのは美しくないし、なにかトラブルが生じた際に大変面倒なことになりそうだ(これまでのいくつかのプロジェクトにおけるヤラカシ事例を踏まえれば、基板からの配線を間違って結線してNutubeそのものを破壊する、といった低レベルのミスが容易に想定されるところである)。
 Nutubeをマウントする基板を作って、ここにピンヘッダを装着して、プリアンプと接続する線材をソケットなどで脱着できるようにしたい。そして、この基板にケースを装着するという形がスマートである。

 そこで、まずは出発点となるマウント基板について検討していくことにする。
 Nutubeの正確な寸法や基板穴位置などはKORGの利用ガイドに記載されているうえ、現物も手元にある。したがって、マウント基板の検討も簡単だろう、と思っていたら(自分にとって)大問題発生!!

Nutubeの外寸~KORG利用ガイドより
Nutubeのピン配置~KORG利用ガイドより…

 上記「基板穴位置」を見ていただければおわかりの通り、Nutubeから生えているピンのピッチは「2.0mm」である。これに対して、ICなどのピン間隔は0.1インチ=2.54㎜であり、一般的な基板はこれに準じて2.54㎜ピッチ…
 つまり、2.54㎜ピッチであるユニバーサル基板では変換基板を作ることはできないということじゃないか…(←そんなことないよ~、とニヤニヤしているあなたは上級者に違いない。どうかそのまま生暖かく見守ってほしい…)
 なんて面倒くさいことをしてくれるんだ、KORGさんよ…

 とはいえ、わざわざKORGさんが2㎜ピッチにしたことには意味があるはず。

 この次世代真空管によって世界的な覇権を掌握したい、そのためにはいまだにヤードポンド法なんぞ使って世界中に迷惑をかけているアメリカさん基準の2.54㎜ピッチなんぞ使っていられるか!!というKORGの壮大な野望の顕れに違いない。さすがはKORGである。ポンドヤード法に翻弄されがちな趣味(自動車とか自転車とかギターとか…)を嗜む身としては、このKORGの野望をぜひ応援せねばなるまい…

 冗談はさておき(KORGさんの中の人がこの記事を見て怒りのコメントを送信されませんように…)、ユニバーサル基板での手抜き作業ができないようなので、プリント基板を作らねばなるまい。
 Fritzingをいじくりまわしていたら、上部リボンの「表示」のところに「Set Grid Size」という項目を発見した。

デフォルトではここが0.1inchになっている。

 ここを「2㎜」に変更すれば、2.0㎜ピッチで作図が可能になるようだ。なんと便利なんだろうか(なお、これを見つけるまでは、2.54㎜ピッチでプリントアウトして0.787倍で縮小コピーしよう、という実にアナログな方法を考えていた…)。

こんな感じかな~

 Fritzingで2mmピッチでのマウント基板のレイアウトを作成することができることがわかったので、基板全体のサイズを確定するために、今度はケース部分を検討する。

 なお、さきほど電子部品屋さんのサイトを見ていたら、2mmピッチのユニバーサル基板(72mm×48mm)が一枚80円で普通に売っていることに気が付いた…無知とは恐ろしいものである…どうして誰も教えてくれないんだ…

【防振ケースの設計というか試作というか…】(2026.5.7)

 ケースは、Nutubeを取り囲むようにして空気振動が伝わらないようにする。Nutubeを装着した上記マウント基板の上に、Nutubeを取り囲む城壁のような枠を装着し(貼って剥がせる両面テープなどが良いだろうか)、その上にクリアパネルを取り付ければ、Nutubeに対する空気振動の伝播を防ぐことができそうである。
 ケースを装着したマウント基板をシャーシ床面にラバーマウントすれば、シャーシからマウント基板への振動もある程度防げるだろう。ラバーマウントには、Nutubeエフェクター作成時に調達した防振スペーサーを使うことにする。

