姓を変えた夫側の視点で考える夫婦別姓
選択的夫婦別姓について個人的に思うことがいろいろある。
私は「姓を変えた夫」という立場だが、日本で夫側が姓を変えるケースは全体の約6%(2024年)と極めて少ない。ここでは当事者である私の内面にできるだけフォーカスして、自分のアイデンティティーでもある姓の問題について考えたい。
どちらの姓にするか?
基本情報として、私たち夫婦が結婚したのは2024年。当時は2人とも20代後半で会社員だった。
結婚するに当たり、どちらの姓にするかを決めなければならなかった。しかしながら、姓の決め方は誰かが教えてくれるわけではないので、2人で話し合って決めた。
影響度合いを見極める
私は3人きょうだいの長男。妻は2人きょうだいの長女。私も妻も実家を出て1人暮らしをしていた。
根本的に、私も妻もできることなら自分の姓を変えたくないという思いがあった。それでは先に進まないので、意見を出し合って考えたと記憶している。
相手の姓に変える場合の不都合を考えた際、当時、妻は海外出張が頻繁にある仕事をしていたため、パスポート発行手続きの懸念があることが分かった。婚姻届を提出してから戸籍ができるまで時間がかかるし、パスポートの発行にも1、2週間の時間が必要なため、その間に出張することは不可能になるということだ。
一方で私にはその心配はなかった。加えて、職場では結婚しても旧姓で働くことができたし、実際に旧姓で働いている同僚がたくさんいた。
姓を変えた場合の影響は、私のほうが少ないことが分かった。影響が少ないのであれば、それ以上に反対する理由もないので、私が姓を変えることで納得した。
家族に伝える
上記の話し合いをした後、私は実家の両親に相手の姓に変わるかもしれないことを伝えたと記憶している。姓が変わることについてどう思うか聞くと、「どちらか選べるなら、今のままの姓がいいよね」というようなことを言われた気がする。しかし、明確な反対はなかった。
妻もその旨を家族に伝え、理解を得た。妻の祖母からは「申し訳ないわね」という話があったらしい。
結婚後の手続き
結婚して姓を変えると、思った以上に必要な手続きが多かった。まずは、どのような手続きが必要なのか調べ、その都度対応していった。1つ1つ調べたり手続きをしたりすのは想像以上に大変だった。
初めに確認したのは、個人確認書類になるマイナンバーカードと運転免許証だ。これは旧姓を併記することが可能な制度があるため、併記を希望することにした。併記をするには、戸籍謄本が必要で、婚姻届提出後に戸籍ができあがるまでしばらく待つことになった。
その後、何度か市役所に出向いたり電話で確認したりしたが、戸籍はなかなか登録されない状態が続いた。本籍地は現住所と違う自治体を指定したため、届け出から戸籍が登録されるまでに時間を要したようだ。結局、婚姻届提出から免許証やマイナンバーカードに旧姓が併記されるまで1か月かかった。
戸籍の登録完了後、パスポートの再発行手続きをした。銀行の口座や保険、クレジットカードの氏名変更もマイナンバーカードの手続きを終えてから行った。一部はインターネットやアプリ上で手続きが終わるものもあったが、窓口に出向いたり手紙を郵送したりしないといけないものもあった。
姓の変更で感じたこと
手続きの煩雑さ
今までの人たちは結婚すると当たり前にこれらの手続きをしてきたわけだが、自分が当事者になってみると想像以上にすべきことが多く、面倒で時間がかかった。
結婚しても姓が変わらなければ、戸籍ができてから戸籍謄本か戸籍抄本を会社などに提出するだけで済む。負担の差は歴然だ。
また市役所の窓口では、旧姓を併記する手続きが可能であることを案内されなかったと記憶している。私は制度を知っていたため利用できたが、知らなければスルーされていたのかもしれない。
姓が変われど家族関係は変わらない
当時はそこまで考えていなかったが、昔の家制度のような考え方でいえば姓を変えることは家を出ることなのかもしれないが、自分にその感覚はない。実家はきょうだい皆が出てしまっており、お墓などを含めて対応をどうするか将来的には考えなければならないだろう。
しかしながら、私の姓が変わったからといって、家族内での付き合い方に変化があったと思えないし、私にそのつもりもない。ありがたいことに、両親の私への接し方も変わっていない。
一方、妻側の姓に変えたということで、妻側の家族は心理的に私を受け入れやすくなった可能性はあるかもしれない。
「意識して」書く自分の名前
長年書き親しんできた姓が変わるのは不思議な感覚だ。新しい姓を書くときは、当然「意識して」名前を書かなくてはいけないし、文字のバランスがうまく取れずに自分の名前なのに変に感じることもある。
結婚して間もなくの頃は、私のことをどちらの姓で呼ぶか、戸惑う知り合いもいた。個人的には旧姓のままでいいのだが、当然、その意志を伝えないと分からない。姓を変えなくていいなら、考える必要も悩ませる必要もないことである。
中学や高校卒業の際に卒業記念としてもらった印鑑も使えなく(使わなく)なった。代わりに新しい印鑑を100円ショップで購入した。よく考えたら、そもそも印鑑は使えなくなる人が一定数いる記念品だなと思うが。
2つの名前、私は二重人格か
仕事は旧姓でできたので、自分のアイデンティティーが崩壊するようなことはなかった。馴染みがあるので、noteも旧姓のままで続けている。
旧姓の利用拡大が進んでいるとはいえ、全ての場面で旧姓を使えるわけではない。仕事は旧姓だが、銀行口座やクレジットカード、パスポートは新しい姓というように、日常生活の中で2つの名前が同時に私のものになっている。
頭では理解していても、何だか変な感じがする。私は1人で、2人いるわけではない。
このままでいいのか
私たち夫婦は話し合いでどちらが姓を変えるか折り合えたが、男女ともにバリバリ働く人が増えた現代で皆がうまくいくとも思えない。
94%が夫の姓を選択
内閣府男女共同参画局によると、2024年に婚姻届を提出した夫婦は94.1%が夫側の姓を選択したという。これが夫婦両者の希望によるものなのであれば問題ないが、全員がそうだとはとても思えない。長年の慣習に犠牲になっている女性もいるのではないだろうか。
妻側の祖母が、私が妻の姓に変えることについて「申し訳ないわね」と反応したという旨を前述した。しかし妻が私の姓に変えた場合、私の祖母はおそらく「申し訳ない」とは言わないだろう。当たり前のこととして受け止めてスルーしたと想像する。こうしたやりとりからも、長年の慣習がにじむ。
ちなみに、30年前の1995年は97.4%だそうだ。30年で3.3ポイントしか変わっていない。女性が男性の姓に変えるのが昔は基本だったとはいえ、令和の今でもここまで色濃く残っているとは驚きだ。現行の制度下で結婚する夫婦は2人でよく話し合ってどちらの姓にするか決めてほしいと思う。
希望者が選択できるように
現政権が訴える旧姓の通称利用の促進では、手続きのわずらわしさなどから解放されることはないし、そもそもパスポートなどでは旧姓を使用できない。あくまで、希望する人が別姓を「選択」できるというのが選択的夫婦別姓なのだから、目を背けずに制度化を進めてもらいたい。
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