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採用では理由を聞くのに、娘は理由なく人を好きになる

保育園へ迎えに行く夕方。

保育園のドアが開くと、娘が勢いよく飛び出してきた。

「○○ちゃーん!」

私ではない。

少し前を歩いていた女の子に向かって、大きく手を振っている。

昨日まで、その名前を聞いた記憶はない。

でも二人は当たり前のように笑い合って、靴を履くと自然に手をつないで歩き始めた。

その後ろ姿を見ながら、少し不思議に思った。

昨日まで聞いたこともなかった名前なのに。



帰り道、車の中で聞いてみる。

「○○ちゃんと仲良しなんだね。」

「うん!」

「なんで仲良くなったの?」

娘は少し考えてから、

「ピンク好きだから。」

と笑った。

思わず私も笑ってしまう。

翌日のお迎えでは、また違う子と手をつないでいた。

「今日は△△ちゃん!」

「昨日は○○ちゃんだったよね?」

「うん!」

「今日は△△ちゃん!」

それだけだった。

誰が一番仲良しなのか。

いつから仲良しなのか。

そんなことは、娘の世界ではあまり大切じゃないように見える。



仕事では人事をしている。

新卒の採用面接では、学生にこんな質問をする。

「なぜこの会社なんですか。」

「学生時代に力を入れたことは何ですか。」

「どんな社会人になりたいですか。」

例えば、

「御社が第一志望です。」

そう話してくれた学生がいたとしても、その言葉をそのまま受け取ることはない。

本当にそう思っているのか。

そう言うべきだと思ったのか。

緊張して、うまく言葉にできていないだけなのか。

表情や間の取り方、視線の動き。

言葉にならない部分まで見ながら、その学生自身を知ろうとする。

面接が終わる頃には、

「この学生は本当は何を考えているんだろう」

と、無意識に探している自分がいる。

相手を疑いたいわけじゃない。

その人をちゃんと知りたい。

ただ、人を見る仕事をしていると、「理由」を探すことが癖になっていく。



だからなのかもしれない。

娘の友達づくりを見ていると、少し羨ましくなる。

たまたま隣の席だった。

一緒におままごとをした。

好きな色が同じだった。

きっかけは、そのくらいなのかもしれない。

でも翌日にはもう、一緒に笑っている。

数週間後には、

「今日は□□ちゃんと遊んだ!」

と、新しい名前が増えている。

そのたびに私は、

「○○ちゃんは?」

なんて聞いてしまう。

すると娘は、

「○○ちゃんも好き!」

と笑う。

少なくとも私には、「一番仲がいい」という線を引いているようには見えない。



保育園を出ると、そのままスーパーへ向かう。

夕飯は何にしよう。

卵、まだあったかな。

明日は朝から採用面接が入っている。

そんなことを考えながらカゴを持つ横で、娘は今日遊んだ友達の話を何度もしている。

両親は北海道に住んでいる。

「今日だけお願い」ができる距離ではない。

だから仕事が終われば迎えに行き、ご飯を作って、お風呂に入って、寝かしつける。

そんな毎日を繰り返していると、新しい人と自然に仲良くなる機会は、昔よりずっと減った。

仕事でも、仕事以外でも、人との距離を測る癖が少しずつ身についている気がする。



人事として働いている私は、毎日のように理由を探している。

どうしてそう思ったのか。

どうしてそう話したのか。

その言葉は、本音なのか。

でも家に帰ると、三歳の娘は理由なんて説明できなくても、新しい友達と笑っている。

もちろん、採用と友達づくりは同じじゃない。

それでも、ときどき思う。

人と仲良くなるのに、本当は理由なんて必要なんだろうか。



明日のお迎えでは、また違う名前を呼ぶのかもしれない。

私はきっと、また理由を聞く。

その横で娘は、新しい友達と手をつないで、先に歩いていくんだろう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

このnoteでは、シングルファザーとしての暮らしや、人事の仕事を通して感じたことを、一つひとつ言葉にしています。

またどこかの記事で、お会いできたら嬉しいです。

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