【創作大賞作品を歩く(3)】読んだら、作者と友達になりたいと思うエッセイ
創作大賞、応募期間もうすぐ終わりですね!
この賞のいいところは、応募者の作品を自由に読むことができる、という点にあります。
受賞を目指して本気で書かれた作品ばかりなので、どれも唸るほど面白いものです。そういった作品を「読む」のもこの期間の醍醐味の一つ。
とはいえ、応募数が非常に多いため、どの作品から読めばいいのか迷ってしまう人もいるかもしれないですね。
そんな読者の方が、少しでも素敵な作品と出会えるよう、お手伝いができたら…そう思って、私が実際に読んで心を動かされた作品を、これから紹介していこうと思います。
たとえ作者の方と交流があって、それがきっかけで知った作品であっても、今この文章を読んでくださっている方の視点を大事にした紹介を心がけたいと思っています。
📝今回紹介する作品
早速、気になった作品を紹介していきます!
今回は、ある方のエッセイを2本、紹介します。
(1)アラサー女3人でちょっとしたパーティを全力で楽しんでみた
(2)社交辞令が回した歯車
作者:彩野リィさん
🤫作品の良さを、一言で言うと…
「読んだら、絶対に作者と友達になりたくなるエッセイ」です
💇♀️こんな人におすすめ
美容院で、雑誌のコラムをつい読んでしまう人
例えば、美容院で渡された雑誌でも、ファッションを見るはずがコラム欄につい読みいってしまったりしませんか?
読みやすくて、でも読み終わるとなんだかスッキリしたり、ちょっと新しい視点が得られて、読んで良かったな、と思えます。私は、そんな雑誌のコラムが大好きです。
そういった方に、このエッセイはおすすめです。
カフェで、気づいたらずっとおしゃべりをしてしまう人
気の合う人と、気づいたらカフェでずっとおしゃべりしてたなんてこと、ありませんか?私はあります(よくありました)
1時に入ったはずなのに、気づいたら4時や5時を回っていて、その間ずっとおしゃべりしちゃうんですね。
話題は、恋バナもあれば、本の話、仕事の話やその他とりとめもない話をずとずっとしてしまいます。
このエッセイは、「カフェでおしゃべりしてる感」がすごくあります。
かつてはおしゃべりをするのが好きだったけど、子育てなどで、今はそうできない環境にある人も、このエッセイはおすすめです。
🩷読んだらこんな気持ちになれる
作者と今すぐ友達になりたくなる
2本のエッセイを読んでください。
「アラサー女3人でちょっとしたパーティを全力で楽しんでみた」(以下:「パーティ」)を読み終わった時、きっと皆さん「私も呼んで欲しい!」と、叫ぶかと思います。
こんな、日常を特別な時間にできるエッセイストさんって、どんなお方なんだろう…?と思って、「社交辞令が回した歯車」を読むと、彼女の、目の前の物事に向き合うあまりの誠実さに心を打たれてしまいます。「歯車」は、ずっと泣きそうになりながら、まだだ、まだだ…とうるうるしてしまう話です。
普段、全力で楽しくしている彼女の、過去の学生時代の話を聞いて…もう、気にならないこと、できない。彼女が気になりすぎてしょうがなくなります。
おこがましいけど、こんなお人と、お友達になりたい…そう、思ってしまいます。
彼女の文章を読むことで、既に友達になってるような気がしてしまうんです。
作者のエッセイを読み漁ってしまう
なんで友達になりたくなるのか?
その秘密は、彩野リィさんの「文体」にあるような気がします。
彩野リィさんの文体、めちゃくちゃ気持ちいいんですよ。どうして気持ちいいのかな?と考えたのですが、きっとそれが「等身大」だからだと思います。
背伸びしすぎず、卑下もしすぎない。
私も女子だからわかるんですが、このバランスってすごく難しいと思うんです。
でも、リィさんの文章はいつも等身大。「可愛くありたい」という女子なら持っている正直な気持ちが、リィさんの文章からは見える。
「リィさん」その人が、文体から現れているんですね。
だから、顔は見えなくても、そこにいるように感じてしまう。
例えば、「パーティ」の冒頭をお借りします。
パーティードレスを着る機会、少なすぎないか。
仕事柄とか婚活パーティーだとかでしょっちゅう着てるわよという人もいるかもしれないが、ごく普通のOLがパーティードレスを着る機会なんて、誰かの結婚式くらいなもんである。
高級レストランに行く機会もそうそうなく、結婚ラッシュも一段落した筆者のパーティードレスは、すっかりクローゼットの奥で息を潜めている。
いや、着たいだろ。
あああ〜めっちゃいい〜〜….
