クレーかわいい王決定戦・惜しくも敗れた絵たち【静岡市美術館】
先日開催された、なすにきび勝手パウル・クレーかわいい王決定戦2025。愛知・兵庫を巡回し、8月3日まで静岡市美術館で開催されていた「パウル・クレー 創造をめぐる星座」展で展示されたパウル・クレーの作品のみから、一番かわいいと思う絵を選出する大会。前回はこちら↓
今回は、気分的にも惜しくもベスト5には入らなかったものの、可愛さはもちろん、クレーの絵として見甲斐がある面白い作品を紹介。

・ホフマン風の物語
1921 東京国立近代美術館

なすにきび的に言うと、「かわいい」と言えば子供にも通じるような可愛さ、キュートと言うことですが、クレーの作品にはもちろん大人っぽいかわいさ、つまりおしゃれかわいい絵もたくさんあります。今展覧会ではおしゃれ代表がこの作品ではないでしょうか。家に飾ってもいいし、Tシャツやバッグにプリントしてあっても良い。グッズあったっけ。
さらにこの絵は白黒の線画のみ見ても可愛いし、淡い黄・白・橙で構成される色の配置だけ見てもかわいい。形状には互いにリンクしているとは言え、別の要素である可愛いがレイヤーで2つ重なっているという、実は他の画家ではなかなか味わえない、レベルの高い可愛さ。そういうところでより現代的な感覚を纏っているようにも見えるし、流石クレーと言ったところ。
・腰かける子ども
1933 宇都宮美術館

かわいい!とストレートに感じる後に、人によっては若干のモヤモヤが残るかもしれないこの子供の絵。キャプションにもあるけれど、シワのある紙、滲んだ水彩、青と赤のみというクレーにしては珍しい激しい色使い、振り返るという一時的な動作、、、などなど画面にある色々な要素が、幸福の裏にある危うさ・儚さを説明しているようにもとれます。何年も前に亡くなった子供、存在しない子供の幻覚、親との離別、、、など勝手に悲惨な物語を妄想しようとすればいくらでもできそう。

1923 愛知県美術館
今回の《蛾の踊り》↑などにも見られますが、クレーといえば「一瞬にある幸せと美しさ」の演出が得意なので、大会の基準で「クレーらしさのあるかわいさ」を重視するならばランクインするべき作品だったかもしれません。そういう意味では次の《山への衝動》も同じ。
・山への衝動
1939 東京国立近代美術館

先ほどの《腰かける子ども》が儚さ/悲しさ成分を多く感じるのに対して、こちらはより亡くなる前年の晩年の絵で、当時のクレーが感じている恐怖や危険を、生にのせているように見える緊迫感のある絵。しかしかわいい。特に一番左下の隅、後続の車両はギザギザの歯を剥き出しにして、プンプン起こっているよう、お子様ランチみたいな青い旗もついているし、髭が生えているみたいにも見える。
個人的に、クレーと同じく戦争の時代を憂いた絵としてピカソやミロなどの作品と比べると、彼が絵に載せる怒りや悲しみはかなりじわじわくるというか、静かな振動のように感じます。経歴も含めて、文学的/詩的だし、かわいいだけじゃなくてどこまでも複雑に考えられる奥行きがありすぎるというか。逆に思想的にモチーフにおいて形状をかわいく描くことも、絶対外せない条件だったのでしょうか。なすにきび的に今大会は気持ちよく「かわいい!」と思えるかどうかも基準としてあったので《腰かける子ども》、《山への衝動》はそういう明確な勝手敗因があったのです。
・侵略者
1938 パウル・クレー・センター

今回日本で巡回したクレー展では、全体の雰囲気がかわいい、配色がかわいいと言う作品が多い中で、この作品は数少ない「キャラクター」が登場している絵。矢印も含め、幾何学的に構成されるおそらく侵略者と言われる生物と謎の物体、クレーのことなので相当な思想や計算が盛り込まれていそうですが、まあかわいい。
謎の物体には夜と昼が表されているので、世界や宇宙の理(ことわり)的な何かかな?と想像できます。つまりそれを導く力を持つこの生物は自然の摂理を超越した、原始的な神か何かなのか!?でも名前は侵略者という怖さを与えてくるので(調べたところ、ドイツ社会におけるナチスの勢力拡大についての揶揄らしい)、クレー最強ランキングを作るとすれば、かなりの上位に来そうなキャラクターでした。
・橋の傍らの三軒の家
1922 宮城県美術館

これが一番ベスト5に入れるか迷った!このシンプルかつストレートな可愛さ、なすにきびの気分によったら全然入ってくるポテンシャルを持つ作品です。かわいいという感想に加えストーリーや思考などの情報が別要素として絡んでくる上記の4つの作品と比べて、この絵はおそらく、色彩理論を頑張る!というその美の追求だけが行われた絵。そのため、なすにきび基準ではメチャクチャに刺さります。
クリスマス聖夜の日の街のお話で、サンタさんがガッツリ登場しない感じの小話集の絵本の絵に使いたい。
「 みんなが ねしずまった そのよる ・・・」
みたいな全文字ひらがなの絵本にしたい。シンプルな可愛さに見えるようでクレーのゴリゴリ色彩理論が乗っかっているので、目が肥えた大人が見てもグッとくる、淡く暖かいグラデーション。今回の展覧会では色彩理論に基づいた作品が他にも数点ありましたが、中でもいちばんのお気に入りでした。建物が内から発光しているように見えるこの技術ももちろん、クレーならではでしょう。これは全然トップ5に入ってもよかった!ちなみに絵本にしたいランキングだったらぶっちぎり1位、かわいい。

1923年 パウル・クレー・センター
こちらは、おしゃれかわいい落ち着いた色調
以上、パウル・クレーかわいい王決定戦 2025大会の続きでした。チュニジア、バウハウス、晩年、、、いつの作風にしても、高火力のかわいさとそれを押しつぶす勢いの危なさ/難しさのぶつかり合いが凄すぎて、ミロ展の時よりかなり選定に苦労しました。クレーにしてやられた感じ。悔しい、でもかわいい。
次は、東京国立近代美術館所蔵のクレーの優勝も決めようかな。
おわり
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