 いつものように、まずは紙工作で、ケースの外寸を確定する作業を行う。DAIS〇の工作用紙やクリアファイルの切れっぱしと10分ばかり戯れていると…

平行四辺形に見えるけど大丈夫?!
防振スペーサーの取付位置・方法は暫定的なもの

 この紙工作だけ見ると、ちょっと先行き不安な感じであるが、採寸した結果、枠部分の内法は、48㎜×20㎜×7㎜となった。
 この程度ならば、3Dプリンタを引っ張り出して、フィラメントの送り出しに手間取り、さらに出力されたパーツの積層痕を処理し…といった手間と時間をかけるよりも、プラ板で作ってしまった方が早いはず。
 防振スペーサーのマウント基板への取付は、基板の裏に3㎜のタップを切ったプラ角棒を貼り付けよう。

【ケースの製作】(2026.5.8~)

 早速、プラ板で枠部分を作っていく。厚さは2㎜もあれば十分だろう。

 こういった直線で構成されるパーツを作成する際には、ちょっと割高なのだが、waveから販売されている(ほかのメーカーもあるのかな?)目盛りが印刷されているプラ板を愛用している。厚さが0.5㎜なので、4枚をプラ用接着剤で積層しなければならないが、手元に2㎜のプラ板もなかったし…

性根が曲がっているせいで直線も曲がりがちな身には大変便利!

 どんどんプラ板を切り出して、それぞれの面を積層作成し…

赤いケガキ線は何だろう…

 枠を組み上げて、耐水ペーパーなどで面出しを行う。正確に切り出せているはずだがどうしても平面が出ない部分は、瞬間接着パテを盛り付けて修正する。

紙工作よりはマシである

 いつのまにか短辺に3㎜径の丸穴が2つ空いているが、ここにLEDを仕込むことにした。2㎜厚のプラ板に丸穴を開口しただけではLEDの差し込みが浅くて不安定なので、丸穴開口部の周りにはさらにプラバンを積層して成形した。

黒く見えるのが瞬着パテ
拡大すると作りが荒い…

 丸穴とLEDのクリアランスを最小限にしているため、この状態でLEDはしっかり固定されている。動作確認後、最終的にエポキシ系接着剤で本固定するようにしたい。
 いつの間にか、プラモデルを作っているような錯覚に陥ってきた。
 プラモデルならばもっとビシッと面出しをして、LED取付台座のスムージングも…となるところだが、この部品は完成後は見えなくなる。こんなところに時間をかけていられないので、仕上げはそこそこにしておこう。

【マウント基板の作成~エッチング】(2026.5.10)

 ケースの概略が出来上がったので、マウント基板の寸法を確定することができるようになった。そのため、作業工程はまたマウント基板の方に戻る。なんだか行ったり来たりである…

 おなじみのFritzingで作成した基板レイアウトを原寸大でプリントアウトし、ケース、Nutube本体との位置関係をすり合わせ、最終的な寸法を確認する、と…

右側の3つの端子に注目っ!

 なんと、作成した基板データのNutubeの足の位置が間違っている!!あぶないところだった…

 やはり、常に現物合わせで確認作業を行うことはとても重要である。
 それにしても、DIYをされている皆様やプライベーターの方たちもこんなにミスをするものなのだろうか??先達の方々のブログなどを拝見しても、めったやたらとミスってばかりの記事などそうそう見当たらない。もしかして、このちゃらんぽらんな性格や集中力などが自作に向いていないのか?今更そんなこと言われても人生やり直すには遅すぎるんだが…

 さて、気を取り直して作業に戻ろう。レイアウトの修正後、写真台紙にコピーをしてエッチング用の原版の完成である。

なんだか顔っぽい! ['_']←こんな風に見えません?

  続いて、生基板(ベークライト製)をカットする。
 基板の切断作業にはPカッターを使う。Pカッターで両面から溝を掘っていき、溝がある程度深くなったら、板チョコを割るようにパキッと折ればよい。溝を掘る際にあまり力を入れず、少しずつ深くしていくイメージでやると刃先の脱線を防ぐことができる。

 カットした基板の銅箔面は#600程度の耐水ペーパーで軽く荒らし、シンナー等で脱脂しておくことを忘れないように。この作業を怠るとトナーがしっかり転写されず、悲しいことになる…ええ、今回はすっかり忘れていて、転写後に原版を剥がそうとしたらトナーもスルッと剥がれましたが何か?

