エアコン故障祭り③ ありがとうの後に続いた言葉
実家のエアコンが2台同時に故障した。
前回のお話
https://note.com/lively_snake8528/n/nbb2e7c157bfe
1週間後。
無事にエアコンの取り付け工事が終わった。
ようやくこれで安心できる。
今年の夏を、熱中症の心配をせずに過ごしてもらえる。
そう思っていた。
工事が終わったあと、母から電話があった。
「大感謝!」
その言葉を聞いて、張りつめていた気持ちが少しだけ緩んだ。
飛行機を手配して、補助金を調べて、役所へ電話をして、電気店を回って、お金を準備して、工事の段取り、工事中も電話で工事業者と連絡までしてきた。
報われた、とは言わない。
でも、「よかった」と思えた。
ところが、そのあとだった。
「リモコン、字が小さくて何が書いてあるか見えない。老眼鏡かけるのも面倒。」
「説明書も字がいっぱいで読みにくい。」
「工事の人が長時間家にいて疲れた。」
「寒い。」
娘が隣で、
「設定温度を27度とか28度にしてみたら?」
と声をかけると、
「えー?そんなに高い温度?おかしいでしょ。」
それでも寒いと言うので、
「じゃあ風向きを変えてみたら?」
と言うと、
「寒すぎて、弟が買ってくれた扇風機の方がいい。」
「寒いから上着を着てる。」
そんな言葉が延々と続いた。
「大感謝」と言いながら、そのあとには文句の羅列。
本人には悪気はない。
昔からの母は性格的にこういうところが多い人だった。
思ったことを、そのまま口にしているだけなのだろう。
でも、聞いている私は傷つく。
隣で聞いていた娘が、母に言った。
「でも、お母さんは大変な中、すぐ飛行機を取って帰って、電気屋さんにも行って、お金も用意してくれたんだよ。」
すると母は、
「そうだよ。感謝してるよ。」
とあっさり言った。
その一言で済むなら、最初からそう伝えてくれたらいいのに。
本人は、自分の言葉が相手を傷つけていることに気づいていない。
私は電話を切ったあと、なんとも言えない気持ちになった。
悲しかった。
虚しかった。
そして翌日、私は叔母のお墓参りに行った。
叔母もまた、一人で親の介護を担ってきた人だった。
もう話を聞いてもらうことはできない。
それでも、お墓の前なら、少しくらい弱音を吐いてもいい気がした。
「私、ちょっと疲れちゃった。」
そんな気持ちで手を合わせた。
そのあと、母から電話があった。
「昨日から声が元気ないけど、どこか具合でも悪いの?」
そこに気づくなら。
私の気持ちにも、もう少し気づいてほしかった。
何度も聞かれたので、私は正直に話した。
母の言葉の数々で傷ついたこと。
隣で聞いていた娘も、おばあちゃんの言い方はおかしいと思っていたこと。
すると母は、
「そんなつもりじゃなかった。」
そして、
「私が全部悪いのね。」
と言った。
そうじゃない。
誰が悪い、と言いたいわけではない。
ただ、少しだけ。
私も傷つく人間なんだと知ってほしかった。
介護をしていると、親のことばかり考えてしまう。
でも、介護をする側にも生活があり、仕事があり、気持ちがある。
我慢し続けることが優しさではない。
全部を一人で背負うことが親孝行でもない。
私は、できることはする。
でも、できないことまで抱え込まない。
その線引きをしなければ、いつか自分が壊れてしまう。
今回のエアコン騒動は、新しいエアコンを買っただけの出来事ではなかった。
「これからも親を支えるためには、まず自分を守らなければいけない。」
そう気づかせてくれた出来事だった。
