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娘より先に、自分が笑っていた日

「かわいい?」

ディズニー限定のTシャツを着た娘が、その場でくるっと一回転する。

「もちろん。」

そう答えると、今度はシャボン玉のおもちゃを振り回しながら歩き始めた。

まだ数分前に買ったばかりなのに、もうずっと前から持っていたみたいに夢中になっている。

その後ろ姿を見ていたら、自然と笑っていた。



この日は、友達2人と一緒にディズニーへ来ていた。

朝から娘はずっと楽しみにしていて、

「今日はディズニーだよね!」

と何度も確認していた。

改札で合流すると、最初は少し照れながら手を振っていた娘も、気づけば友達の名前を呼びながら歩いている。

子どもって、人との距離を縮めるのが本当に早い。

その姿を見て、「今日はきっといい一日になるな」と思った。



限定Tシャツを買ったのは、娘が欲しいと言ったからじゃない。

せっかくだから。

そんな親の勝手な理由だった。

思い出は、写真にも残るけれど、その日の服装も意外と記憶に残る。

何年かあとで写真を見返したとき、

「あ、この日だ。」

と思い出せたらいいな。

そんなことを考えながらレジへ向かった。



……と思っていたら、

「あっ!これほしい!」

今度はシャボン玉のおもちゃ。

さらに歩くと、

「これも!」

ミストファンまで見つけてしまった。

テーマパークに来ると、子どもの「ほしい」は本当に忙しい。

財布の中身より、親の気持ちのほうが試されている気がする。

友達2人は、その様子を見ながら笑っている。

「今日は思い出がいっぱい増えそうだね。」

その一言に、私も笑ってしまった。



限定Tシャツを着て、

シャボン玉を振り回しながら歩く娘。

ミストファンがお気に入りになったらしく、

何度も自分の顔に向けて、

「きもちいいー!」

と笑う。

その横で友達2人も笑う。

誰かが娘の相手をしてくれているわけじゃない。

育児を代わってくれているわけでもない。

でも、その景色を見ていたら、気づけば私も笑っていた。



アトラクションの待ち時間も、不思議とあっという間だった。

娘は友達に話しかけたり、

急に手をつないだり、

シャボン玉を振ってみたり。

その様子を見ながら、

仕事の話をしたり、

くだらない話で笑ったり、

「次は何乗ろうか」と話したり。

娘が突然会話に入ってきて、

またみんなで笑う。

そんな時間が、ずっと続いていた。



普段、娘と出かけるときは、

頭の中でずっと小さなチェックリストが動いている。

トイレは大丈夫かな。

水分は足りているかな。

疲れていないかな。

次はどこへ行こう。

写真は撮れたかな。

もちろん、この日も父親であることは変わらない。

娘から目を離すことなんてできない。

それでも、そのチェックリストが、この日は少しだけ静かだった。



人事の仕事をしていると、

面接を終えた学生から、

「話しやすい雰囲気でした。」

と言ってもらえることがある。

最初は、

「そんな短い時間で分かるものなのかな。」

と思っていた。

でも、この日少しだけ分かった気がした。

雰囲気って、

誰かが作ろうとして作るものじゃない。

自然と笑って、

自然と会話が続いて、

気づけば肩の力が抜けている。

そんな空気は、ちゃんと伝わる。

あの日のディズニーは、私にとってそんな一日だった。



シングルファザーになってから、

娘と過ごす時間が生活の中心になった。

それが嫌なわけじゃない。

むしろ、一緒に笑って、一緒に出かけて、一緒にご飯を食べる毎日は、本当に幸せだ。

でも、この日は少し違った。

友達が育児を代わってくれたわけじゃない。

特別に気を遣ってくれたわけでもない。

ただ、同じ景色を見て、

同じタイミングで笑ってくれる人が隣にいた。

それだけで、こんなにも気持ちが軽くなるんだと知った。



帰り道。

たくさん歩いたはずなのに、娘はまだ元気だった。

「まだ遊びたかった。」

「またディズニー行こうね!」

何度もそう言う。

その横を歩きながら、

私も同じことを思っていた。



娘を楽しませるために行った一日だった。

もちろん、一番楽しんでいたのは娘だと思う。

でも。

帰り道で「まだ遊びたい」と思っていたのは、娘だけじゃなかった。

私も、この一日が終わってほしくなかった。

何がそんなによかったんだろう。

友達が娘の面倒を見てくれたわけじゃない。

助けてもらったわけでもない。

それなのに、あの日は不思議なくらい肩に力が入っていなかった。

今でも、あの日のことを思い出す。

そして、そのたびに少し考える。

人は、どんな相手と一緒にいるときに、肩の力が抜けるんだろう。

その答えは、まだうまく言葉にできない。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

このほかにも、3歳の娘との暮らしや、シングルファザーとして感じたこと、人事の仕事を通して考えたことなどを綴っています。

「なんか分かるな」と思っていただけたら、ぜひ他の記事ものぞいてみてください。

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