 トナーを転写し、転写が不十分な部分があれば油性ペンで修正してから、DAIS〇謹製エッチング液でエッチング作業を行う。
 この程度の基板サイズであれば、エッチング液は、オキシドール20ml、クエン酸4g、塩1gで十分である。

 原版作成から転写、DAIS〇謹製エッチング液によるエッチング作業の詳細については、「真空管ギターアンプを作ろう」の中で、フェイスパネルの製作の中でご紹介したので、興味がおありの方はそちらもご参照いただきたい。

絶賛反応中!

 対象物が小さいとエッチングのスピードも速いため、目を離さないようにしておきたい。今回は約15分くらいで作業が完了した。

真ん中あたりは、まだ少し銅箔が残っており、あと1,2分というタイミングである

 エッチング作業が終了したら基板を重曹で中和して、さらに中性洗剤で洗浄乾燥させる。

【取付ステーの作成など】(2026.5.11~5.14)

 端子穴は、0.8㎜のピンバイスで開口する。これくらいの穴数ならば、電動工具を使わずに丁寧に作業しても、所要時間は10~15分程度である。リューターを使ったほうがもっと早いし楽なのだが、夜の作業では音が気になるので…

かなり地味な作業である…

 続いてシャーシへの取付ステーの作成である。
 マウント基板の幅に合わせた5㎜角棒の両側に防振スペーサーを装着するので、角棒にケガキ線を入れたら、先にスペーサーを装着するねじ穴を開口する(先に角棒を切ってしまうと力がいれにくいので)。
 スペーサーのネジ部はM3である。ステーの素材がプラスチックなので、直径2.8㎜の下穴を開ければ、わざわざタップを切るまでもなくスペーサーを手でねじ込めば雌ねじができる。

5㎜プラ角棒(タミヤ)にケガキ線を入れて…
下穴を直径2.8㎜まで拡大し、スペーサーで雌ねじを切る。

 スペーサー取付用ねじ穴が出来たら角棒をカットし、マウント基板との位置合わせのため0.5㎜プラバンを2枚貼り付ければ、ステーは完成である。

タミヤのプラモ用ノコギリ。サイズが可愛らしい…
完成!
取付イメージ

 マウント基板とプリアンプ基板を繋ぐ端子には、ピンヘッダをばらしたものをハンダ付けする。

基板が濡れているように見えるのは塗布したフラックス
せっせとハンダ付け

 どうしたわけか、やたらハンダの乗りが悪く、全然綺麗にハンダ付けできない…真ん中の端子に至ってはランドが剥がれかけてしまったのでハンダブリッジで対応する始末…Amaz〇n経由で調達した激安生基板が悪い、ということにさせてもらえないだろうか…

手作り感溢れる防振ケース…

 現段階での作業はここまで。あとは、シャーシに組み込む段階でプラ部分の塗装、前面クリアパネルの貼付や取付ステーの固定を行うことになる。

3 シャーシの選定

 Nutubeのマウント問題に目途が立ったので、次はシャーシの選定である。
 アルミ削り出しの本体にフェイスパネルは3㎜厚のステンレスをヘアライン加工し、などと金に物を言わせてみたいところであるが、私の財布は無口なので、とりあえずタカチのアルミケース(YM15-4-10 幅150㎜、奥行き100㎜、高さ40㎜ 板厚1mm)を手配してみた。

とりあえず収まりそうではある…
秋月電子通商様のHPから拝借した画像

 タカチのYMシリーズは、1㎜厚のアルミ板を組み合わせた廉価品であり、ご覧のような質感である。

 果たして、こんなもので高品位な見た目のデスクトップアンプ?と思われそうであるが、シャーシはあくまでベース、素材に過ぎない。
 パネル正面からNutubeが見えるようにしたい=フェイスパネルの一部を切り抜かなければならないので、分厚いシャーシ、ケースにするわけにはいかないのである(いや、頑張って加工すればいいだけなんだけど)。
 ここからの創意工夫で、もとがYMシリーズとは思えない素敵なアンプを作るのだ!とまた自らハードルを上げていくスタイル…