「筆者」「〜である」の、一見硬い文体から、可愛さが溢れ出ています。
まるで、ピシッとスーツを着た可愛い同僚が昼休みに「一緒に今度ドレス着ない…?」と、囁いているようで、ドキッとしてしまいます。
読み終わると、「彩野リィさんの文章をもっと読みたい!」と、きっとなってるはずです。
ここでクリエイターページを見てみましょう。
彩野リィさんのエッセイ、魅力の一つは、「タイトルが気になりすぎる!」こと。つい「気になるタイトル」を開いてしまいます。
持論ですが、思わず開きたくなるタイトルって「わかるわあ」と「え、どういうこと?」のちょうどど真ん中にあると思うんですよね。
「姫カット」って、どこかで聞いたことがあって、記憶の奥にあって可愛い髪型だなあと思ったけど、自分で「姫カット」にしてください、と言うにはなあ…と、微かに思っていた私…このタイトルを思わずクリックしました。
思わず「わかるわあ」ってなって「この話題について、もっと彩野リィさんと語りたい」と、思ってしまいませんか?私は思います。
気づいたら、何本も何本も、エッセイを読み漁って、全力で「スキ」をつけてしまいます。そんな魔力が、彩野リィさんのエッセイにはあります。
㊙️ネタバレありコーナー:読んだら語ろう
ここからは、内容に触れるコーナーなので、ぜひ彩野リィさんのエッセイを読んだ人と一緒に語りたいです。読んでない人は、まず、彩野リィさんのエッセイを読んでください。
こっちに戻ってこなくてもいいんで(笑)
「パーティ」の魅力を読み解いてみる
「アラサー女3人でちょっとしたパーティを全力で楽しんでみた」、通称「パーティ」の魅力を、読んだ人と話したいです。
(1)準備段階から、既に楽しい
このパーティ、準備段階から、既に始まってますよね〜!
楽しそうな参加メンバーと飾り付け、そして美味しい食べ物。
例えば、「いぶりがっこ」入りのポテトサラダ。作者はどうしても「いぶりがっこ」入りのポテトサラダが食べたかったそうです。
ポテトサラダにいぶりがっこ?そもそもいぶりがっこって何?ということも触れてあります。
「いぶりがっこ」があることで、脇役だったポテトサラダが忘れられない「名脇役」に。推しキャラになるに違いないです。
ちなみに、クリームチーズ入れるの?絶対美味しいに決まってます!
\完成!/←かわいい〜〜!!
そして、いろいろ準備していたらリュックに荷物が入らなかった彩野リィさん。
友人の家にスーツケースで行くことになるなんて誰が予想しただろうか。こんなはずでは…という気持ちを抱えながら、私はスーツケースをゴロゴロと引きながらN美の家に向かうのであった。
スーツケースで友達の家にいく!ですって?ご本人的には「こんなはずでは…」でも、特別感あっていいなあ…と思います。
(2)お互いがお互いの本気にツッコミを入れる関係性
スーツケースを見た友達の「え?」、キラキラをこの日のために買ったリィさんの「なんでだよ」。そして狐のお面(個人的には、ゼルダの伝説『ムジュラの仮面』を思い出してしまいました)
お互いがお互いの本気にツッコミを入れる。こういう関係、大好き。
愛おしいです。
(3)大人でも「お金のかからない楽しみ」はできる
この一文に心打たれました。
今回のパーティ―、実はかかった費用は一人あたり3,000円弱である。(N美が用意したライトを除く)
N美が家に招いてくれたおかげで場所代がゼロだったのも大きいが、かなりリーズナブルで、まさしくちょっとしたパーティーにできたと思う。
子供の時、友達と遊んだら全然お金、かかりませんでしたよね…。公園に行ったり、何もないところでも、いろいろと工夫して遊んでいた気がします。
でも、大人同士が遊ぶ時って、カフェや飲みに行ったりなど、何かとお金がかかりますよね。でも、こんなに楽しいパーティなのに、一人当たり3000円弱なんですって。工夫次第で、お金をかけずに、楽しいことはできるんだな、って改めて思いました。
誰の誕生日でもなく、何のお祝いでもなく、記念日でも季節のイベントでもない、本当に何でもない日にやった、ただのパーティー。
ここも、「不思議の国のアリス」に出てきた「なんでもない日、万歳!」を彷彿とさせて、胸が高鳴りました。
日常こそ、楽しみたいよね。そんな気持ちになりました。
「歯車」の魅力を読み解いてみる
「社交辞令が回した歯車」(通称「歯車」)の魅力を読み解いてみましょう
パーティを開くようなお友達がこんな語り始めたら、私、それだけで泣きます。彩野リィさん、書いてくださってありがとうございます。
(1)冒頭部分、深く心に響いて沈む
冒頭部分は、彩野リィさんが受験の結果を先生に報告するところから始まります。
感想文を書くためにもう一度読んで、泣きそうになりました。
先生がいる教科準備室に入り、ポツポツと今後の進路について報告する。「まぁ、結果は結果なので。」と、努めて冷静に、少しの空元気で話し終えると、先生はようやく口を開いた。
ここが、本当に胸を打ちました。浪人して、結果が振るわなかった時。私も、同様の経験をしたのでわかりますが、本当は、声をあげて泣きたいんです。きっと大学生になるから、大人にならなきゃって思っている彩野リィさんは、「まぁ、結果は結果なので。」と、健気に言うんですよね。
私が、もし先生の立場で、こんなこと言われたら、多分、彼女より先に泣いてしまいます。いいんだよ、って抱きしめてます。