4 各基板のレイアウトの確定

 前回、前々回と検討中のレイアウトを掲載していたが、部品の寸法なども踏まえた最終版は次の通りである。

【パワーアンプ基板】

 レイアウトにおいて留意したポイントなどは次の通りである。

・インダクタの向き
 インダクタの向きがビシッと揃っているのは壮観なのだが、インダクタの向を揃えてしまうと、相互干渉等によって左右チャンネルの分離が損なわれることがあるようだ。だからといって、てんでバラバラな位置にインダクタを置くのも美しくない…
 そこで、左右のチャンネルでインダクタの向きを90度変え、直交するように配置している。

・部品サイズに合わせたレイアウト
 出力側の0.22uFのコンデンサは、発掘されたWIMAのMKP2(メタライズドポリプロピレンフィルム。オーディオ用として評価が高いのだが、寸法が7.2×13×7.2㎜と大きいのである…)を使うべく、スペースを十分に確保しておいた。

・ベタアースについて
 ご覧のように、基板レイアウトはベタアース(信号線以外の部分をすべてGNDにする)で行っている。
 ベタアースは、レイアウトを検討するにあたってGNDラインを考えずに済むため、脳みそをオーバーヒートさせなくて済む、というのが大きな利点である。
 さらに、エッチングで腐食させる面積が少なくなるので、エッチング作業時間が短くて済み、エッチング液も少量で足りるので経済的である。
 本来、ベタアースはノイズへの配慮などから採否を検討すべきものであるはずなのだが…

・信号線とベタアースの間隔
 信号線とベタアースの間隔が狭いと、原版を作成した時に綺麗に出力されず、エッチングに悪影響が生じることがある。
 そのため、「Set Graund Fill Keepout」という項目でFritzingのデフォルトの「12」から「14」に変更し、信号線とベタアースの間隔を広げている。

ここで変更できる

 レイアウト完成版は、こんな感じである。

46mm×50mm
エッチング用原版

 万が一、この回路を作ってみたいという人が現れた場合に備え、エッチング用原版の第るをダウンロードできるようにしておいた。が、今の時点ではちゃんと動作するか未知数なので、慌ててダウンロードして私より先に製作して「音が出ないじゃないか」みたいなクレームを入れるのは避けてほしい(いや、そんな人は絶対いない…)

【プリアンプ基板】

 入力部のコンデンサにEROの巨大なフィルムコンデンサ(MKT1813)を使用することにしたため、そのあたりを修正している。
 また、前々回の記事に掲載したレイアウトでは抵抗値などがいい加減であったため、そのあたりも修正している。
  Nutubeへの配線端子については、あえてそれぞれの間隔を空けることで結線ミスを防ぐことを考えている。

58mm×33mm
エッチング用原版

【電源基板】

 5Vレギュレータには、放熱のためのヒートシンクの取付が必要になる。ヒートシンクが他の部品と干渉せず、かつ基板の外側に向けて設置できるように、部品相互の位置関係を調整してみた。
 そうそう、データシートにおけるピンアサインの説明についてであるが、JRCのデータシートのように記載してくれていればよいのだが、UTCのように真下から見た場合を書かれると途端に混乱してしまうのは私だけだろうか…

5Vレギュレータのピンアサイン~JRCデータシートより
3.3Vレギュレータのピンアサイン~UTCデータシートより

 各基板への電源ラインをコネクタで接続することを想定し、それぞれの出力端子の横にGND端子を設置している。
 なお、この電源ラインのコネクタ接続というアイディアは、プリアンプ基板やパワーアンプ基板のレイアウトが完成し原版をプリントアウトしてから思いついてしまったため、一旦作成したプリアンプ基板とパワーアンプ基板のレイアウトからやり直す羽目になってしまった…上記レイアウトは修正後のレイアウトである「脳みそのご利用は計画的に!」…

36mm×33㎜
エッチング用原版


5 次回予告

 発注した部品も届き始めているので、あとはどんどん作業を進めるだけである。
 次回は、

 Nutubeでオーディオアンプを作ろう~⑤パワーアンプ製作編

をお楽しみに!

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