その時の、先生の一言が、作者のこれからを変えます。
「どこで学ぶかじゃなくて、何を学ぶか、だからな。入った大学で、お前がどれだけ吸収できるかの方がよっぽど大事だぞ。」
その時は、受け止めきれなかった。わかります。
私も、きっとそうなります。気を遣われてるんだろうな…情景や心境が見えてきて、その光景を追体験しているような気持ちになります。
今となっては、受験なんてただの一通過点。
たとえ落ちたって、未来はちゃんと続いていくし…そう思えるようになりました。でも、あの時は違いました。
この大学に受かるかどうかが人生のすべて、将来が決まるかどうかの分かれ道のように思っていたんです。だからこそ、この出来事の重さも、先生の言葉の重みも、いっそう深く感じます。
(2)社交辞令から始まる出会い
2年も浪人はできないと、仮面浪人をするつもりだった彩野リィさん。仮面浪人とは、大学に通いつつ、別の大学への受験の準備をすることです。なので、入学した大学の友達は、「かりそめ」の存在。
それでもリイさんは、交流会で「仲良くしてください」と社交辞令を述べますが、この「社交辞令」が、大きな出会いの芽になっていきます。
交流会で話しかけてきた金髪女子。「ラジオ番組制作に興味はない?」と聞かれる作者。説明を聞いて、実際の案内を受けるうちに興味を持ち始めていきます。
この流れが、本当に「新しい出会い」という形で書かれていて、なんだか映画を見ているようでした。
そこで、「どこで学ぶかじゃなくて、何を学ぶか、だからな。」という、先生の言葉が蘇る。心を打ちました。
(3)自分の過去を再編集する「旅」
このラジオ番組制作では、企画から放送まで、学生がすべてを担っているそうです。「学生らしい企画案」や街頭インタビュー、先輩の聞き手としてのパーソナリティ…。彩野リィさんは、初めての経験をたくさん重ねていきます。
2年生になると、ご自身でラジオを企画〜放送までを担うんですって!
こういう経験って、本当に人生の糧になりますよね。
特に、受験勉強や浪人など、ずっと“座学”の中にいた時間が長かった人にとっては、まるで新しい世界が開けるような感覚。
私の胸にも「何を学ぶか、だからな」という言葉が響いてきました。
書かれている以上に、きっとたくさん大変だったんだろうなとも思います。
他の学生のインタビュー、お母様へのインタビュー…
それらを通じて、彩野リィさんは“自分の過去を再編集している”んだなと感じました。
これはきっと、彩野リィさん自身の、一つの「旅」なんだと思います。
そのことに気づいた時、私も涙が止まりませんでした。
(4)そして生放送の内容
生放送中の30分は緊張していたけれども、教授の言葉や、自分の放送を、改めて振り返ります。教授に、反省会でこんなことを言われたそうです。
「あなたにしか出来ない放送だった。あなたには伝える力があると思う。」
教授の言葉は、きっと、リィさんが自分の過去に真摯に向き合った、そこから生まれた自分だけの言葉だったからなんだろうな、と思いました。
この言葉から、今、個性的で等身大のエッセイを綴られているリィさんの姿が浮かびました。エッセイはまさに「リィさんにしかできにない、伝える力」の塊ではないでしょうか。
それはまさに、どんな運命、どこにいても、過去を振り返る勇気を持って「今」を大事にするリィさんにしか伝えられない「声」なんだと思いました。
リィさんが特に「だから今のエッセイにつながっていて…」とは特に書いているわけではありません。書いていないけど、いや、書いていないからこそ、読者にはわかってしまうんです。
「パーティ」と「歯車」の共通点から見える彩野リィさん作品の魅力
二つのエッセイ、「パーティ」と「歯車」は、テンションが全然違います。
読後感も、真逆です。
それなのに、なぜか私は、共通点を見出してしまいます。
それは、リィさんが「今」に真摯に向き合っていることだと思います。
大学受験での挫折の中、たまたま出会ったラジオ番組制作に取り組み、記憶がなくなるほどの緊張の中の生放送…そして時が経ち、友達と全力で楽しむパーティ…
対象が何であっても、真正面から向き合っている。
だから、こんなに健気で、可愛くて、魅力的なんだ。
それだけじゃないと思う。でも、その一端を発見したような気がしました。
それは、他の活動にも現れています。例えば、ひらがなの難しさに直面するリィさん。
他の人がおざなりにしそうなところまで、取り組む。それは、偉いからじゃなくて、そうしたら楽しいから。
その姿勢が、私だけじゃなく、多くの人を惹きつけてやまないのだと思います。
終わりに 私の正直な所感
私は、リィさんに実際にお会いしたことはありません。
それなのに、エッセイを読むと、実際にお会いしたかのように思ってしまいます。
それは、リィさんのエッセイが、ものすごく「今」で「等身大」だからだと思います。可愛くしたい、飾りたい自分も、隠さない。だから、実際にカフェで向かいに座って、ずっと話し込んでいるような気持ちになれます。
数あるエッセイのうちの、2本をしっかり読んでみて、エッセイが魅力的な理由が少しだけ見えてきた気がしました。
読ませていただいて、本当にありがとうございます。
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